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自己破産のメリットとは?財産はすべて処分しなくていいの?

自己破産とは、任意整理や個人再生などと同じ債務整理のひとつです。
自分の収入や財産で債務を支払うことが出来なくなった場合に、自己の財産を手放し、清算して生活を立て直すことをいいます。

自己破産を行うには、時間がかかる、集める書類が多い、財産処分がある、職業制限がある、免責不許可事由があるなどデメリットも多くあります。
しかし同時にメリットとなる点も同様にたくさん存在しているのです。

その自己破産のメリットについて、細かく確認してみましょう。


返済が免責される

自己破産のメリットは、なんといっても支払い義務が免除される「免責」という状態になり、一部の非免責債権を除いては返済する必要がなくなるという点です。
免責許可決定がされるまでにはそれなりの時間がかかってしまいますが、免責が許可されれば借金の支払いからは解放され、以降は借金返済の心配をすることなく生活再建を行うことが可能です。

ただ、誤解されがちなのですが、実は免責されて借金の支払い義務がなくなっても、借金そのものは残っています。
これに対して取り立てを行うということは出来なくなりますが、債務者が任意で借金の返済を行うことは自由に出来るのです。
そのため、免責許可決定がされた後、生活再建に成功してから個人間で借りた借金だけは返済しよう、ということも可能となります。

免責後の返済に関しては債務者の判断によるものになりますが、自己破産をして返済が出来なくなることが申し訳ないと考える人も少なくないと思います。
そういった場合に、自分の意志で返済する余地が残っているという点もメリットのひとつかもしれません。

ただし非免責債権もあるので注意

基本的に貸金業者から借り入れたものに関しては免責許可が出るため支払い義務がなくなります。
しかし一部の債権に関しては免責されず、自己破産をしても支払いの義務が継続されてしまいます。
非免責債権とは下記の通りです。

1)税金や公共料金の一部

公共料金の一部としては水道代がありますが、上水道は大部分が免責されて一部非免責、下水道は全てが非免責です。
逆に、同じ公共料金でも電気代やガス代は免責されるため支払い義務はなくなります。
税金や公共料金の支払い義務を免れるには、時効か相続放棄くらいしかありません。

2)悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償権

積極的な加害の意志により発生した損害賠償のことで、具体的には詐欺、医療事故、窃盗、横領等などがあります。
ただし、過失の場合にはこれに該当しません。

3)破産者が故意または重過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

上記と似たような慰謝料になりますが、具体的には殺人、傷害、酒気帯び運転、煽り運転、危険運転等が該当します。
ただし、軽度の過失に関してはほとんどの場合免責されます。

4)夫婦間で発生した扶助料

5)離婚後の子の監護に要した費用

6)直系血族、兄弟姉妹、三親等内の親族間で発生した扶養料

上記3つは内容的にはほぼ同じで、家族間で発生する生活費や医療費、養育費など扶養に関する費用のことをさします。
特に夫婦は「結婚している間は助け合うこと」と法律に定められていることもあり(民法752条)、収入に応じて分担することは義務とされています(民法760条)。
これを免れることはありません。

7)雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権

これは個人事業主の場合に発生しますが、個人事業主に雇われている家内労働者への支払いのことを指します。
かかる従業員への未払い給与がある場合は、必ず支払わなければなりません。

8)罰金

各種罰金についても、免責されることはないため必ず支払わなければなりません。

9)債権者名簿に記載しなかった債権者

自己破産の際に記載する債権者名簿には全ての債権者をリスト化する必要があります。
財産処分がある場合には、処分して出来た金額を債権者全員に分配されることになっているからです。
これは意図的に隠すことは認められていませんが、意図的にせよ単純なミスにせよ、万一債権者名簿に載っていない債権者が後から現れた場合には、その債権者に対しての支払い義務は免除されることなく、引き続き返済しなければなりません。

債権者からの連絡がこなくなる

これは任意整理や個人再生でも同じですが、債務整理を行うと債権者からの督促が停止されます。
専門家に相談し、債務整理を行うと決まった段階で専門家は各債権者に受任通知を出すことになります。
一般的な貸金業者はこの時点で督促が一時停止することになります。
そのまま手続を進め、晴れて免責となればその後一切の督促は来なくなります。

