銀行や消費者金融などから借金をすると、返済が苦しくなる場合があります。
返済不能に陥ると、債務整理を考える必要性も出てきます。
しかし、ブラックリストが気になってしまい、債務整理へなかなか足を踏み出せない人もいるかもしれません。
そこで今回は、ブラックリストとは何か、ブラックリストが生活に及ぼす影響は何かなどについて説明します。
債務整理をするとブラックリストに載ってしまう、という情報を聞いたことはあるでしょうか。
実は、「ブラックリスト」という公的な名簿やリストはありません。
しかし、債務整理をした場合の個人信用情報は残ります。
個人信用情報とは、キャッシングやローンなどの信用取引情報のことです。
個人信用情報を取り扱う組織のことは、信用情報機関といいます。
いわゆる「ブラックリストに載る」というのは、信用情報機関に債務整理の情報が残ってしまうことを指しています。
借金返済の遅延や滞納をはじめ、任意整理や破産手続きなどの情報は、すべて個人信用情報として残るのが基本です。
債務整理によるブラックリスト状態には、3つの要素が大きく関わっています。
1つ目は、個人信用情報です。
キャッシングやクレジットカード、ローンなどを利用すると、すべて履歴として残ります。
事故情報はもちろん、返済や利用状況などの通常履歴もしっかり記録されます。
2つ目は、信用情報機関です。
日本には銀行・信用金庫系、信販系、消費者金融系の3つの信用情報機関があります。
それぞれの情報は3機関で共有・参照できる仕組みになっています。
3つ目は、事故情報です。
事故情報とは、長期滞納や債務整理などの金融事故の情報のことです。
銀行や貸金業者からすれば、貸したお金は当然、返してもらいたいものです。
しかし、債務整理をされると、貸したお金を全額取り戻すのは難しくなります。
自己破産をされてしまえば、滞納分も利息分も払ってもらえません。
そこで業者は「債務整理をした人=信用性が低い人」とみなします。
債務整理の事実を事故情報として個人信用情報に登録するのも、お金を貸す相手の信用性を確認するためです。
一方、債務整理によって債務者の生活は楽になりますが、さまざまな影響も生じます。
ブラックリスト状態になっても、近所の人に知られたり就職できなくなったりなどの弊害はありません。
自分から話題にしない限りは、他人に個人信用情報を知られる心配はないのです。
しかし、個人信用取引においては、さまざまな弊害がでてきます。
まず、新たな借入やローンなどの利用はできません。
大きな出費や買い物を考えている人にとっては、不便に感じる可能性が高くなるでしょう。
また、家族や親戚から頼まれたとしても、保証人にはなれません。
次から詳しくみていきましょう。
ブラックリスト状態になると、新たな借り入れができません。
銀行や消費者金融などでは、借り入れの申し込みがあると必ず信用情報機関への照会を行います。
事故情報が残っていると、審査は通らず融資不可となるのが一般的です。
特に、銀行は審査が厳しい傾向にあります。
消費者金融でも、多くの場合は新たなキャッシングは困難です。
しかし、現在の収入が安定していて証明できる書類があれば、事故情報が残っていても借り入れ可能とする金融機関もあります。
消費者金融は全国区の大手業者から地域密着型の中小企業までさまざまです。
それぞれ審査基準も異なるため、どうしても借り入れしたい場合は問い合わせをしてみるのもひとつの方法です。
ブラックリスト状態になっていると、新しいクレジットカードは作れません。
キャッシング同様、クレジットカードの審査でも信用情報機関への照会があります。
たとえば、消費者金融で債務整理をしている人がクレジットカードの新規申し込みをしたとします。
消費者金融系とクレジットカード系の信用情報機関は異なります。
しかし、2団体の間では情報の共有を行っているので、消費者金融での事故情報はクレジットカード会社でも調査可能です。
事故情報が見つかれば、審査に通らないケースがほとんどです。
クレジットカード会社の規約次第では、手持ちのクレジットカードを返却しなければならないケースもあります。
住宅や車などの高額商品は、ローンでの購入が一般的です。
しかし、ブラックリスト状態になっていると、各種ローンの利用ができません。
事業ローンや子どもの教育ローンなども組めなくなります。
都心部に住んでいれば必ずしも車は必要ではありませんし、子どもがいなければ教育ローンを組むこともありません。
ただ、家庭を持つ人にとっては、住居や子どもの教育に制限がかかってしまいます。
起業や独立を検討している人にとっても、資金調達が難しくなる点がデメリットです。
金融事故を起こしていると分割払いもできません。
金額の張る買い物は、住宅や車だけではないでしょう。
資格取得のための学校の授業料、エステのサービス料、宝飾品やブランド品などの代金は高額です。
