借金の返済に困った人が藁にも縋る思いで頼る方法の1つが任意整理です。
しかし、日々の生活に余裕がない状態で相談しなければなりませんし、代理人を請け負うのは弁護士や司法書士といった債務整理のエキスパートであるため、高額な料金を請求されないか心配です。
この記事では、任意整理の特徴、メリットやデメリット等を紹介しながら、任意整理の相場について解説していきます。
任意整理は、弁護士や司法書士が代理人となり、貸金業者と債務の返済等について交渉する手続きのことを言います。
利息制限法の規定では金利の上限は15%~20%と決められているものの、かつて施行されていた出資法では29.2%が上限金利とされていました(現在は改正貸金業法)。
このふたつの法律が定めていた金利には大きなズレ、いわゆる「グレーゾーン金利」が生じているのです。
民法上の支払い義務が生じない「過払い金」であるにもかかわらず、貸金業者が多額の金利を取り立てる理由づけになっている側面がありました。
任意整理はすべての債務整理の中で一番利用されている方法であり、利息制限法の金利に引き下げて利息を再計算(引き直し計算)できる点が特徴的です。
今後発生する利息をカットできる場合がほとんどで、弁済額についても長期分割方式(3年~5年程度)を採用する等の和解案に持ちこめます。
債務そのものの金額だけでなく、毎月の返済額も減らすことができるため、債務者の将来設計に役立つ有用性があるのです。
ただし、安定的な収入を見込めることが条件になります。
利息や債務額を減らし、長期弁済に変更できたとしても、返済額が日常生活を圧迫するようでは意味がありません。
収入から生活費を差し引いた可処分所得を継続的に確保できる状態が不可欠です。
具体的には、継続して収入を得る見込みがあり、減額後の借金を3年程度で返済できる方が任意整理の利用対象となります。
生活費、学費、運転資金の確保、借金の返済等、債務を抱えてしまう理由は様々です。
支払える金額であれば相応の負担で済みますが、突然仕事を解雇されたり、病気等で働けなくなったりすれば安定した収入を得られなくなり、債務を返済する見込みも立たなくなってしまいます。
将来設計を再建するための方法の1つが任意整理です。
しかし、メリットがある反面、デメリットも存在します。
ここでは双方の特徴を解説します。
任意整理の最大の特徴は、貸金業者との和解交渉が成立すれば、債務者の負担が軽くなると言う点にあります。
弁護士や司法書士といった専門家が代理人として仲介することで手続きが早まりますし、貸金業者からの度重なる連絡等がストップします。
精神的に追い詰められることがなくなり、債務者だけでなく家族への負担も減るのです。
もちろん支払う金額についても大きな変化が見込めます。
引き直し計算することで利息制限法に則った金利にもどすことができるため、グレーゾーン金利を支払う必要がなくなります。
将来払い続ける利息を全面的にカットできる場合もあり、また、長期返済方式に変更できれば月々の支払い額も大幅に減ります。
利息だけでなく返済額そのものが少なくなるため、完済までの期間が短くなり、債務者の将来設計にも役立ちます。
任意整理すれば、グレーゾーン金利分の金額がもどってくる可能性があります。
この過払い金が見込める債権者に的を絞って交渉できる点も任意整理のメリットの1つです。
また、代理人を介した任意交渉であるため、自己破産や個人再生のような面倒な手続きとは無縁で、裁判所を通す必要もありません。
自己破産や個人再生であれば政府発行の官報に名前や住所が掲載されてしまうため、それを参考にした業者から連絡が入るというケースがありますが、任意整理ならそんな心配をする必要がなくなります。
さらに自己破産は、手続きを行っている間は資格制限が設けられており、一部の職業に就けないというデメリットがあります。
任意整理であれば制限はなく、借金の理由そのものにも縛られることもないのです。
任意整理すれば債務者の負担が減るため、日常生活を軌道に乗せ、将来設計を再建できるというメリットがあります。
