債務整理を検討している方は債務整理に関する様々な事情を考慮しているかと思いますが、自分以外の人への影響については考えたことがあるでしょうか。
実は債務整理をすると家族や保証人にも影響を与えることがあり、場合によっては信頼関係の崩壊に発展してしまいます。
そこで今回は債務整理が自分以外の人に与える影響、また逆に影響を与えないものについて解説していきます。
一口に債務整理と言っても、その中には主に任意整理、個人再生、自己破産の三種類があります。
1つ目の任意整理とは、利息や遅延損害金の減免、返済期間などについて債権者と債務者の間で私的に交渉を行う手続きのことです。
2つ目の個人再生は、裁判所に申し立てを行うことで元金を含む借金の額を減らし、決められた期間内に借金を返済する手続きのことを指します。
3つ目の自己破産は、裁判所から債務者に借金を返済する能力がないことを認めてもらったうえで、すべての借金をなくす手続きです。
まずは自分が行おうとしているのが、債務整理の中でもどれに当たるのかということを知っておきましょう。
はじめに債務整理が自分以外の人に与える影響について説明していくという話をしましたが、その前提として債務整理を行う本人が受ける影響についても解説しておきましょう。
債務整理は借金を軽減することができますが、それと同時にデメリットもあります。
まずは債務整理を行う当人が受けるデメリットについて知りましょう。
債務整理を行うことで本人が受けるマイナスの影響のひとつが、ブラックリストに登録されることです。
ブラックリストとは、ローンやクレジットカード、借金の返済に遅延があった際に、信用情報機関に登録される事故情報のことです。
先ほど説明した3種類のうち、どの債務整理を行なっても事故情報の登録は避けられません。
事故情報が登録される期間は債務整理の内容によって異なりますが、概ね5年ないし10年の間は事故情報が信用情報機関に残ります。
ローンやクレジットを扱う会社は、利用者の審査のときに信用情報機関の事故情報を参照しますから、ブラックリストに掲載されている間は、基本的にローンやクレジットを利用することができなくなります。
債務整理のなかでも個人再生または自己破産を行うと、そのことが官報に掲載されます。
官報とは国によって発行されている広報誌のことであり、その中に債務者が債務整理の手続きを始めたという情報が、氏名や住所と共に掲載されます。
このことがブラックリストに登録されることと同じように、何かしらの手続きを行ううえで不利に働きうるということです。
官報は主に貸金業者や法律事務所で読まれているものであるため、第三者に官報に載せられた情報を読まれてしまう可能性は低いです。
ただし、個人再生や自己破産では家族の収入などを示す書類などの提出を求められるため、債務整理を行おうとしていることを家族に知られる可能性は高いと言えます。
自己破産を行う場合、その手続きを行う者が所有している財産は没収されてしまいます。
没収の対象となるのは時価20万円以上のもので、家や車なども没収されてしまいます。
その一方で、家具などの生活必需品は没収の対象とはなりません。
家族と一緒に住んでいる持ち家が没収されてしまい、引っ越しを強いられることになると、結果としてその影響は同居している家族にも及ぶことになってしまいます。
個人再生を行う場合には、持ち家は特例によって没収の対象とはなりません。
しかし車についてはローンを返済中の場合は手放さなければならなくなります。
債務整理は自分の財産のみならず、職にも影響を与えかねません。
自己破産を行った場合には、一部の職業に就くことができなくなるのです。
具体的には、公認会計士や弁護士のような士業、警備員などがその対象です。
もし自己破産の手続きを行なっている時にそうした職業に就いている場合には、一時的にその職を離れる必要があります。
ただし全ての手続きが終了してしまえば、元の仕事に戻ることはできます。
ここから冒頭で触れた本題に入っていきます。
債務整理を行うと、場合によっては自分だけではなく自分の家族も影響を受けることがあるということはすでに説明した通りです。
今回はその影響を3点に分けて説明していきます。
これを受けてもし家族への影響が避けられないと思う場合には、トラブルを回避するためにも早めに家族と相談しておくほうが良いでしょう。
債務整理が本人に与える影響について説明した際に、債務整理を行う本人の事故情報が信用情報機関に登録されてしまうという話をしました。
そのようにしてブラックリストに載ってしまうのはあくまでも手続きを行った本人だけです。
したがって家族の信用情報に悪影響はなく、家族がクレジットカードを発行したり、ローンを組んだりすることは基本的にはできます。
ですが債務整理が間接的に家族のクレジットカードやローンに影響してしまうことがあります。
