借金問題に苦しむ人にとって、債務整理は生活を立て直すために有効な手段です。
しかしお金に関わる手続きとなれば、注意点や準備しておくべき事は無いか気になってしまうでしょう。
一般的に債務整理は専門家に相談して行いますが、自分でも注意点を把握して情報を整理出来ていると安心して手続きを進める事が出来ます。
今回は債務整理を行うにあたって知っておきたいポイントや必要な準備について見てみましょう。
債務整理は債務者を救済するための法的な措置である事は確かですが、全くノーリスクで行えるという訳ではありません。
そのため、事前にメリットとデメリットをしっかり把握しておく事が予期せぬトラブルを回避するために重要であると言えるでしょう。
まず、債務整理の大きなメリットとしては「借金の取り立てがストップする」という事が挙げられます。
債務整理を弁護士・司法書士といった専門家に依頼すると「受任通知」と呼ばれる書類が債権者に送付されますが、これは専門家が債務者から正式に依頼を受けた事を示すものです。
この段階で依頼を受けた専門家は債務者の代理人になるので、債権者が直接債務者と連絡を取る事が出来なくなります。
結果的に督促状の送付や催促の電話が出来なくなるので、債務整理期間中は債権者からの取り立てがストップするのです。
債務整理にはいくつかの種類がありますが、方法によっては将来の利息をカットしたり借金を大幅減額・全額免除したりなど大きな効果が期待出来るケースもあります。
ただし、自分が抱えている借金の金額や債権者の数によって適切な方法は異なるので、専門家の意見を聞きながら慎重に手段を選択する事が重要です。
そのためにも専門家に相談する際には自分の債務状況を正確に把握しておくようにしましょう。
債務整理におけるデメリットもいくつかありますが、まずは「個人信用情報に記録が残る」という事を覚えておきましょう。
詳細については後述しますが、債務整理の記録が個人信用情報に残っていると新たな借り入れやクレジットカードの発行が困難になるのです。
また、債務整理は種類によって借金の減額効果が薄い場合があります。
正確な生活再建計画を立てるためにも、それぞれの債務整理方法の特徴をしっかり把握しておきましょう。
債務整理をするにあたって気をつけたいポイントはいくつかありますが、その多くは専門家に相談する際に確認しておけば問題ありません。
しかし「信用情報機関への登録」「債務整理の種類」「弁護士と司法書士の違い」という3つのポイントについては、事前に身に付けておきたい知識と言えます。
ここではこの3つのポイントをそれぞれ深堀りして見ていきましょう。
債務整理を行うと原則的に信用情報機関に金融事故としての記録が残り、いわゆる「ブラックリスト」という状態になります。
信用情報とは個人の年収やローン・カードの支払情報がまとめられたものです。
こうした個人信用情報は信用情報機関で保管されており、ローンやカードの申し込みがあった際に金融機関が情報を参照出来る仕組みになっているのです。
日本で個人信用情報を管理しているのは「日本信用情報機構(JICC)」「シー・アイ・シー(CIC)」「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」の3社となっています。
この3社の間では相互ネットワークによって管理している個人信用情報の共有が行われている点にも留意しておきましょう。
前述の通り、個人信用情報がブラックリストの状態だと新たな借り入れやクレジットカードの発行が難しくなります。
ただし、個人信用情報のブラックリスト状態は生涯に渡って続く訳ではありません。
債務整理の種類や登録先の信用情報機関によって記録される期間は異なりますが、一般的には債務整理してから5年間以内と言われています。
一部の場合は記録期間が10年程度になる事もあるので注意しましょう。
債務整理の中でも「民事再生(個人再生)」と「自己破産」は規模の大きい手続きになります。
この2つの債務整理では手続きの後、政府が発行している「官報」と呼ばれる機関誌に氏名や住所が掲載される事も覚えておきましょう。
官報は一般公開されているので誰でも閲覧する事は可能ですが、一般人が日常生活の中で目にする可能性は低いと言えます。
仮に閲覧したとしても、官報には膨大な量の情報が掲載されているためその中から特定の個人を見つけ出すのは困難でしょう。
債務整理した事を知人や会社の同僚に知られたくない人にとっては気になるかもポイントかも知れませんが、官報によって債務整理の事実が露呈する可能性は極めて低いのです。
ひとくちに債務整理と言ってもその種類は様々で、代表的なものには「任意整理」「民事再生(個人再生とも言う)」「自己破産」の3種類が挙げられます。
それぞれ特徴が異なるので自分の状況に合った手段を選択する事が大切です。
任意整理では裁判所を介さずに債権者と債務者が交渉を行い、今後の返済計画について和解案を出す事を目指します。
債務者側は弁護士・司法書士といった代理人を立てるのが一般的です。
ここで言う和解案とは将来利息のカットや分割払いの事を指しています。
任意整理でも和解が難しい場合には、裁判所の調停手続きを利用して交渉を行う「特定調停」と呼ばれる方法も視野に入れましょう。
民事再生とは裁判所に申し立てを行い、借金の減額・免除を認めてもらう手続きです。
減額・免除してもらえる金額は借金の大きさや債務者の経済状況によって異なります。
民事再生では住宅や車といった財産を守りながら債務整理を行えるというのが大きな特徴です。