現金での一括払いが難しく、分割払いにする人は多いです。
いわゆる贅沢品は、なくて困る人はそこまでいないでしょう。
しかし、たとえば携帯電話は多くの人にとって生活必需品になっています。
一括払い以外の買い方はできない点に注意が必要です。
ブラックリスト状態の人は、他人の借金に対して保証人にはなれません。
保証人とは、他人の債務を保証する人のことです。
債務者本人が返済不能になったら、保証人が代わって返済の義務を負います。
業者は確実にお金を返してもらうため、契約者に保証人を付けてもらいます。
しかし、債務整理をしている人は信用性が低いため、保証人としては認められません。
保証人と連帯保証人では返済義務の範囲は異なりますが、ブラックリスト状態の人がなれない点では、どちらも同じです。
たとえば、夫が住宅ローンを組む場合、債務整理をしている妻を連帯保証人にはできません。
子どもの進学で奨学金を利用するときも、債務整理をしている親を連帯保証人にはできないのです。
ブラックリスト状態だと、不動産賃貸契約において不便が生じるケースがあります。
不動産賃貸契約は、事故情報があっても締結は可能です。
ただ、信販会社やカード会社を利用して家賃の支払いをする場合は、必ず審査があります。
個人信用情報の照会があるため、事故情報が見つかれば審査に落ちる可能性は高くなります。
クレジットカードで家賃の支払いができると、ポイントが貯まりやすく何かとお得です。
しかし、審査によって事故情報を知られる危険性は否めません。
家賃は現金で直接払うか銀行引き落としにするほうが無難です。
ブラックリストに事故情報が登録される期間は、債務整理の種類によって異なります。
主な債務整理の種類は、任意整理、個人再生、自己破産の3つです。
任意整理と個人再生は借金の減額によって返済を続ける方法、自己破産は支払い義務自体を免除してもらう方法です。
個人再生と自己破産は、減額や免除を裁判所で認めてもらう必要があります。
任意整理の一般的な事故情報の登録期間は、5年ほどです。
登録の起算日は、手続きが終わった日、完済日、代位弁済日など信用情報機関によってさまざまです。
代位弁済とは、滞納した借金を第三者が返済することを指します。
個人再生と自己破産の事故情報の登録期間は、5~10年といわれています。
信用情報が事実とは異なる場合は、信用情報機関で訂正と削除が可能です。
たとえば、自分以外の同姓同名の情報が載ってしまう、カードの盗難やスキミングによって悪用された結果、事故情報が載ってしまうなどのケースがあります。
もし、登録情報の誤りを見つけたら、信用情報機関へ連絡しましょう。
一方、事故情報が事実の場合は、一定期間が過ぎるまで抹消はできません。
本人としては早く消して欲しいと思うかもしれませんが、抹消方法はない点を覚えておきましょう。
「事故情報が抹消できる」といって持ちかけ、手数料をだまし取ろうとする詐欺も存在するため、注意が必要です。
債務整理の登録期間が過ぎれば、自分名義でのキャッシングやクレジットカードの申し込み、各種ローンの利用ができるようになります。
事故情報は消去されるため、審査のときに引っかかることはありません。
しかし、個人信用情報が回復しても、信用情報機関からの連絡はありません。
キャッシングやローンの審査を確実に通過したいと思う人は、ブラックリスト状態から回復しているか信用情報機関へ確認してみましょう。
信用情報機関は、全国銀行協会、日本信用情報機構、シー・アイ・シーの3つです。
各機関で登録期間は異なります。
確実に情報をチェックするなら、すべての機関に情報開示請求を行いましょう。
1つの信用情報機関で、すべての情報を知ることはできません。
申し込み方法は各機関で変わります。
全国銀行協会は郵送、日本信用情報機構はスマートフォン、郵送、窓口、シー・アイ・シーはインターネット、郵送、窓口での申し込みが可能です。
どの機関も、窓口での請求は500円、それ以外の方法では1000円の手数料がかかります。
いずれかの方法で情報開示請求を行うと、開示書類が送付されます。
書類には、契約者の氏名や生年月日などの基本情報をはじめ、契約内容や支払いに関する情報が載っています。
延滞や事故情報、異動情報、代位弁済などの内容を確認しましょう。
記載がなければ信用情報は回復していることになります。
1つでも事故情報が残っていれば、新たなキャッシングやクレジットカード、ローンの利用は難しいです。
多額の借金は、ギリギリ利息分だけを返済し続けてもなくなりません。
ブラックリスト状態になると、確かに一定期間は生活に不便が生じるでしょう。
しかし、毎月の返済額を捻出できず返済不能に陥ってしまうと、一括請求や差し押さえの恐れが出てきます。
借金のプレッシャーからストレス過多になり、体や心を壊してしまう可能性もあります。
ブラックリスト状態を恐れず、債務整理を念頭に専門家への相談を検討してみましょう。