任意整理は費用が高い!
それは単に、料金を比較せずビジネス優先の事務所を選んだからです。
任意整理にはどんな費用の項目があって、相場はどれくらいなのか把握していないと、料金はうやむやのまま事務所ペースで契約してしまうことも。
「とにかくはやく督促を止めたい!」という気持ちも分かりますが、冷静になってお得な事務所をみつけるプロセスも必要不可欠。
今回は、そんな落とし穴の多い任意整理費用について詳しく解説します。
どんな事務所が安くて、どんな事務所に頼むと後悔するのか、見極めのポイントをしっかりお伝えしますので、最後までご一読ください。
任意整理費用を個別にみると、「着手金」「報酬金」「減額報酬」に分かれます。
弁護士・司法書士に法律問題を相談する場合、相談料がかかるものですが、債務整理に関してはどの事務所も相談無料としています。
着手金とは、その名のとおり案件に着手した時点で発生する料金です。
成功の有無に関係なく請求されるため、報酬とは異なります。
ただし、法テラスは報酬名目で請求する費用を着手金と称して設定しているようです。
着手金は基本、着手する段階で支払うものですが、事務所のなかには後払いで請求するところもあります。
後払いだから親切な気もしますが、実は着手金は無料とするところが多いのです。
実際には、弁護士・司法書士事務所で着手金を請求するところはあまりありません。
ほかの事案はともかく、任意整理やその他の債務整理に関しては着手金無料で依頼を引き受けているのが主流です。
ただし、着手金無料だからといって、全体の費用が安いとは限りません。
ほかの事務所がとらないものをとると言い出したら、依頼者は逃げてしまいます。
その計算があるからこその「着手金ゼロ」と思ってよいでしょう。
無料サービスにとらわれてその他の金額チェックが甘くならないように注意してください。
報酬金とは、業務や成果の対価として支払う費用です。
事務所によって名称はバラバラで、「定額報酬」「成功報酬」「解決報酬」などと呼ばれます。
着手金を請求しない事務所は多くても、報酬金はどの事務所に依頼しても必ず請求されるもの。
報酬金は、弁護士会・司法書士会の料金ガイドラインで上限が設定されており、2万~5万円までの請求が認められます。
上限の5万円が相場とみてよいでしょう。
なお、任意整理に成功してはじめて支払う必要が生じるのが報酬金です。
任意整理ができなかった、あるいは依頼したけど途中でキャンセルした場合などは、報酬金を支払う必要はありません。
報酬金の上限金額、支払い方法、キャンセル料の有無については、面談時にしっかり確認しましょう。
減額報酬とは、業者との交渉により当初の返済金額より減額に成功した場合、請求される費用です。
通常、引き直し計算で減少した金額から数%差し引いた分を請求されます。
減額報酬の相場は5%~10%です。
料金ガイドラインでは10%まで請求できることになっています。
減額報酬も、請求する事務所・しない事務所に分かれます。
減額報酬が必要ない事務所に頼めば、費用も安くなるでしょう。
ただその分を別の料金で埋められてしまっては意味がありません。
費用はトータルでみるようにしてください。
過払い金で債務を圧縮するパターンの任意整理もあります。
過払い金が発生するパターンだと、請求金額が途方もない額に膨れあがる可能性もあるため、注意が必要です。
過払い金があれば、取り戻した金額から20~25%を成功報酬として差し引かれます。
約定返済額が150万円、このうち過払い金が100万円発生して50万円まで圧縮できたとしましょう。
減額報酬、報酬金を請求されるばかりか、100万円から最大25%の金額を差し引かれます。
過払い金の成功報酬だけで25万円をとられるのです。
そのうえ基本報酬なども引かれます。
それでも50万円以上手元に戻り、かつ借金の返済にも充てられるため、その成果に満足してしまいがちですが、良心的な事務所に頼めば多額の費用を引かれずに済みます。
減額報酬の有無は、過払い金が発生するときほど影響が大きくなるため、そのあたりもしっかりチェックしてください。
任意整理をお願いするくらいですから、費用の一括支払いはほとんど無理。
そのような事情があるため、分割で支払うのが一般的です。
任意整理の受任通知後は業者からの督促もストップするため、その間に事務所へ支払う費用を積み立てていくことになります。
業者への返済が再開する前に、事務所費用として納める積立金。
これには履行テストという意味も兼ねます。
毎月約束した金額を支払える態度と能力がある、と分かれば、任意整理後の返済もスムーズに進むことが予想されます。
1回あたりの金額は、任意整理後に依頼者が全貸金業者に対して支払う合計金額と同程度に設定。
整理対象が3社あるとして、それぞれ2万円・1万円・2万円の返済を計画する場合、合計5万円を3ヶ月~半年の間に納めていくことになります。
積立金を期限までにきちんと納めることが確認できれば、再返済への弾みにもなり、業者との交渉材料にもなるのです。
なお、すべての事務所が履行テスト型の支払いを採用するとは限りません。
なかには任意に月々の料金を設定する弁護士・司法書士もいて、その場合は最長半年以内に積立を終えられる範囲で金額が設定されます。