裁判所を介した債務整理にはもう一つ「自己破産」という方法もあります。
債務整理の中で最も名前が知られている手段であり、裁判所の認可が下りれば借金を全額免除してもらえるのです。
ただし、車や住宅といった高価な財産は没収となる他、生命保険募集人などの職業に一定期間就けなくなる資格制限を受けるなどのデメリットがあります。
なお、債務整理ではまずリスクの低い任意整理での解決を検討し、それが難しい場合に民事再生や自己破産の適用を検討するのが一般的です。
債務整理の依頼先としては弁護士か司法書士が挙げられますが、両者では取り扱う事の出来る案件が異なるので自身の状況に応じて最適な依頼先を選ぶ事が重要です。
弁護士は法律相談に留まらず代理人として貸金業者との交渉を行ったり、和解出来なかった場合の訴訟に代理人として出廷したりなど債務整理の手続きをトータルで対応してもらえます。
司法書士の場合も相談・交渉・訴訟代理人といった業務を依頼する事は可能ですが、取り扱う事の出来る案件は「個別の債務額が140万円以下」に限られるので注意が必要です。
また、弁護士は代理人として最高裁まで出廷する事が可能ですが、司法書士が担当出来るのは簡易裁判所までである事も覚えておきましょう。
債務整理を検討する段階になると、債務者の経済状況がひっ迫して生活に支障が出ているケースも少なくありません。
債務整理するにあたって必要になる専門家費用も、出来るだけ安く抑えたいというのが本音でしょう。
弁護士と司法書士では取り扱う事の出来る業務範囲や債務額に差がありますが、必ずしも弁護士の方が費用が高いとは限りません。
確かに一般的には司法書士よりも弁護士費用のが高い傾向もありますが、専門家費用は各事務所が自主的に設定しているので例外もたくさんあります。
費用と対応をよく考慮して、自分に合った専門家へ依頼しましょう。
債務整理を専門家に依頼する場合、まず自分が置かれている状況を伝えるところから相談が始まります。
スムーズに相談を進めるためには、あらかじめ自分の借入や家計状況を正確にまとめておく事が重要です。
ここで、専門家に相談する前に準備しておきたい内容を具体的3つのポイントに分けて押さえておきましょう。
まずは債務整理にかける借金の借り入れ状況を整理するところから始めると良いでしょう。
借り入れ先をリストアップして借入金額・月々の返済金額・滞納期間などをそれぞれまとめておくとベターです。
借り入れの契約書や月々の返済証明書(振込明細・銀行通帳など)があれば専門家が状況を正確に判断しやすくなるので、可能な限り用意しておくようにしましょう。
また、債務整理の直前に借り入れを行う事は避けておくのが賢明です。
借りたばかり・もしくは一度も返済していない債務は最初から返済する気がなかったとみなされ、債権者が交渉に応じてくれないケースがあるので注意しましょう。
債務整理にあたっては、自分の財務状況を正確に把握しておく事も重要です。
債務者の財務状況は返済計画を立てる際に重要視されるポイントであり、自己破産であれば手続きの内容そのものが変化する場合があります。
把握しておくべき財務は家族全体のものではなく、自分名義のものだけです。
代表的なものとしては預貯金・生命保険・不動産・投資信託などが挙げられます。
また、返済していくにあたっての原資となる収入についても正確に把握しておきましょう。
直近の給料明細・預金通帳などがあれば専門家への相談がスムーズに行えます。
債務整理では交渉や手続きにおいて「借金の経緯」が重要視される場面もあります。
借金の経緯とは具体的に言うと「借り入れの理由」「返済が滞っている理由」などです。
こうした事情は依頼を受けた専門家が債権者と交渉する際に必要になる他、自己破産においては手続きの可否にも関わってきます。
あらかじめ事情を整理してまとめておくと、相談・手続きがスムーズに進むでしょう。
借金に関する書類を用意しながら時系列順に借入の経緯・金額・返済状況などを並べていくと分かりやすくまとまります。
債務整理の中には自力で手続きを進められるものもありますが、手続きの効果を最大限に引き出すために専門家へ依頼するというのが一般的です。
依頼したい事務所が決まったら、事前に電話やwebなどで予約をして相談しに行きましょう。
多くの法律事務所では初回の無料相談を行っているので、まずは足を運んで専門家の意見を聞く事が重要です。
住まいの近くに事務所がない場合には、出張相談に対応している事務所を探してみましょう。
相談ではまず担当の専門家に財産・家計の状況、借金の理由、手続きに関する質問・要望などを伝えましょう。
専門家は相談者の状況・要望を加味した上で債務整理が適切であるかどうかの判断を下し、任意整理・民事再生・自己破産の中から最適な方法を選ぶ事になります。
依頼が正式に決定したら必要に応じて着手金などの初期費用を支払い、専門家が受任通知を債権者に送付する事で取り立てが止まるという流れです。
任意整理の場合は担当者が債権者と交渉を開始し、民事再生・自己破産であれば裁判所に申し立てて手続きが始まる事になります。
債務整理をする前に長所短所を理解して必要な準備を進めよう
債務整理は状況に合わせていくつかの種類が用意されており、それぞれメリット・デメリットが異なります。
信用情報機関への登録や弁護士・司法書士の違いなどは押さえておきたい予備知識です。
また、債務整理を行う前には自身の現状を正確に把握する事も重要になります。
借り入れ状況・財務状況・借金の理由などは出来るだけ紙にまとめておきましょう。
専門家への相談を迷っている人は、本記事を参考にして検討してみてください。