任意整理を選ぶと、しばらくの間、金融機関から借り入れができません。
融資を受けられないとしても、それがどれくらいの範囲でいつまで続くのか、詳細までご存じないという方もいるでしょう。
その情報があれば、すべてを受け入れたうえで任意整理に踏み切れます。
「こんなデメリットがあったなんて・・・」と後悔することもないわけです。
すべてを知って依頼するのと、知らないで依頼するのとでは、任意整理に臨む心構えや意気込み、今後の人生をどう生きるかに大きな差が生まれます。
マインドをどう持つかも任意整理では重要です。
これから詳しくお伝えするデメリット情報を参考にして、生活再建へ向け動き出してください。
任意整理で避けられないデメリットといえば、ブラックリストです。
これは任意整理に限らず、すべての債務整理に対していえます。
任意整理のデメリットは、このブラックリスト入りをきっかけに、さまざまな金融サービスに制限がかかる、ということに尽きるでしょう。
なお、ブラックリストとは俗称であり、正式には「信用情報機関」といいます。
金融機関との取引記録は、すべてこの機関で一元管理されるのです。
信用情報機関とは、消費者金融・クレジットカード会社・銀行・信用組合などが加盟する、契約者情報を管理するための団体です。
金融機関が契約者と取引するなかでえた情報は、すべて加盟先の信用情報機関に登録されます。
登録対象は、住所・氏名などの個人情報から、契約内容、取引社名、返済状況、遅延・延滞に関する情報まで、多岐にわたります。
信用情報機関と呼ばれる組織は、次の3つです。
◆JICC:主に消費者金融が加盟
◆CIC:主にクレジットカード業者が加盟
◆KSC:主に銀行が加盟
JICCに加盟するクレジット業者、銀行もあれば、CICに加盟する消費者金融、銀行もあります。
情報管理の目的は、契約者の「信用力」を判定するため。
返済能力もない人にお金を貸してしまえば、貸し倒れになるかもしれず、金融機関にとっては大きな損害です。
任意整理をしてお金に対する信用力が落ちた人は、クレジット・ローンの審査対象から外されるという仕組みです。
信用情報機関に任意整理の情報が登録されると、その間はクレジットカードやカードローンを利用できなくなります。
任意整理の場合、登録期間は原則5年間です。
気になるのは、いつから登録されていつに解除となるのか? ということ。
これは、任意整理の受任通知を受けた業者がいつ登録手続きを開始するかで決まります。
原則、受任通知した段階で任意整理の履歴が残ります。
登録手続きをはじめるタイミングが業者ごとにまちまちのため、厳密にいつから、とはいえません。
場合によっては、完済してからクレジット・ローン利用の制限がかかることもあります。
もっとも長い登録期間を想定すると、起点から終点までは次のとおりになります。
◆登録開始:弁護士・司法書士が業者に受任通知を送ったとき
◆登録解除:完済から5年後
なお、信用情報機関の登録内容は情報開示請求で閲覧できます。
気になる場合は開示請求による確認をおすすめします。
任意整理をすると、クレジットカード・カードローンの利用ができなくなります。
任意整理しないカードがあったとしても、新規の借り入れは断られると思ってください。
なお、クレジットカードの引き落としサービスは、大抵の場合、デビットカードで代用できます。
任意整理後は、クレジットカードやローンカードを作成しようと思ってもできません。
任意整理であなたの信用力はないとみなされ、すべてのカード審査で落とされてしまうでしょう。
新規の融資・増額が拒否されるのは、弁護士・司法書士が受任通知を送った後です。
厳密にいえば、業者が登録手続きに入った段階でブラックリスト入り決定です。
そのタイミングの見極めが難しい以上、受任通知が業者に届き、督促がストップした段階で「もう借り入れはできない」と覚悟を決めたほうがよいでしょう。
そもそも、業者の協力で利息をカットしてもらうわけですから、新たに借金する余裕などないはずです。
任意整理を選ぶ段階で、クレジットカード・カードローンとは縁を切るくらい思わないと、生活再建などかなわないでしょう。
前向きに考えれば、これ以上借金が増えなくて済む、と捉えることもできるわけです。
任意整理対象の業者カードは解約扱いです。
たとえばエポス相手に任意整理を行えば、エポスカードの利用は停止され、クレジット支払いなどのサービスも利用できなくなります。
任意整理に含めない別のカードは、解約にまではなりませんが、影響は避けられないでしょう。
任意整理をした契約者を、金融機関は「要注意人物」とみなします。
信用力がないという評価はどこの業者でも変わらないため、新規の借り入れは難しいと思ってください。
「業者によっては貸してくれるところもある」という見方もできますが、期待は禁物です。
変に期待を持ち続けると、ヤミ金の甘い手口にのってしまうリスクも。
「最初からない」と割り切って、目の前の返済に集中してください。
同じグループの銀行・消費者金融のカードへの影響も考える必要があります。
たとえばアコムと三菱UFJ銀行は資本提携を結んでいます。
三菱UFJ銀行のカードローンを滞納し、保証会社が立て替えた場合、債権は保証会社へ移行。
銀行カードローンの保証会社は、多くの場合、提携先の消費者金融が担います。
三菱の場合でいうなら保証会社はアコムです。
この構造を考えると、アコムカードへの影響は否定できません。
クレジットカード解約によるさまざまな影響を心配される方も多いのですが、大半はデビットカードで対応できます。
たとえばネット通販での買い物、航空チケットの予約、公共料金の支払い、海外旅行先でのショッピングなど、もろもろクレジット払いで済ませていた人は、そのままデビットカードに移行すればよいのです。
デビットカードを持っていない方は銀行に作成を頼みましょう。
任意整理を理由に銀行がデビットカード作成を拒否することはないため、安心してください。
