借金返済の目途が立たない場合、負担を軽減するために設けられている解決方法が任意整理や個人再生です。
ただ取り巻く状況によっては、当初の予定から自己破産に変更しなければいけないケースもありますよね。
ここでは債務整理中に自己破産へ変更になった場合に気をつけたい事、変更する際の条件などを紹介します。
しっかり理解しておけば、もしもの場合にもスムーズに進められるのではないでしょうか。
債務整理には任意整理と特定調停、個人再生、自己破産の4種類がありますが、最もよく利用されているのが任意整理となります。
そもそも任意整理とは債権者に交渉して将来利息のカット、または長期分割弁済など和解を成立させて、支払いを楽にしていく手続きです。
借金の総額が減り、本来ならば順調に借金も返していく事が出来るはずですが、人によっては任意整理後に借金返済が困難になる事もあります。
もし和解内容どおりに返済が出来なくなった場合は、まずは弁護士や司法書士に相談する事になりますが、その際に任意整理を破棄して自己破産に変更する事が出来ます。
自己破産への切り替えには裁判所へ申し立てが必要ですが、債権者の同意は不要となっています。
消費者金融や金融機関、ローン会社の許可もいらず、特別な手続きも必要ありません。
任意整理は債権者と債務者の間で双方納得できる条件で契約を交わしますが、その内の約3割の人が返済に失敗しています。
和解契約の中には、「2ヶ月以上滞納した場合は期限の利益を喪失する」といった条件がよく見受けられます。
期限の利益とは債務者が分割払いをしてお金を返済する権利の事ですが、この権利が無くなると分割返済できず一括返済しなければなりません。
支払いが厳しく2回目の任意整理を交渉したとしても、受け入れてくれる債権者はごく稀です。
結局支払いに行き詰まり、途中で挫折してしまう事になるのです。
任意整理に失敗する理由は、まず最初から返済計画に無理がある事が考えられます。
毎月の返済可能額は手取り収入から住居費用を除いた3分の1が一般的ですが、残ったお金を借金返済に優先させる生活が3年から5年続きます。
例えば冠婚葬祭など急な出費があれば、借金返済に充てる予定だったお金を使わざる負えません。
そもそも1~2ヶ月分の返済額を貯金出来るほど余裕を持たせないと、長期間の借金返済を乗り切るのは難しくなります。
また元々ギャンブル好きや浪費癖のある人が任意整理をすると、借金額が減った事で気持ちが緩み、返済金にまで手をつけてしまう傾向があります。
さらに債務整理中にリストラに遭う事もあれば、病気になって仕事が続けられなくなる事もあり、収入が無くなれば借金返済どころでは無くなります。
ちなみに病気やリストラが返済できない理由であっても、債務者と債権者の私的な和解交渉のため救済処置はありません。
任意整理から自己破産へ変更する理由は人それぞれです。
例えばよくある理由が、契約当初は支払いが出来ると思っていたものの、予想以上に支払い額が負担になり、続けられなくなったというパターンです。
余裕のない生活は数か月程度なら我慢出来ても、3~5年間も続けるのは厳しいものです。
また一切娯楽無しの生活はストレスも溜まります。
債務整理に詳しい弁護士なら上手に返済計画をたててくれますが、債務整理専門外の弁護士が担当すると、無理な計画を立ててしまう傾向にあるのです。
また長期に渡る債務整理中に何が起こるかはわかりません。
会社から減給される事もあればリストラされる可能性もあります。
大きな事故や病気で仕事が出来なくなると収入も減り、当初の予定通りに借金を返済する事が難しくなります。
厄介なのが、債権者から強制執行による給与の差押えを受けるケースです。
任意整理では強制執行を停止する事が出来ず、和解を成立させなければ給与を差押え続けられる事になり、日常生活さえ支障をきたします。
その他、契約の際に想定通りの減額にならなかった場合や、債務整理中に連帯保証債務など多額の借金が発覚した場合は任意整理を続けるのが難しく、自己破産へ変更せざる負えない状況になります。
任意整理から自己破産への変更するとどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
またどんな条件で変更が可能になるのでしょうか。
任意整理は利息のカットや返済期間を延ばす事は可能ですが、借金の元本は減らせません。
3~5年の月日をかけ、どれだけ経済状況が苦しくなっても払い続けなければいけないのです。
その点、自己破産した場合は全ての債務の支払い義務が免除となるため、どれだけ多額の借入があっても借金がゼロになります。
また債権者の中には給与の差押えなど強制執行を行ってくる事がありますが、任意整理から自己破産に切り替える事で差押えの強制執行を止められます。
ちなみに債務整理をすると信用情報機関に情報が登録される事になりますが、特に自己破産はイメージが悪い印象を受けるかもしれません。
ただ登録期間は決められているので、任意整理が難しいのであれば、素早く自己破産を選択して借金問題を解決した方が、信用情報を早く綺麗に出来るメリットがあります。
