債務整理を行うためには費用がかかりますが、なるべくその金額を抑えるようにするためには法テラスを利用するのがおすすめです。
もっとも、法テラスの利用にはいくつかの条件があり、その中には利用者の収入や資産に関するものもあります。
また、利用によってすぐに督促が止まるわけではないという点にも注意が必要です。
以下では、このような法テラスの利用方法や注意点について詳しく見ていくことにします。
まず最初に、そもそも法テラスとは何であるのかについて、簡単に触れておきます。
法テラスは、正式には「日本司法支援センター」といい、法律に関する事案について総合的に相談に乗ってくれる機関です。
国が運営元になっているため、安心して利用できるほか、一般人には馴染みの薄いような法律についての様々な情報を無料で得ることができるため、困ったときに非常に助けになります。
また、相談内容によって最も適した窓口を案内してもらえますので、法律トラブルに遭遇した際の案内所として相談してみるのもよいかもしれません。
相談は直接窓口に行く以外に、電話や電子メールでも受け付けてもらえますので、遠方に住んでいる方でも気軽に利用可能です。
それ以外にも様々な制度が用意されていますので、普段からその存在を知っておくといざというときでも慌てずに対応できるでしょう。
法テラスで利用できる様々な制度のなかに、民事法律扶助制度というものがあります。
これは、弁護士や司法書士などの法律のプロフェッショナルの費用を支払うことが経済的に困難な人に対して、それを立て替えるというものです。
この民事法律扶助制度は、誰もが利用できるというわけではなく、利用にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。
具体的には、収入基準と資産基準という二つの基準が設けられており、それらはいずれも制度利用者と同居している家族の人数によって内容が変わる仕組みになっています。
制度を利用するためには、この二つの基準をいずれも満たさなければならないことに加え、「勝訴見込みがないとは言えないこと」や「民事法律扶助の趣旨に適していること」も条件とされています。
そのため、最初から勝ち目がない場合や弁護士費用などを工面する当てがあるような場合には利用できないという点に注意する必要があります。
法テラスの民事法律扶助制度には、代理援助と書類作成援助という援助のための制度があります。
まず一つ目の代理援助というのは、利用者に代わって法テラスが法律トラブルを解決するための交渉・調停・裁判といった各種手続きに要する弁護士費用などをサポートするシステムです。
二つ目の書類作成援助というのは、その名の通り、裁判時に裁判所への提出が求められる各種書類の作成を法律のプロフェッショナルである弁護士や司法書士に依頼する場合の費用を法テラスに負担してもらえるシステムです。
これら二つの制度を利用することによって、利用者の法律トラブルの解決に必要な利用者のコスト負担を軽減できるようになっているのです。
法テラスは民事法律扶助制度などの金銭的な支援制度は設けられているものの、基本的には民事利用するためには一定の費用が発生します。
その費用はあらかじめ定められており、支払方法についても分割方法が認められるなど利用者に配慮した内容となっています。
利用内容によって金額は異なるものの、一般的には月々に支払うことになる金額は5,000円から10,000円ほどですので、個人で弁護士に依頼する場合などと比べるとかなりリーズナブルであると言えるのではないでしょうか。
法テラスで任意整理を行った場合、それに要した弁護士費用などの支払いを法テラスに立て替えてもらえるようになっています。
もっとも、あくまでも「立て替え」ですので、その金額はいずれ利用者が返済しなければなりません。
立て替えてもらえる金額は、債権者の数に応じて変動するようになっており、例えば、債権者が1人である場合には着手金と実費等を合わせて43,000円が、また債権者が2人の場合には64,500円が、それぞれ上限となっています。
なお、過払い金が生じる場合には、着手金などとは別に報酬が必要となる点には注意しなければなりません。
一方で、法テラスが設けている任意整理の報酬規定によると、手続きの結果として債務額が減額された場合の減額報酬は認められていないため、必要以上に支払費用が大きくなるおそれがないという点はメリットといえるでしょう。
法テラスで個人再生を行った場合にも、弁護士費用などを立て替えてもらうことが可能で、その金額は任意整理の場合と同じく債権者の人数によって変わります。
また、個人再生の場合には、住宅資金特別条約条項という規定が設けられているため、通常であれば書類作成を援助してもらった場合に生じる着手金が上乗せされないほか、生活保護を受給している人であれば、一定の場合に立替金について返済の猶予や免除を受けることができるようになっています。
また、手続きを弁護士に依頼したにもかかわらず再生委員が再任されないような場合や、該当事案を処理するのが困難な場合には、着手金の上限金額が増えることもあります。
なお、過払い金が生じる場合に、別に報酬が必要となる点は、任意整理のケースと同様です。
