借金苦が続き返済が難しくなったなら、債務整理を検討しましょう。
債務整理とは、借金の利息をカットしてもらったり、返済の義務そのものを免除されたりするための手続きです。
そして、債務整理は4種類あり、自分に合った手続きを選ぶことが重要です。
この記事では、4つの債務整理の特徴やメリット、デメリット、それぞれの手続きに向いている人などを解説します。
長期にわたって借金の返済が続くと、生活に影響が出ます。
また、返済能力が低くなったり、完全に失われたりすると借金の完済は不可能です。
そんなとき、法的に借金を整理して完済を可能にするための方法が「債務整理」です。
債務整理には4種類あり、返済状況に応じて選択することが大切です。
債務整理の中で、多くの人に選ばれているのが「任意整理」です。
任意整理では、債務者と債権者が交渉して契約を見直します。
現状のままでは完済が難しいと債権者が判断した場合、交渉に応じて今後の利息をカットしてくれます。
その結果、債務者の支払い額が減り、完済に近づけます。
また、任意整理では支払い額が減ったうえで完済までの期間も猶予してくれるのが特徴です。
つまり、月々の支払い額が大幅に減り生活への影響を小さくできます。
任意整理では利息をカットしてもらうことは可能でも、元本までは減らしてくれません。
債権者からすれば可能な限り損失は出したくないので、少なくとも元本は回収しようと考えるからです。
それでも、債務者からすでに返済能力が失われている場合、利息カットだけでは完済ができません。
そこで、任意整理でも状況が好転しなかったときには「個人再生」を行います。
個人再生とは、裁判所に仲介してもらって借金を減らすための方法です。
個人再生に成功すれば、借金は5分の1~10分の1にまで減らすことも可能です。
そして、債務者は3~5年を目安にして借金を返済していきます。
もちろん、減額された借金を返し終われば完済が認められます。
任意整理と個人再生の中間ともいえる債務整理が「特定調停」です。
特定調停では、簡易裁判所が間に入ったうえで債権者と債務者が交渉を行います。
この一連の流れを「調停手続き」と呼びます。
特定調停では、簡易裁判所の「調停委員」が調停を担当するのが特徴です。
両者の交渉はすべて記録に残され、調停が成立した後で「調停調書」にまとめられます。
調停調書には法的な効力があり、債務者も債権者も違反できません。
調停調書にしたがって債務者は返済を続け、完済を目指します。
債務整理の中で、もっとも大幅な減額を目指せるのが「自己破産」です。
あまりにも借金がふくらみすぎて完済が不可能となった場合、債務者は裁判所に自己破産の申し立てを行えます。
裁判所から返済能力が皆無だと認められたら、本格的に自己破産の手続きが開始されます。
自己破産が完了すれば、現状の返済義務がすべて免除されます。
しかも、借金の額は関係ないので、返済苦に陥った生活から抜け出すことも可能です。
そのため、倒産した企業の経営者や生活保護受給者、病人などに選ばれている債務整理です。
ただし、自己破産は今後の社会生活に大きく影響を残す方法でもあります。
自己破産は「最後の手段」なので、申し立てをするときには慎重に検討することが大切です。
借金を減額できる債務整理は、債務者の人生を変える可能性もある手続きです。
一方で、債務整理はいい面ばかりだけといえません。
債務整理を行うことで、社会生活に支障をきたす危険もあります。
メリットとデメリットを比較検討したうえで、債務整理の申し立てをするようにしましょう。
以下、任意整理・個人再生・特定調停・自己破産のメリットとデメリットを紹介します。
債務者が法律事務所を通して任意整理を行った場合、申し立てを行った時点で督促が停止します。
そして、交渉が終わるまで督促を気にする必要がなくなります。
また、その後の利息がカットされるので完済が楽になるのは大きなメリットでしょう。
そのほか、任意整理を行っても就職できない仕事が出てきたり、財産を差し押さえられたりする心配がありません。
一方、任意整理のデメリットは「支払いがなくなるわけではない」点です。
利息がカットされたとはいえ、元本の返済は続いていくので気を抜けません。
また、任意整理を行うと信用情報機関の履歴に傷がつき「ブラックリスト」に載った状態となります。
しばらくは新たにローンを組んだり、クレジットカードを作ったりできないので注意しましょう。
大幅に借金を減らせるのは個人再生のメリットです。
原則として総額の5分の1以上にまで減らせるので、多額の借金でも完済の目処が立ちます。
また、これまで返済に充ててきたお金を生活にまわすことも可能です。
さらに、個人再生を行っても差し押さえが行われることはありません。
土地や自動車などの財産を維持できるのはうれしいポイントです。
個人再生のデメリットは、「ブラックリスト」でしょう。
