債務の返済が難しくなってしまって債務整理をしようという気持ちもあるものの、それが原因で住宅ローンを使えなくなってしまい、マイホーム生活を将来的に送れなくなるのではないかと懸念する人もいるでしょう。
債務整理をしてしまうと住宅ローンは組めなくなってしまうのでしょうか。
その実態や審査に通ったケースや審査に通る方法について紹介します。
債務整理をすると住宅ローンの審査に通りにくくなるのは確かで、一定期間はほぼ不可能になるのが通例です。
債務整理には任意整理、個人再生、自己破産などがありますが、どの場合であっても状況に違いはありません。
債務整理の対象になった金融機関だけではなく、他の金融機関でも審査が通らなくなるという点にも注意が必要です。
これは債務整理をしたことが信用情報機関に金融事故情報として登録され、金融機関が参照できるようになるからです。
金融機関では住宅ローンの申し込みを受けたときに、信用情報機関から借り入れの履歴についての情報を得ています。
そのため、債務整理を最近したことがある人だから、返済できない可能性が高いと考えて断られてしまう場合が多いのです。
ただ、一定の期間が経過した後なら、住宅ローンの審査基準さえ満たしていれば借りられる可能性もあります。
住宅ローンの審査基準を満たしていなければ、そもそも債務整理をしたかどうかにかかわらず住宅ローンを組めません。
金融機関では、どのような基準を設けて審査をしているのでしょうか。
金融機関が審査の際にまず見ているのが、申込者の属性です。
そもそも対象となる条件を満たしていないために、審査を通れないこともあるので注意しましょう。
属性として年齢、年収や職業、勤続年数、健康状態が確認されている代表的な項目です。
年齢では契約時点及び完済予定時点での年齢が高くないかがチェックされています。
定年などによって収入が不安定になるリスクがあるからです。
年収や職業については、高年収で安定した企業や職業で働いている人は審査が通りやすくなる仕組みになっています。
勤続年数は1年以上というのが基準の金融機関が多く、安定して働く基盤を持っていることを確認しています。
転職直後の場合には審査が通りにくいので注意が必要です。
健康状態については特に持病などがなくて心身ともに健全であることが求められます。
これは住宅ローンを組むときに団体信用生命保険に加入する必要があるからで、その審査に通過できる状況でなければならないのが原則です。
審査のときには、信用情報について金融機関は慎重に吟味します。
信用情報とは、個人の借入状況に関する情報のことで、全ての情報が信用情報機関で管理される仕組みになっています。
具体的な基準は金融機関ごとに違いはあるものの、基本的には債務整理などの事故情報が登録されていると、審査を通過できることはありません。
債務整理以外にも、クレジットカードやカードローンの返済が遅れてしまったり、携帯電話料金の支払いを遅延してしまったりした場合にも事故情報として履歴が残ります。
自分の信用情報がどうなっているかを知りたい場合には、金融機関ではなくても信用情報機関に請求すれば開示してもらうことが可能です。
審査落ちが心配な際にはあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
金融機関は、担保になる土地や建物などの評価額についても審査基準を設けています。
借主の返済できなくなったときの担保は購入する住宅や土地で、その売却によって資金回収をすることを想定しているのが基本です。
その評価額が低いと審査は通りにくく、通ったとしても借り入れ可能な金額が少なくなります。
担保評価額は売買価格そのものではなく、金融機関が算定した時価の70%程度となるのが通例です。
そのため、かなり高額な不動産でないと大きな借り入れをするのは難しいということになります。
このような審査基準を知ると、債務整理後には本当に住宅ローンを組めないと思ってしまいがちです。
しかし、実際には住宅ローンの審査に通ったケースもあるので、どのようなケースなのかを確認しておきましょう。
債務整理をしたことによって、住宅ローンを組めなくなるのは信用情報機関に債務整理をした事実が履歴として残っているからです。
しかし、債務整理の事実はいつまでも信用情報機関に記録されているわけではなく、一定期間が経過すると抹消される仕組みになっています。
つまり、債務整理の事故情報が抹消された後なら、住宅ローンの審査に通る可能性があるのです。
債務整理の事実がなくなるまでにかかる期間はどんな方法で債務整理したかによって異なります。
任意整理や特定調停の場合には5年程度で比較的短期間で済みますが、個人再生や自己破産の場合には5~10年程度となっているのが実態です。
この期間の違いも加味してどんな形で債務整理をするかを検討するようにしましょう。
