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債務整理が転職に与える影響は?資格制限や職業ごとの違いも解説

債務整理を検討している、もしくは既に手続きを行った経験者の中には今後の転職活動に影響が出るのではないか不安に思う人も居るでしょう。
事実、債務整理の情報は一定期間記録が残り場合によっては資格制限を受ける事もあるので、転職を考えているのであれば注意が必要です。
今回は債務整理が転職に及ぼす可能性のある影響や資格制限について詳しくご紹介します。
具体的な職業例も挙げていきますので参考にしてみてください。


債務整理の基礎知識

債務整理とは借金問題に苦しむ債務者に対する法的な救済措置ですが、実はいくつかの手段の総称となっています。
代表的なものとしては裁判所を介さずに債権者と交渉する「任意整理」、裁判所に申し立てて借金の減額を認めてもらう「民事再生(個人再生)」、同じく裁判所に申し立てを行い借金を全額免除してもらう「自己破産」の3つを覚えておきましょう。
それぞれの債務整理にはメリット・デメリットがあり、自身が抱える債務額の大きさや経済状況に即して適切な方法を選択する事が重要です。

債務整理を行うと債務者の個人信用情報に金融事故としての記録が残り、いわゆる「ブラックリスト」状態になる事も併せて覚えておきましょう。
詳しくは後述しますが、ブラックリスト状態は一定期間保存され様々な金融機関・信販会社で情報が参照されます。
また、民事再生と自己破産に関しては個人信用情報への登録に加えて、政府が発行する機関誌である「官報」に氏名や住所が掲載されるという点にも留意してください。

信用情報機関への登録・官報への掲載について

債務整理における大きなデメリットは「信用情報機関への登録」と「官報への掲載」であると言えます。
この2つのデメリットがどのような意味合いを持つのか、ここで詳しく見ていきましょう。

信用情報機関への登録

個人信用情報とは、その人の年収・勤務先・ローンの返済状況といった情報がまとめられたものです。
この個人信用情報は信用情報機関と呼ばれる場所で管理され、信販会社や金融機関が利用者の信用力を審査する際に情報が開示される事があります。
日本国内の代表的な信用情報機関は「日本信用情報機構(JICC)」「シー・アイ・シー(CIC)」「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」の3つです。
どの信用情報機関に金融事故の情報が登録されるかはケースバイケースですが、信用情報機関同士の間でも独自のネットワークによって情報が共有されている点には留意しておきましょう。

債務整理を行った場合、手続きの内容や登録される信用情報機関によって5~10年間その情報が記録として残ります。
その間はあらゆる与信審査で不利になるため、新たな借り入れやクレジットカードの発行、ローン商品を組む事が難しくなるのです。
なお、一定期間が経過して信用情報から記録が消えれば与信審査に影響を及ぼす事はなくなります。
なお、個人信用情報はあくまでクレジットやローンの与信審査に利用されるものであり、一般の人に情報が公開される事はありません(本人は申請すれば開示可能)。
そのため、個人信用情報がブラックリスト状態になる事自体は転職に際して不利益になる可能性は低いと言えるでしょう。

官報への掲載

債務整理の中でも「民事再生」と「自己破産」の2つは裁判所へ申し立て行いますが、これらいずれかの手続きをとると官報へ実名が掲載される事になります(これを「官報公告」と呼びます)。
官報にはこの他にも法律的な決定事項や国政における人事異動など、様々な情報が掲載されている事も覚えておきましょう。
というのも、この膨大な情報の中から民事再生・自己破産の手続きを行った人物を特定するには膨大な労力を要します。
また、官報にはインターネット上での情報検索機能が備わっていますが、この機能を利用するには有料会員の登録が必要になるのです。
加えて一般的な日常生活を送る中で毎月発行される官報に目を通している人は考えにくく、実名の官報広告が通常の転職活動に影響を及ぼす可能性は低いと言えます。
そもそも民事再生・自己破産の手続きにおいては一部の職業を除いて転職・就職に制限が設けられる事はありません。

債務整理が転職に与える影響

債務整理の中でも自己破産を行った場合は職業上の規定として特定の仕事で資格制限を受けるケースがありますが、それ以外で一個人の自己破産経歴が一般的な企業に知られるという可能性は低いです。
そもそも、企業の採用試験や入社時の提出書類で「債務整理の経歴」が問われる事はほぼありません。
ただし、金融関係・セキュリティ関係の職業の場合は従業員の「信用」が重視される傾向があるため、企業側が官報などを用いて応募者の債務整理歴を調べている可能性は0ではありません。
こうした職業への転職を考えている場合は、採用試験で不利に働く可能性がある事には留意しておきましょう。