それは住所などから債務整理を行なった者とその家族が紐づけられ、生計を共にしていると判断されたときに発生します。
具体的な影響として考えられるのは、限度額を下げられたり、新しいローンの審査に通りづらくなったりすることです。
ですからそういった面で悪影響を被るのは自分だけではないかもしれないということを頭に入れておきましょう。
債務者が死亡しても、債務者の借金自体はなくなりません。
家族が債務者の遺産を相続した場合には、債務者の財産だけでなく、その借金をも相続することになってしまうのです。
ですから財産と借金の両方を比べて、借金のほうが多いという場合には相続を放棄することも選択肢のひとつとなります。
ただし、遺産相続の放棄は一度行うと撤回することができません。
また、家族が遺産の相続権を放棄しても、相続権は他の相続人に移っていきます。
ですから遺産の相続については、借金のことも含めてトラブルのないように相談しておくことが大切です。
子どもが奨学金を利用する場合には、連帯保証人が必要となります。
親が債務整理を行なったという事故情報を信用情報機関に登録されている場合、その親は奨学金の連帯保証人にはなれないので、子どもが奨学金制度を利用することができません。
すでに触れた通り、事故情報の登録は5年ないし10年でなくなるため、まだ子どもが小さく、将来的に奨学金を利用する可能性があるという場合には、早めに債務整理を行うことが得策となるかもしれません。
そうすることで奨学金を利用したい時期には、債務整理による事故情報がなくなっているかもしれないからです。
また奨学金を利用するためには、他の家族や親戚に連帯保証人を頼む、保証会社を利用するといった方法もあります。
どれが最も良い方法であるのか、家族とよく話し合って決めるのがよいでしょう。
債務整理を行う場合には、保証人への影響にも注意しておく必要があります。
例えば個人再生や自己破産を行った場合、債務者が減額された分の借金は保証人が返済しなければならなくなります。
当然、保証人が家族であれば、家族が減額分の借金を返済することになります。
特に注意すべきなのは、離婚をしても保証人としての立場は消えず、返済義務は無くならないということです。
ただし任意整理においては、整理する債務の対象を選べます。
したがって保証人がついている債務を除いて債務を整理すれば、保証人に返済義務が移ることもありません。
ここからは今までとは逆に、債務整理の影響を受けないものについて解説していきます。
今まで思い込みで懸念していたことが、実は何の問題もなかったということがあるかもしれません。
債務整理の影響を受けないものについても正しく理解し、債務整理を行うかどうかの判断を適切に行えるようにしましょう。
すでに説明したように、自己破産によって一部の職業に就けなくなったり、一時的にその職を離れなければならないことはあります。
しかしそうした場合を除けば、債務整理を行うことによる職業への影響はありません。
もちろん債務整理に必要な書類の発行を依頼することを通じて、職場に債務整理を行うことが知られる可能性はあります。
ですが債務整理はあくまでも生活再建に必要な手続きであって、そのことを理由として職場を追われることはないのです。
財産として家が没収されるという話はしましたが、賃貸アパートやマンションの契約を解除されることはありません。
家賃を払っている限りは問題なく住むことができます。
債務整理を行なったあとに新しく契約するという場合でも、債務整理を理由に審査で落とされることはまずないです。
ただし、契約の際の保証人として保証会社を選んだ場合には、保証会社の審査に落ちて住宅を借りられないということはあり得ます。
必ず契約を結びたいという場合には、保険会社以外の保証人をつけておくと安心です。
奨学金を借りる際に保証人となることができないということ以外には、子どものライフイベントへの影響はほとんどないと言っていいでしょう。
例えば進学や就職においては、子どもの能力のみが判断されるため、その能力に応じて自由に進学先や就職先を希望できます。
そのときに親の債務整理が影響することはありません。
また子どもの戸籍や住民票に親の債務整理の情報が掲載されるといったこともないため、子どもの結婚にも影響しません。
必要以上に子どもへの影響を心配するあまり債務整理を渋った結果、かえって子どもへの負担が大きくなってしまうようなことは避けたいところです。
債務整理による影響は、家族や保証人との関係を壊す可能性さえあるということはよくわかったかと思います。
そうは言っても、債務整理は債務者本人が生活を立て直すために必要な手続きです。
ですから債務整理が必要な場合には、周囲に与える影響を想定して、その影響が及びうると考えられる人と早めに相談することが大切となります。