信用情報機関の事故情報が抹消されていない状態でも全く審査を通れないというわけではありません。
金融機関としては返済が滞ることがなく、きちんと完済してくれる借主であれば住宅ローンの審査を通すというスタンスを持っています。
そのため、年収が高く、安定している場合には住宅ローンの審査に通る可能性もあるのです。
ただ、どのくらいの年収があれば大丈夫かははっきりと明示されているわけではありません。
基準も金融機関によって違うので、実際に住宅ローンを申し込んでみないと通るかどうかはわからないのが事実です。
住宅ローンを組むのに成功しているケースとして、債務整理をした本人ではなく家族の名義で住宅ローンを組んでいるものがあります。
債務整理をした本人については信用情報機関に事故情報が登録されていますが、家族も登録されているわけではありません。
例えば、夫は債務整理をしたけれど、妻の方は債務整理をしていないという場合に妻の名義で申し込むことで住宅ローンを組める場合もあるのです。
ただし、家族名義の場合には申し込む本人の年齢や年収などが審査基準を満たしていなければならないので注意しましょう。
債務整理後に住宅ローンを組めるようにするにはどうしたら良いのでしょうか。
審査を通過できるようにするために押さえておきたいポイントについて紹介します。
少しでも審査を通過できる可能性を上げたいと思うなら、債務整理のときに全く関係しなかった金融機関で住宅ローンを申し込むのが大切です。
お金の貸主の立場になって考えてみれば単純なことで、一度お金を貸して返ってこなかった相手にもう一度貸したいとはあまり思わないでしょう。
一定期間の経過によって信用情報機関に登録された事故情報は抹消されますが、債務整理の対象となった金融機関には顧客情報として記録が残っています。
グループ会社でも情報共有をしてリスク回避をしていることが多く、よほど年収が高くて安定した仕事に就いている状況でなければ審査が通りにくいのです。
一方、債務整理の対象となっていない金融機関の場合には、信用情報機関から事故情報が抹消されたら債務整理をしたことを知ることはできません。
債務整理後の状況がどうかという形で審査をしてくれるので、その後にもう金融事故を起こしていないのなら不利になることはないのです。
債務整理後に住宅ローンを申し込む場合は、債務整理の対象となった金融機関を避けるのが基本だと覚えておきましょう。
住宅ローンを申し込むときには住宅や土地の購入にかかる費用の一部を頭金として負担するのが基本です。
その頭金の金額を大きくすると審査の通過率が高まることが知られています。
これは金融機関にとって信用できるかを判断するための基準になるからです。
頭金として一般的なのが不動産の購入額の2割程度で、それよりも低いと借りられないことも稀ではありません。
4000万円の不動産なら800万円という形でしっかりとまとまった金額なので、継続的な努力をして貯蓄していかなければ確保するのは困難です。
そのため、十分な頭金を用意できる場合にはお金の管理がきちんとできると考えることができます。
また、頭金があることで担保になる不動産の価値がやや低めでも、返済できなくなったときに債権の回収がしやすくなります。
返済できなくなるリスクが高いと思われるような人であっても、貸した金額に対して担保価値が十分にあれば金融機関としてはリスクが低いと考えることが可能です。
債務整理後であっても、信用情報をより良いものにすることで住宅ローンの審査を通過できる可能性が高まります。
信用を高められる取り組みにはいくつかの候補がありますが、中でも比較的取り組むやすいのが良好なクレジットヒストリーを作る方法です。
クレジットヒストリーとはクレジットカードの利用履歴のことで、クレジットカードを所有して使用し、返済をしているだけで作り上げることができます。
クレジットカードがない場合には作らなければなりませんが、その後はキャッシュレスで支払いをするように心がけ、必ず口座にお金を入れて返済できるようにしておくだけでクレジットヒストリーは良くなります。
特にクレジットヒストリーは1枚のクレジットカードを長期間利用していて、毎月滞りなく返済しているというときに高くなる傾向があります。
返済をするためのお金のやりくりができていると考えられるからです。
住宅ローンの審査では、クレジットカードの利用履歴が重要視されることもあるので、できる限り良好なクレジットヒストリーを作りましょう。
債務整理をすると事故情報が信用情報機関に登録されてしまって住宅ローンの審査が通らなくなりがちです。
しかし、5~10年程度が経過すれば事故情報が抹消されるので住宅ローンの審査に通る可能性が生まれます。
ただし、債務整理の対象となった金融機関には履歴が残されているので通りにくいので注意が必要です。
もし心配があるなら債務整理の専門家に相談して悩みを払拭するようにしましょう。