ただ、デビットカードはクレジットカードほどポイント還元が期待できません。
ショッピングでポイントの恩恵を受けていた方は、その点には我慢が必要です。
任意整理をすれば、ローンサービスの審査も通らないと思ってください。
「住宅ローンなんてどうせ必要ないし」と思っても、3年後や5年後の人生がどうなっているかは分かりません。
とくに家族がいる場合、お子さんの教育費の問題もあり、そこで任意整理経験が大きな障害となることもあり得ます。
ローン(分割払いサービス)と呼ばれるものはすべて、利用を断られます。
<主なローンサービス>
・住宅ローン
・教育ローン
・自動車ローン
・事業ローン
・おまとめローン
・カードローン
・目的ローン
・新規スマホの分割払い など
また、ローンではないもののマンションの入居審査にも影響をおよぼす可能性があります。
信用情報機関に加盟する保証会社が入居審査を実施すれば、その情報にアクセスして判断の目安にします。
保証会社付きのマンションであれば、入居を拒否されるかもしれません。
「ショッピングをしたい」「車を買いたい」「あたらしい事業をはじめたい」など、いろいろ計画があるかもしれませんが、任意整理をすると決めた以上は、まず何より生活再建が優先されます。
利息を省く元金をすべて完済した後で、お金の使い道を考えましょう。
現実的に厳しいかもしれませんが、可能であれば元金返済中にお金を貯めておきましょう。
わずかでも貯金があれば、入り用の際は自分の口座を資金に使えばよいのです。
利息カットで負担が減った恩恵を、その後の人生にうまく還元しましょう。
「任意整理せずには生活再建できない」という方のみ、その方法で完済を目指すべきです。
うまくやれば返済できるにもかかわらず、楽をしたいばかりに任意整理を頼みに来る方もいます。
「ローンを組む予定は当分ないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、将来はどうなるか分かりません。
今ローンの必要性がなくても、後々必要となることだってあり得るのです。
とくに注意したいのが、成長過程のお子さんがいるケース。
大学進学を機に教育ローンを申し込もうとしても、契約者である親に任意整理の履歴があれば審査に通りません。
大学の入学金や授業料を払えないとなれば、進学さえも難しくなるかもしれないのです。
つまり、任意整理は軽い気持ちで選んではいけない、ということです。
ローンを利用できないデメリットはそれが必要となってはじめて痛感するもの。
影響の大きさを直近だけで考えないことが大切です。
現代社会に欠かせないツールのスマホ。
1台数万円もする機種の新規契約は、分割払いで結ぶのが一般的です。
スマホの分割払い審査も信用情報機関を参照して行われるため、任意整理による影響は避けられません。
無理をして買い換える必要がなければ、既存の機種を大事に使ってください。
新規契約、買い換え、機種変更などでスマホ1台を購入する際、分割払いで納めることになるでしょう。
この方法も完済を「先延ばし」にするわけですから、キャリアは最後まできちんと支払えるかの資力をみなければなりません。
そのために信用情報機関への照会が行われ、契約者の信用力がチェックされます。
任意整理した人は、「スマホ代金を分割で支払う能力はない」とみなされる可能性が大。
もちろん一括払いだと購入できますが、問題はその資力があるかどうか。
まだ完済を終えていない段階であれば難しいかもしれません。
かといってお金を借りることもできず、購入をあきらめなければならない事態も考えられます。
故障で今すぐにでも買い換えが必要になったときは困ってしまうでしょう。
そのようなデメリットもある点を覚えておいてください。
過去に携帯代金を払えなかったり、支払いが遅れたりしたことがあれば、その情報も分割払いの審査で考慮されます。
スマホ・携帯代金の未納情報は、TCA(一般社団法人電気通信事業者協会)が一元管理しており、キャリアは誰がいつ滞納したかの情報をすぐに取り出せるのです。
その場合は、任意整理する・しないに関係なく、スマホの分割払いを利用できないかもしれません。
「ドコモで滞納しても、auに切り替えだったら問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、滞納情報は他社でも照会できます。
キャリアを変更したとしても、その影響は免れないと思ったほうが賢明です。
スマホじゃなくても、格安スマホやガラケーなど比較的安価な携帯電話でも間に合うのなら、そちらの購入を検討してみてください。
ブラックリスト登録の影響から発生するデメリットをご紹介しましたが、裏を返せばこれらをメリットと捉えることもできます。
クレジットカードもカードローンも各種ローンも、すべて借金です。
スマホ分割払いも、返済を遅らせるという意味では借金も同然です。
これらのサービスに強制的な制限が加わることで、借金と無縁の生活を送れるようになります。
債務整理者にとっては、簡単に借りられる仕組みこそ、生活再建を妨げる大きなデメリットになるのではないでしょうか。
そもそも、任意整理で利息を全額カットできても元本は残り、3年~5年の返済生活が続くわけです。
毎月の月収の一部は返済に回さなければならず、買いたいもの・欲しいものがあっても我慢が必要かもしれません。
おそらく貯金なども難しくなるでしょう。
そのような状況を考えると、借金をする余裕などないことが分かるはずです。
「完済し、ブラックリスト登録が解除するまでは借金しない」と決意するところから、任意整理の手続きはスタートします。
その決意を胸に、手助けしてくれる事務所を訪れましょう。
任意整理を依頼する事務所も、ビジネス志向で報酬を多めにとるところは信用できません。
また債務整理の実績がない事務所も要注意です。
良心的な料金設定で代理を引き受け、なおかつメリット・デメリットをきちんと説明してくれる事務所に任意整理を依頼してください。