3ヶ月~半年間、継続して費用を払い続ければ、事務所も業者も「支払い能力がある」と判断できます。
そのため積立が終われば、交渉のペースは一気に進み、利息なしの再契約に業者も合意する確率が高くなるのです。
反対に、積立も満足にできなければ、「支払い能力なし」と判定され、弁護士・司法書士も交渉を思い切って進めることができなくなります。
その時点で自己破産の切り替えを勧められることも。
また半年を越えてしまうと、しびれを切らした業者が返済の再開を強く要求してきます。
分割払いの期限は、半年。
その間は勝負と思って、コツコツ支払いに励んでください。
それは事務所のためになるばかりか、自分自身が自信を持つうえで大きな力にもなるのです。
法テラスは、法的トラブルを抱えた市民の相談窓口となるべく設立された国の法律機関です。
公的機関のため、民間事務所のようにビジネス重視に走る恐れもなく、費用も良心的です。
「事務所費用が高すぎて任意整理なんてとてもできない」という方は、法テラスの民事法律扶助制度を利用できないか相談してみましょう。
任意整理における法テラス費用は次のとおりです。
取引社数 | 実費 | 着手金 | 合計 |
---|---|---|---|
1社 | 10,000円 | 32,400円 | 42,400円 |
2社 | 15,000円 | 48,600円 | 63,600円 |
3社 | 20,000円 | 64,800円 | 84,800円 |
4社 | 20,000円 | 86,400円 | 106,400円 |
5社 | 25,000円 | 108,000円 | 133,000円 |
6~10社 | 25,000円 | 151,200円 | 176,200円 |
11~20社 | 30,000円 | 172,800円 | 202,800円 |
21社以上 | 35,000円 | 194,400円 | 229,400円 |
相談はもちろん無料です。
ただし過払い金がある場合は、上記に加えて報酬金が発生します。
成功報酬は裁判なしで回収額の15%、裁判ありで同じく20%です。
法テラス費用の特徴は、取引業者の数が多いほど、1社あたりの金額が安くなるところ。
さらに、弁護士・司法書士に支払う費用は法テラスが立て替えてくれます。
依頼者は完済後、法テラスに月々5,000~10,000円を償還。
返済と同時並行で支払っても問題ありません。
月額負担も軽いため、生活にも余裕が生まれやすくなります。
立替制度を利用するには、法テラスの審査基準を満たす必要があります。
主に「収入基準」と「資産基準」をみて利用の適否を判断。
「救済」という観点から、利用対象を収入が少ない方に絞っています。
立替が認められるのは、依頼者および配偶者の手取り収入が次の基準に合う場合です。
人数 | 手取り月収額の基準 | 家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額 |
---|---|---|
1人 | 18万2,000円以下 (20万200円以下) | 4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 | 25万1,000円以下 (27万6,100円以下) | 5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 | 27万2,000円以下 (29万9,200円以下) | 6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人以上 | 29万9,000円以下 (32万8,900円以下) | 7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
()内は、東京・大阪の生活保護一級地の基準です。
収入基準は地域によって異なるケースもあり、地元の法テラスに直接確認することが大切です。
資産をどれくらい有しているかも審査のポイントです。
具体的には、不動産、有価証券、その他現金や預貯金の額などを照らし合わせて判断されます。
人数 | 資産合計の基準 |
---|---|
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人以上 | 300万円以下 |
医療費、教育費など将来負担すべき出費がある場合は、相当額が控除されます。
法テラスに直接相談してもよいですが、法テラスと契約する弁護士・司法書士事務所でも同じ扶助制度を利用できます。
法テラスが遠方にあって通いにくいようであれば、お近くの法テラス契約事務所に相談するほうが便利かもしれません。
民間事務所が法テラスと同程度の費用でサービスを提供してくれればよいのですが、そのような事務所はまだ少数派といえるでしょう。
テレビCMなどでよく目にする事務所はとくに、費用が高額です。
駅近くにあって通いやすいかもしれませんが、法テラス通いのための交通費よりはるかに高い料金を請求されます。
法テラスを利用しなくても、ビジネス重視で高額設定の事務所だけは選ばないようにしてください。
当然ながら、安い事務所を選べば任意整理費用の負担は軽くなります。
事務所を比較する際、どこを重点的にみるべきか?