個人再生を行うとブラックリスト入りを避けられません。
信用情報機関から履歴が消えるまでの5~10年にわたって、消費活動に大きな制限を受けます。
さらに、官報にも住所氏名が掲載されます。
官報に名前があっても基本的に生活への影響はありません。
ただ、職場や近所に知られない保証もないので、まったく問題はないともいい切れないのです。
そして、ある程度の収入源がないと裁判所に「完済できない」と判断され、個人再生は認可されません。
申し立てる際には、自身の経済力を見直しましょう。
とにかく「返済が楽になる」のは特定調停のメリットです。
任意整理と同じく利息がカットされるので、完済までの期間が短くなります。
また、仕事を制限されたり、財産を差し押さえられたりすることもありません。
しかも、特定調停は費用も安いのが魅力です。
特定調停は法律事務所に依頼できないほど経済的に困っている人でも申し立て可能な手続きです。
調停委員に主張を調整してもらいながら、個人で債務者との交渉を行えます。
それらに対して、債務者本人の労力が大きいのは特定調停のデメリットでしょう。
特定調停では、申し立てから出廷まで代理人に任せられません。
すべて、債務者本人が引き受けます。
さらに、特定調停を申し立ててもすぐには借金の取立てが止まりません。
取り立て停止には数日を要すると覚悟しましょう。
借金を帳消しにしたいなら、自己破産が適しています。
あまりにも額が大きすぎるうえ、本人に支払い能力がないなら自己破産を検討しましょう。
申し立てが認められれば、額の上限なく返済する必要がなくなるのはメリットです。
また、自己破産でも財産を残すことは可能です。
裁判所が定めた基準の範ちゅうであれば、財産や家財道具は差し押さえられません。
ただし、基準を超える財産については差し押さえの対象になってしまいます。
また、自己破産を行った人は職業制限を受けます。
弁護士や不動産鑑定士などの仕事に就くことができません。
さらに、官報に住所氏名が載ったり、5~10年にわたってブラックリストから名前が消えなかったりと、自己破産はメリットだけでなくデメリットも多い選択肢です。
債務整理を行うときは、自身の返済状況や総支払い額をしっかり把握しましょう。
そして、4種類の債務整理の特徴と照らし合わせていきます。
もしも個人再生で済むケースなら、自己破産を行うのは賢明な判断といえません。
自分に向いている債務整理を選べば、社会生活への影響も最小限に抑えられて平穏な人生に戻りやすくなります。
借入額がそれほど多くなく、安定した収入源もある人は任意生整理に向いています。
任意整理は社会的な影響が少ない方法なので、短期間で簡単に借金問題から逃れたいケースでは効果的です。
また、自動車ローンや保証人のついているローンを除いて整理したい場合にも、任意整理を選ぶようにしましょう。
なお、返済期間が長引いている人も任意整理向きです。
任意整理は申し立ててからすぐ督促が止まるので、返済のストレスがスムーズに解消されます。
総額5000万円以下の高額な借入がある人は、任意整理では完済に近づけません。
そこで、個人再生によって元本を減額してもらうのが得策です。
さらに、自己破産を選ぶと自宅が差し押さえられる可能性が高まります。
住宅ローンが残っていて、債務整理によって自宅を差し押さえられたくないなら個人再生を選びましょう。
また、個人再生では元本が大幅に減るので、手続き後は十分に完済を目指せます。
安定した収入源があるなら、個人再生が向いています。
通常、債務整理では司法書士や弁護士に依頼をして手続きを代行してもらうのが無難です。
しかし、経済的に苦しい場合は相談料や着手金すら負担になってしまいます。
債務整理のコストを抑えるためには特定調停を選びましょう。
特定調停なら専門家に依頼しなくても自力で一連の手続きを行えます。
ただし、特定調停は申し立てから出廷にいたるまでを本人が担わなければいけません。
時間や労力を割けるのであれば、特定調停は苦にならないでしょう。
借金の総額がふくらみ、返済のために売却できる資産もない人は自己破産を選ぶのが賢明です。
さらに、生活保護受給を希望している場合も、自己破産を検討してみましょう。
生活保護は自己破産した後でも申し込みできるので、大きな問題がありません。
さらに、経済的に困窮している人も自己破産向きです。
返済能力がないなら、ほかの債務整理を選んでも完済は難しいといえます。
ブラックリストに載るなどのデメリットを考慮しても、自己破産するメリットが上回るでしょう。
4つの債務整理のうち、どれを選ぶかで今後の生活は左右されます。
特に、「とにかく借金をなくしたい」「財産を守りたい」などの希望があるときは、真剣に債務整理の手段を考えましょう。
自分に合った債務整理を選ぶことで、今後の生活は楽になります。
もしも自分で判断できないときは、専門家に相談することも大切です。