債務整理の手段として、任意整理があることをご存じでしょうか。
任意整理というのは、借金の負担を減らすことができる手続きのことで、債務整理の時には、まず最初に検討したい方法です。
この記事では、任意整理の流れから、費用や期間、更には注意点について解説します。
任意整理について、事前に詳しく知っておくことで、もしもの時にも慌てることはありません。
債務整理とは、借金の負担を軽減するための手続きのことです。
債務整理の方法には、いくつか存在し、任意整理もその内の1つです。
ここでは、任意整理の特徴について解説します。
任意整理とは、月々の支払いが難しくなってきた時に、貸金業者と交渉して、月々の支払いを楽にする方法です。
利息を減らしたり、支払い期間を延ばすことは実現しやすいのですが、元本まで減らすというのは難しいことが多いので注意が必要です。
任意整理を行うことのメリットとしては、次のような点があります。
まず、自己破産などとは異なり、裁判所を介さずに行えます。
手続きのために裁判所へ出向くことがない分、迅速に手続きを進めることができるのです。
そして、なかには複数の貸金業者に借金をしている人もいるでしょう。
自己破産の場合は全ての借金を整理しますが、任意整理の場合は、全ての借金ではなく、任意で整理する貸金業者を選ぶこともできるのです。
債務整理に困った時には、すぐに自己破産を考えるのではなく、任意整理という方法もあるのだということを知っておくことも大切です。
任意整理では、裁判所に支払う費用は発生しません。
ですが、弁護士や司法書士に支払う費用が必要になるので、依頼する時には用意しておけるようにしましょう。
専門家に依頼したときに発生する費用の内訳は、着手金と成功報酬、更には過払い金返還報酬であることが一般的に知られています。
着手金は貸金業者1社につき5万円程度、成功報酬は減額した債務金額の10%程度、過払い金の返還を受けたときは、その20%程度であることが多いです。
報酬については、事務所によって異なるものの、連合会で定められた上限規制を超えることはありません。
依頼をする前に、事前に確かめておくと安心して依頼することができます。
任意整理の手続きは、弁護士や司法書士に依頼してから、債権者と合意するまでに3か月~6か月程度必要です。
ですが、債権者がこちらが提示した任意整理案に応じてくれるかどうかで、その期間は変動します。
なかには、債権者が任意整理になかなか応じてくれないという場合は、更に期間が延びるという可能性もありますし、すんなり応じてくれた場合は、もっと早く解決することもあります。
そして、弁護士や司法書士に任意整理の手続きを依頼した場合は、債権者に対して受任通知が送られます。
受任通知の法的効果によって、借金の取立ては一旦ストップします。
任意整理がすべて終わったわけではありませんが、取立てがストップしたことにより、債務者は取立てのストレスから解放されるでしょう。
任意整理中の期間は、債務者が行うことはありませんが、弁護士や司法書士から連絡がくる可能性もあります。
仕事以外はできるだけ家にいるようにしましょう。
任意整理をする時には、どのような流れで進むのでしょうか。
ここでは、任意整理の流れについて詳しく解説します。
流れを知っておくことで、手続きをする時にもスムーズに行いやすくなります。
任意整理は、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。
弁護士や司法書士の事務所で、対面の話し合いを行いますが、この時に、債権者に関する情報や借入時期、そして現在の債務残高について説明することが必要です。
請求書などを持参すると、わかりやすくなるでしょう。
また、家計の収入や支出などについても詳しく説明します。
依頼することになった時には、正式に委任契約を結ぶことになります。
そして、委任契約書ができた時には、内容を必ず確認するようにしましょう。
委任契約を結んだ後、任意整理を交渉したい各債権者に対して、受任通知を送ります。
受任通知には、債務者が弁護士に任意整理を依頼したことが記載されています。
受任通知を送ることで、債務者に代わって専門家が債権者とやり取りをすることになります。
そして、法律によって受任通知を受け取った債権者は、直接債務者に対して支払いの請求書や督促状を送ることはできません。
受任通知を送るタイミングで、取引履歴の開示を請求し、詳しい調査に入るのです。
開示請求から取引履歴が送られてくるまでの期間は、1か月程度となっています。
取引履歴が送られてきたら、正しい利率で債務残額を計算します。
ですが、計算の結果、サラ金などでは、利息制限法で定められた金利を超えていることがあり、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金というのは、貸金業者に払いすぎた利息のことで、債務者は債権者に対して返金を要求することができます。