ポイントをご説明します。
最初にお伝えしましたが、「着手金無料」だからといってその事務所が安いとはいえません。
「報酬金はどこよりも安い!」とうたっていても、着手金が高い可能性がありますし、相談料をとっていることも考えられます。
減額報酬が無料でも、「上限いっぱいの報酬金+着手金」で帳尻を合わせているかもしれません。
「一番安い」「ゼロ円」などのあおり文句に引きずられることなく、トータルで見比べましょう。
ホームページの確認も大切ですが、電話でも詳細をたずねるようにしてください。
ホームページ情報はおおまかな目安のみで、すべてを明らかにしているとは限らないのです。
トータルでどれくらい必要か電話質問して言質をとれば、あとから変な料金を上乗せされてもしっかり抗議できます。
電話質問にも明確に答えられない事務所はその時点で「誠意なし」と判断されるため、ほかの事務所に依頼するのが無難です。
減額報酬を請求する事務所だと、費用の負担が大きくのしかかります。
減額報酬あり・なしでは、なしのほうが安く心理的にも安心です。
もちろん、減額報酬がゼロでも着手金・報酬金が高いと相場を上回る恐れもあるため、トータルバランスのチェックを忘れずに。
ほかの余計な費用といえば、オプション費用。
「返済代行手数料」「通信費用」「出張料」など、もろもろを設定して少しでも多く請求しようとする事務所にも要注意です。
返済代行手数料とは、依頼者から業者の間に事務所をかませ、その名目で請求する手数料。
返済代行手数料をとる事務所だと、なぜか直接返済ができず、事務所を通さなければ支払いがきないうえ、1社あたり1,000円の手数料をとられたりします。
かりに5年間60回払いだと6万円もかかってしまうのです。
意味不明な料金を請求する事務所には近づかないようにしましょう。
もっとも分かりやすい方法は、法テラス費用と比較すること。
法テラス費用と同額の事務所は、一番リーズナブルといっても言い過ぎではありません。
法テラスと比較して、その差があまりにも違う場合は選択肢から除外しましょう。
「うちは法テラスと同額の料金設定で依頼を引き受けています」
このようにうたう事務所はスタンスがはっきりしています。
任意整理費用で痛い目に遭う心配もないでしょう。
任意整理費用は、トータルで比較する。これが鉄則です。
「債務整理のお願いだから、先生たちも安く見積もってくれるだろう」と思ったら大間違い。
相場より高いのは当たり前、それどころか無用な料金まで設定して少しでも多くとろうとします。
任意整理や自己破産ですら、大手事務所からすればビジネスのひとつに過ぎません。
「着手金・減額報酬・その他オプション費用を請求する事務所は避ける」
「料金は必ず総額が分かるように提示してもらい、いくつかの事務所を比較」
「法テラス費用を基準に事務所を選ぶ」
これらの点を重視すれば、法外な費用で泣くことなく任意整理できるでしょう。