ただし、CIC、JICC、KSCといった個人信用情報機関に5年~10年間は情報が登録されてしまいます。
このブラックリスト化によって、今後5年~7年間は借り入れできなくなるというデメリットがあります。
また、貸金業者が利息制限法の上限を順守した範囲で貸し付けていた場合は、債務者が改正貸金業法施行前に借り入れていた場合でもグレーゾーン金利が発生しません。
そのため、引き直し計算を行っても借入金そのものは減額されないので、任意整理を依頼する前に確認しなければなりません。
それでも弁護士や司法書士に依頼することで将来利息をカットできるケースはありますが、和解までのハードルを高く設定する、あるいは和解交渉に応じないという方針を取っている業者が増えているため注意が必要です。
そもそも、任意整理は負担額を減らすという点が特徴的であり、自己破産や個人再生のように債務を免除するシステムはありません。
しかも、借り入れた期間や金額、利率等の条件が影響して債務を減額できないケースもあります。
さらに、和解内容によっては遅延損害金の支払い義務が生じたり、分割返済する契約期間が3年未満になってしまったりすることもあります。
膨らませ過ぎた債務を整理する方法は様々ですが、任意整理もその1つです。
債務者個人ではなかなか解決できないため、弁護士や司法書士といった債務整理のエキスパートに依頼するケースがほとんどです。
彼らに任せれば、債権者との和解にもちこめるケースが多く、交渉が成立すれば精神的な負担も軽減します。
しかし、依頼すれば解決が見込めるとわかっていても、実際の費用がわからなければ不安です。
ここでは任意整理にかかる費用を4種類紹介します。
弁護士や司法書士は債務整理の専門家ですが、初回の法律相談は30分で5,000円程度の相談料が発生します。
相談する内容にもよりますが、任意整理の事前相談であれば状況説明に時間がかかります。
30分以内では終わらないことが多いため、1万円程度の費用を用意しておくと安心です。
ただし、延長料金に別の料金体系を採用している弁護士事務所等があるため注意が要ります。
また、最近では「相談は無料」と謳った事務所が増えており、ネット検索等で事前に調べておくと便利です。
事前相談を終えれば弁護士や司法書士と契約を結ぶことになります。
その際に発生するのが着手金です。
これは、債権者との和解交渉に対応してもらうための費用であり、任意整理の達成・未達成にかわらず支払わなければなりません。
しかも、支払期限を和解交渉開始前と規定している場合が多いため、着手金の支払いを確認できないと貸金業者と交渉しない事務所もあります。
料金は案件の難易度によって変化し、「クレジット・サラ金事件報酬基準」であれば貸金業者1社につき2万円程度が相場となります。
ただし、これは弁護士会法律相談センターの報酬規程によるもので、日弁連が定めている規定では着手金の上限が設定されていないため注意が要ります。
また、なかには契約期間内であれば返金保証制度を設けていたり、借金を完済している場合は過払い金返還にかかる着手金を無料にしたりしているケースもあるのでチェックが必要です。
代理人となる弁護士や司法書士に着手金が支払われれば、いよいよ債権者との和解交渉がスタートします。
代理人が受任通知を送付すれば債権者は取り立てを行えなくなるため、債務者の精神的な負担も軽くなります。
代理人は借金の残高や違法金利の有無を調査し、引き直し計算や過払い金の額を確定します。
また、債務が多方面にわたっている場合は、履歴等から時効が成立している債務がないかどうかも調べていきます。
債務者が選択した貸金業者と粘り強く交渉することで和解を成立させれば、利息をカットしたり長期分割返済に変更できたりします。
そうした成功報酬にかかる費用を解決報酬金と言います。
日弁連では1社につき2万円以下、弁護士会法律相談センターでは1社につき2万円と定めています。
ただし、料金の設定については着手金を取らない代わりに解決報酬金を引き上げているケースもあり、事前に調べておく必要があります。
弁護士や司法書士に支払う成功報酬には、解決報酬金の他にも減額報酬があります。