超過分を残りの借金に充てて、改めて計算するので、借金を早く完済することも可能になるのです。
正しい利息に基づいた債務残高を計算したら、今後の方針を決めます。
一括返済が難しい場合には、分割返済を選択する方法もあります。
ここで、3~5年の分割払いで完済できるのであれば、任意整理の手続きをそのまま進めることになります。
ですが、月々の収入が少なく、生活そのものが苦しいという時には、3~5年での返済が難しい場合もあります。
その時には、他の債務整理手段を採ることが必要です。
任意整理の方針が決まったら、「返済期間」や「月々の返済額」などの案を作成して、債権者に提示します。
ですが、この時に注意することもあります。
それは、早く手続きを終えたいために、無理な返済期間や月々の返済額を提案するというものです。
確かに、返済期間が短かったり、月々の返済額が多ければ、債権者の印象が良くなり、任意整理もスムーズに行くかもしれません。
ですが、無理をすることによって、再び返済が滞ってしまっては意味がありません。
返済期間や返済額は無理のない範囲を提示するようにしましょう。
債権者との和解案が決まったら、合意書を作成します。
合意書には、和解をした日と当事者の署名と捺印。
そして、和解した内容が記載されています。
任意整理の合意が成立したあとは、新しく決まった条件で返済を再開することになります。
ですが、この時には注意することも必要です。
返済期間中に再び支払いが滞ってしまうことも考えられます。
合意後の返済が滞ってしまったという場合には、もう一度支払い方法を変更してもらうことは、かなり難しいことになります。
任意整理をした後は、返済が滞らないように、きちんと自己管理をすることが大切です。
任意整理を行う時には、いくつか気をつけることが必要です。
事前に知っておくことで、トラブル防止になる可能性もあるので、チェックしておきましょう。
弁護士や司法書士に任意整理の依頼をすると、費用が発生します。
節約のために自分で任意整理の手続きをしようと考えている人もいるかもしれません。
確かに、任意整理を自分で行うことは可能です。
ですが、その場合は自分で開示請求を行ったり、債権者と和解に向けての交渉もしなくてはなりません。
また、債務者が自分1人でやろうとすると「債権者が任意整理の交渉をまともに取り合ってくれない」ということがあります。
債権者にとっては、法律の専門家でもない債務者が行うことは不安に感じるのです。
そして、自分で任意整理を行った場合には、受任通知を債権者に送ることはできません。
受任通知というのは、弁護士や司法書士が送るものです。
そのため、「受任通知がないから、交渉中に取立てを止めることができない」といったリスクもあるのです。
また、任意整理を行うには法律や制度についての専門的な知識も必要になります。
途中でトラブルになった時には、専門的な知識がないため、解決することは困難になります。
確かに、経済的に苦しいなかで弁護士や司法書士に依頼することは難しいかもしれません。
ですが、トラブルなどに発展した場合は、更に立場が悪くなるかもしれません。
素直に、弁護士や司法書士といった専門家に依頼した方が良いこともあります。
任意整理をしたからといって、すべて解決するというわけではありません。
任意整理で可能なのは、借金の負担を緩和することで、借金そのものがなくなるというわけではないのです。
債務残高に自分の支払い能力が追い付かず3~5年で完済できない場合は、任意整理による解決は難しいと判断されてしまいます。
たとえば、収入自体が少なく、生活費だけでギリギリという場合です。
支払うだけの収入がないとなると、任意整理は難しくなります。
また、借入額があまりにも大きかった場合にも、断られる可能性が高いです。
その理由は、任意整理は利子を減らすことはできても、元本は変わりません。
元々の額が大きい以上、余程の収入がない限り、返済が困難だと判断されてしまいます。
ですが、たとえ支払う能力がきちんとあっても、断られてしまうケースもあります。
それは、弁護士や司法書士に依頼をした後、弁護士に任せっきりという場合です。
電話をしても出なかったり、事務所にも来なかったりする場合は、意思疏通が困難だと判断され、断られてしまうケースもあるのです。
任意整理ができない場合は、自己破産など、他の債務整理の方法を検討する必要があります。
任意整理を考えた時には、他の方法についても調べておくことが大切です。
この記事では、任意整理の流れや注意点について解説してきました。
任意整理は、裁判所を介さない手続きのため、借金に追われる苦痛を早期に解決してくれる可能性があります。
もし、債務整理に困った時に任意整理を検討したいときには、自分で解決するのではなく、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。