任意整理から自己破産へ切り替えると借金はゼロになりますが、時価で20万円を超える財産や99万円を超える現金は没収される事になります。
20万円を超える財産とはマイカーはもちろん、マイホームも含まれます。
つまり自己破産すると、新たに賃貸物件を借りるなどして新たな居住スペースを確保しなければいけません。
また奨学金や住宅ローンが残っている状態で自己破産する事もありえますが、債務整理の手続きに含めたくない債務も全て含めて裁判所に申告する必要が出てきます。
さらに自己破産の手続きの間は資格制限され、就けなくなる職業もあります。
具体的には弁護士や司法書士、税理士、宅地建物取引主任者、警備員などが挙げられますが、資格に関しては一生戻らない訳ではありません。
早ければ3ヶ月ほどで資格制限が解除されます。
もし任意整理から自己破産に切り替えるタイミングで弁護士も変更した場合、契約内容にもよりますが報酬は全額支払うのが一般的です。
また前の弁護士解任から新しい弁護士受任までの期間は、なるべく短くするよう注意が必要です。
なぜなら弁護士を解任すると、債権者に辞任通知が送られるようになっており、弁護士が不在になる事で債務者に請求が再開出来るようになるのです。
支払いが中断していた期間の遅延損害金まで請求される事もあり、訴訟を提訴されるといった最悪のケースも考えられます。
弁護士の変更を考えている場合は、解任前から新しい弁護士を探しておき、前の弁護士の辞任後にすぐ新しい弁護士から受任通知を送って貰わなければいけません。
任意整理から自己破産へ変更は可能ですが、一番良いのは最初から自己破産を選択しておく事です。
理由は任意整理を選ぶと、和解案の条件に従ってお金を支払う事になりますが、途中で自己破産に切り替えると、それまでの支払額は全て無駄になってしまうからです。
もし初めから自己破産を選択しておけば、任意整理のために充てた支払額は貯金にまわせた事になります。
また再度自己破産への手続きを弁護士にお願いするとなると、弁護士へ二重に費用を支払わなければならず、金銭的にも時間的にも無駄に浪費する事となります。
任意整理から自己破産へ変更出来る条件は、最初から自己破産の手続きをする場合と条件は同じですが、破産手続開始決定に至った経緯その他いっさいの事情が考慮されます。
それを元に、経済的に立ち直らせる機会を与えるべきか、裁判所が判断していく事になるのです。
例えば債権者に誠実に向き合い交渉したものの、過酷な条件でしか和解に応じてくれず、結果的に返済が厳しく破産になった場合は免責が認められやすくなります。
逆に債権者が譲歩し、現実的な条件で和解案に応じてくれたにも関わらず、借金返済の努力を怠って自分で状況を悪くしたとみなされると、免責が認められにくくなってしまいます。
債務整理の中には個人再生という方法もありますが、自己破産とはどのように違うのでしょうか。
また個人再生から自己破産へ変更する際は、どういった点に注意すれば良いのでしょうか。
個人再生を選んだものの、様々な事情から自己破産の検討をする人も少なくありません。
個人再生から自己破産へ変更は不可能ではありませんが、いくつか注意が必要です。
まず自己破産をするためには債務者が「支払不能」である事が条件であるため、「支払不能」な状態になるように手続きしなければいけません。
また免責不許可事由に該当する場合は、自己破産の申し立てを行っても許可されません。
免責不許可事由の具体例は給与取得者等再生やハードシップ免責を利用した場合で、7年間は免責が認められず自己破産出来ないのです。
個人再生は借金が大幅に減額され、原則として3年で分割して返済していくという方法です。
返済義務はありますが、住宅ローンが残っていてもマイホームは残す事が出来るメリットがあります。
裁判所に申し立てを行い、再生計画案を作成して提出しますが、認可されて確定すると計画に沿った返済が開始となります。
一方の自己破産は、免責許可を受ける事で借金は全て帳消しになる事が最大のメリットです。
ただし不動産や車は没収となり、売却された財産は現金に換えられて債権者に分配される事になります。
裁判所に申立てを行い、債務整理の手続をするという流れは個人再生と同じです。
個人再生計画認可後であれば再生計画を一度取り消してもらう必要がある
個人再生から自己破産へ変更するには、切り替えの時期が要注意です。
そもそも個人再生の手続きをした時点で、債務者は借金が大幅に減額され、分割による支払い義務しか生じていません。
したがって、このような条件で支払い不能と認めてもらうのは厳しい状況です。
そこで「再生計画の取消し」という手続きを行い、借金の減額は無かった事にします。
再生計画に基づいて弁済がなされた分は減額されますが、債務者に従来の借金を支払う義務が生じれば、支払不能と認められるようになる訳です。
任意整理や個人再生から自己破産に変更する際は、法律上いくつかの制限があり、メリットだけではなくデメリットもあります。
自分はどうすべきなのか個人で判断するのは難しいかもしれません。
もし迷った場合は、債務整理に精通した弁護士なり司法書士に相談する事が大切です。
様々な問題を解決してきたプロなら、置かれている状況を見て最良な方法に導いてくれます。