現行の利息制限法に沿った上限利率で引き直し計算を行うと、過払い金を算出できる場合があります。
また、正規の上限利率で借りていた場合でも、代理人が交渉することで将来利息をカットしたり、長期分割返済プランに切り替えたりできます。
そうして支払い総額を減らせた場合に発生する費用が減額報酬です。
上限が10%と規定されているため、ほとんどの事務所では減額分の10%としています。
任意整理を求めている人は、多額の借金と支払いに苦しんできました。
日々の取り立てに追われて精神的にも疲弊しています。
弁護士や司法書士に代理人を依頼するとしても、どれだけ費用がかかるのか心配です。
また、金額を提示されたとしても、足元を見られて高額な料金を請求されているのではないかと疑ってしまいます。
任意整理にかかる料金はどんな基準で設定されているのでしょうか。
ここでは3種類に分けて解説します。
司法書士の報酬は、業務に携わった司法書士が自由に定められます。
ただし、金額、算定方法、諸費用を明示してクライアントと合意した上で決める必要があると会則で規定されています。
任意整理も司法書士が行える重要な案件の1つであり、その報酬については、日本司法書士会連合会が2004年に行った第65回定時総会で「司法書士による任意整理の統一基準」が決議されています。
取引経過の開示、残元本の確定、和解案の提示における指針が示されました。
金額についての基準は、着手金や成功報酬といった名目を問わず、1社につき5万円を上限にしています。
弁護士の報酬に関して一定の基準は設けられていないため、各弁護士事務所ではそれぞれの料金プランを設定し、クライアントに請求してきました。
しかし、一部の弁護士や事務所が過払い金請求事件で不適切な処理を行ったり、社会通念上あきらかに過剰と判断されるような料金を請求したりしたケースがあったことから、日弁連が債務整理事件の報酬にルールを設けることになりました。
2011年の臨時総会で「債務整理事件処理の規律を定める規程」を定め、同年4月から指針に沿った運営がスタートしています。
具体的な金額設定としては、解決報酬金が1社につき2万円以下に規定されました。
しかし、着手金に上限がいないため、解決報酬や減額報酬といった成功報酬と合算された金額にも天井がありません。
依頼する場合は、事前に着手金額を確認する必要があります。
任意整理について、弁護士法律相談センターでは2011年に報酬基準を改定しました。
減額報酬が発生するタイミングの規定、過払い金報酬の割合規定等が新たに設定されています。
また、任意整理を依頼するのであれば、成功報酬のなかに着手金が含まれていない点を注意する必要があります。
センターの基準では、着手金と解決報酬金はともに1社につき2万円、すなわち1社につき合計で4万円と定められています。
任意整理を行う場合は、債務整理の専門家である弁護士や司法書士に代理人を依頼するケースがほとんどです。
相談料や着手金がフリーな事務所も多くなりましたが、成功報酬の相場は2万円~5万円となっています。
成功報酬には減額報酬や過払い金返還報酬があり、減額報酬の場合は減額された借金の10%、過払い金返還報酬なら取りもどした額の20%程度が請求されます。
ただし、料金設定は事務所によって様々で、和解契約後の返済を代行してくれるサービスや、任意整理費用を分割で支払えるプランが用意されている事務所もあり、事前に下調べしておく必要があります。
また、法テラスを利用すれば任意整理費用を立て替えしてくれる援助プランがあり、減額報酬もかかりません。
生活に困窮している利用者には便利ですが、利用者の収入や資産に一定の条件があります。
借金返済に困った人が生活の再建を目指して依頼するのが任意整理です。
彼らの代理人となって債権者と和解交渉に臨むのは弁護士や司法書士といった債務整理の専門家たちですが、案件の金額によっては司法書士では受けられない場合がありますし、弁護士事務所でも様々な料金設定があります。
依頼を考えているのであれば、いくつか候補を挙げ、入念に調べておくのがコツです。