自己破産を行った場合にも、債権者の人数に応じて法テラスに費用を立て替えてもらうことが可能となっていますが、裁判所に納める予納金についてはその対象にはなっていない点に注意が必要です。
立替金の返済の猶予や免除が一部の生活保護受給者に認められている点や、処理が難しい事案の場合に着手金の上限が増える点、過払い金が発生する場合に別途報酬がいる点については個人再生の場合と同様ですが、自己破産の場合には管財事件になった場合にも着手金の上限が増額されます。
法テラスの利用には、メリットとデメリットの両面があります。
まず、一つ目のメリットは、弁護士や司法書士などの法律問題の専門家に無料で相談できるという点です。
また、二つ目のメリットとして、法律問題の解決に要する費用を立て替えてもらうことによって、月々の返済額を5,000円から10,000円程度に抑えられるという点があります。
弁護士費用や司法書士費用を安く済ませられるうえに、分割返済にすることで毎月の負担を大幅に軽減できるため、特に経済面に不安を抱えている人にとって法テラスは利用しがいのある制度であるといえるでしょう。
もっとも、法テラスの利用はメリットだけではありません。
前述したように、利用するためには収入基準と資産基準の両方をクリアしなければならないため、そもそも利用できない人が存在するほか、基準を満たしていたとしても、審査に通るために一定の期間を要するというデメリットがあるのです。
その期間は、一般的には2週間から1か月ほどと言われており、なるべく早く法律トラブルを解決したい利用者にとっては高いハードルと言えるでしょう。
また、利用者が弁護士を選ぶのは認められていないため、場合によっては相性が良くない人物に相談しなければならなくなるというのも注意すべきポイントです。
法テラスを利用するには申込みを行う必要がありますが、その方法は3通りが用意されています。
すなわち、都道府県ごとに設けられている直轄の事務所に連絡しそこに常駐している弁護士に依頼するやり方、当該事務所に連絡してその周辺の弁護士に依頼するやり方、そして持ち込み案件と呼ばれる法テラスの登録弁護士や登録司法書士に対して直接相談するやり方です。
法テラスに債務整理を相談する場合には、一定の流れに沿って行うケースが一般的です。
まず、直接訪問したり、メールや電話によって法テラスに対して問題解決を相談し、必要な手続きや利用できる制度などについての案内を受けるというのが最初のステップです。
その後、法律相談の予約を行い、弁護士などの専門家に無料で法律相談することになります。
そのうえで、専門家に対して債務の整理を依頼するというのが一連の流れとなっているのです。
法テラスに相談窓口を紹介してもらうためには、事務所を直接訪れて相談する以外に、電子メールや電話を利用して情報を受け取る方法があります。
窓口を紹介してもらうことによって、利用者が抱えている法律トラブルの内容に応じた適切な専門家に相談できるようになっているのです。
法テラスから案内された相談窓口に連絡してアポを取るためには、連絡時に相談内容を正しく伝える必要があります。
例えば、民事法律扶助制度を利用したいのであれば、その旨を明確に話すべきであり、それによって当該制度を担当している窓口に案内してもらうことができるのです。
なお、民事法律扶助制度についての法律相談を予約するためには、その利用条件を満たしていることが確認されなければなりません。
法律相談を予約すると、予約日に弁護士などの法律のプロフェッショナルに相談できるようになります。
相談時にはあらかじめ記入した援助申込書が使われるのが通常で、それにより相談内容が正確に専門家に伝わるようになっているのです。
なお、1回あたりの相談の時間は30分とされており、1案件について利用回数は3回までとなっています。
専門家に相談した結果として、債務整理手続きを正式に進めることを決断した場合には、代理援助についての申し込みを行う必要があります。
申し込みを行ったうえで、必要な審査を経て無事に援助が認められれば、法テラスから実際に依頼する弁護士を紹介してもらえるのです。
では最後に、法テラスを利用して債務整理を行う際の注意点をまとめておくことにしましょう。
まず一つ目は、利用条件が設けられているため、ある程度の収入や資産を有する人は、法制度を案内してもらったり、窓口についての情報をもらえる程度のサポートしか受けられない点です。
また、二つ目として、収入や資産が一定以上であれば法律相談が有料化されるという点があります。
加えて、利用可能かどうかの審査に時間がかかるため、迅速に受任通知を受けて督促を止められないというのが三つ目の注意点、そして利用者自身が誰に依頼するかを決められないため、あまり実績のない専門家がアサインされる可能性があるというのが四つ目の注意点です。
以上で見てきたように、法テラスの民事扶助制度には一定の利用条件が設けられているわけですが、それさえ満たしていれば債務整理に要する費用面の負担を大幅に軽減することが可能になります。
そのため、すべての利用基準をクリアしている人にとっては、法テラスの利用は非常に有用なものであるということができるでしょう。