また、転職先から内定をもらっている場合には「自己破産の事実が会社に知られて内定取り消しになるのではないか」と心配に思う人も居るでしょう。
確かに従業員の自己破産は企業にしてみればマイナスイメージになるので、内定を取り消す動きがとられる可能性がないとは言い切れません。
ただし、従業員の解雇や内定の取り消しには「正当な理由」が必要であると定められています。
そして、一般的に自己破産は従業員を解雇する正当な理由として認められていません。
内定の取り消しは雇用契約の解消とみなされるため、合理的かつ社会通念に沿った理由が必要になるのです。
仮に自己破産が理由で内定取り消しになったと見られる場合には、すぐに弁護士へ相談してみましょう。

債務整理前後の転職で知っておきたい資格制限と復権について

前述の通り、自己破産の手続きをとった際には特定の職業に就けなくなる資格制限を受ける事になります。
しかしそれも生涯を通して続くものではありません。
ここでは資格制限の具体的な内容・期間・復権条件についてご紹介します。

資格制限

自己破産の手続きのよって一定の資格を取得できなくなったり、保有している資格を失ったりすることを資格制限と呼びます。
なお、資格制限は破産法によって定められているのではなく、それぞれの職業・資格に関する法令で制限がされているものです。
資格制限を受ける職業の代表的なものには弁護士・司法書士といった士業、警備員、宅地建物取引主任者など挙げられます。
こうした資格は破産手続きの開始から権利が回復するまで資格制限が継続するので、転職活動にも影響を及ぼすものとして覚えておきましょう。
ただし、生命保険外交員に関しては事情が特別です。
生命保険外交員に必要な資格は、自己破産を行って資格制限を受けている間は新しく取得する事が出来なくなります。
ただし、破産手続きの開始時に既に資格を有している場合は、仕事を継続出来るという事を覚えておきましょう。

復権

自己破産で受けてしまう資格制限が一定期間経過する事によって解除される事を「復権」と呼びます。
復権に至るプロセスにはいくつかのパターンがあり、それぞれで資格制限から復権までの期間が異なる点に注意しましょう。
復権のパターンは大きく「当然復権」と「申し立てによる復権」の2つに大別可能です。
例えば、当然復権の代表的なものとしては「免責許可の確定」が挙げられるでしょう。

自己破産では裁判所に申し立てを行い、借金を返済しきる能力が無い事を認めてもらう必要があります。
返済能力が事が認められた段階で破産手続きが開始となりますが、実はこの時点では借金は免除されていません。
債務者が処分出来る財産を持っていないか調査を行い、それらの処理が終わって初めて借金が免除となるのです。
免責許可の確定とは、この「借金免除された」時点での状態を指しています。
自己破産で債務者が処分出来る財産を所有している場合を「管財事件」、所有していない場合を「同時廃止事件」と呼ぶ事も覚えておくと良いでしょう。
一般的に同時廃止事件の方が手続きが早く済み、復権までは3ヶ月から6ヶ月と言われています。

当然復権には他にも「破産手続きの廃止」「個人再生の再生計画が認可される」「破産手続きから10年が経過する」などのパターンがあり、これらのどれかひとつでも当てはまれば自動的に復権となります。
申し立てによる復権とは、全ての債務が無くなった際に自分から裁判所へ申し立てを行い復権を認めてもらうというパターンです。

転職において債務整理で制限を受ける職業・団体とは?

債務整理(自己破産)の影響で具体的にどのような職業が資格制限を受けるのか、気になる人も多いでしょう。
資格制限がかけられる職業・団体は以下のようになっています。

職業

自己破産で資格制限を受ける職業として有名なものが「士業」の類です。
具体的には弁護士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・弁理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士・通関士などが対象となるので注意しておきましょう。
士業以外では卸売業者・証券外務員・旅行業務取扱管理者・質屋など高額な金銭を取り扱う事の多い職業も資格制限の対象です。
また、破産手続きの一種である「少額管財手続」の場合、債務者の財産を調査・処分する関係で手続きが終わるまで長期間居住地を離れることが制限されます。
そのため、手続きの期間中は海外出張が必須となる職業への転職は難しい事も覚えておきましょう。

その他企業・団体

人事院の人事官や教育委員会の委員長・委員が自己破産した場合、その時点で資格制限の対象となり退職処分となってしまいます。
同様に都道府県公安委員会・公正取引委員会なども資格制限の対象となる事を覚えておきましょう。
ただし、一般公務員の場合は自己破産が職務の欠格事由に指定されていないので転職する事は可能です。
商工会議所・金融商品取引業・労働派遣業・信用金庫といった団体企業の役員も資格制限の対象となる場合があります。
一般企業の取締役の場合、自己破産した時点で一度委任契約が終了となるので役職を辞す流れになりますが、再度選任されれば取締役に戻る事が可能です。

債務整理で転職が不安なら専門家へ相談するのが安心
債務整理は借金を整理して生活を立て直すというメリットの一方で、ブラックリストや官報公告といったリスクもあります。
一般的な企業への転職では影響が少ないと言えますが、特定の職業では資格制限を受けてしまうので十分な注意が必要です。
これから債務整理を検討するのであれば、自身の現職や転職を希望する職業についてしっかり調べておくようにしましょう。
不安であれば弁護士・司法書士といった専門家を頼ってみてください。

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