財産の差押えも禁止される

借金の支払いが滞っている場合には、債権者によって財産の差押えや給与の差し押さえなどが行われることがあります。
債権者は不利益を被らないよう、差し押さえという形で少しでも元金を回収しようとするのです。

しかし、破産手続開始決定があった場合、財産の差押えが出来なくなります。
そのため、即座に財産を持って行かれてしまうということはなくなるのです。
これは大きなメリットということができます。

借金の支払いが滞ると、債権者は一定の手続をとることで強制執行することが出来ます。
そのうちのひとつとして給与等の差し押さえがあり、給与のうちの四分の一を天引きのような形で回収することが出来るのです。

この強制執行が既に行われていて、給与が差し押さえられている段階で自己破産の受任通知を専門家が出すと、督促が止まるだけでなく、この給与の差し押さえ等の強制執行も中止されます。
その後の手続が進み、管財事件として扱われることが確定した場合には差し押さえられていた給与の受け取りも即座に行うことが出来ます。
しかし、自己破産が同時廃止として手続が進む場合には差し押さえられた給与をすぐに受け取ることは出来ず、免責許可決定が確定したときに初めて受け取れるようになります。

同時廃止というのは破産手続において債権者に配分するのに必要な額のお金や財産がないと判断された場合に適用されます。
手続を進め、破産手続開始決定が出ると同時に手続廃止決定を行い、その時点で破産手続は終了となるのです。
自己破産を考える場合、現金も換金出来る財産も所持していないことがほとんどのため、全国平均で65%程度は同時廃止事件となっております。
そしてその場合には差し押さえられた給与を即座に受け取れなくなるということなので、この点のみ注意が必要になります。
もっとも、その給与も無事に免責許可決定が確定すれば受け取れるようになるため、一時的な措置と考えて問題ありません。

手元に残しておける財産がある

これは自己破産の手続を進める上で管財事件として扱われることが確定した場合の話です。
管財事件というのは、たとえば個人事業者である、不動産を所有している、個人債権者がいる、免責不許可事由がある、金額が大きすぎる、一定額以上の現金を持っているなど、条件が整っていたり、破産手続を進めるために必要な額のお金や財産があったりする場合に破産管財人が資産を細かに確認し、換金出来るものは換金して債権者に平等に分配することです。
自己破産されてしまうと債権者は借金の元本も取り戻せないということになってしまいがちですが、管財事件になった場合には若干でもお金を取り戻すことが出来る可能性があります。

そうなってしまうと債務者は基本的に財産を失うことになってしまうのですが、実は全ての財産が回収されてしまうというわけではありません。
ある一定の範囲にはなりますが、財産を手元に残しておくことも可能です。

手元に残しておける財産は、下記の通りです。

差押禁止財産

たとえ自己破産をして財産を手放さなければならなくなったとはいえ、生命を脅かされるレベルまで全て奪われてしまうということはありません。
そうならないように、生活をする上で必然的に必要となる財産に関しては回収されないことになっています。
その対象となるのは下記の通りです。

・テレビ、冷蔵庫、洗濯機、寝具、教育関係のもの、食料、1ヶ月分の燃料などの生活必需品
・給料や退職金、年金の4分の3(差押え・回収が出来るのは各金額の4分の1までと決められているため)
・職人が作業に使う道具や農業・漁業などで使用する道具、家畜の餌などの職業上不可欠となるもの
・仏壇

99万円以下の現金

これは預貯金を含まない現金のみとなりますが、手元にある99万円以下の現金であれば差し押さえされずに残すことが出来る場合があります。

自由財産の拡張

合計額で99万円以下であれば、車や預貯金などの手元にある現金以外の財産も手元に残しておける場合があります。
ただし要件はやや厳しく、自由財産の拡張の請求を破産管財人に請求して、1つ1つの財産の価値が一定の金額万円以下であること(裁判所によって異なります)、その財産を所持していなければ破産者の生活が非常に厳しいものとなってしまうものであることなど、裁判官が妥当であると認めた場合に手元に残しておくことが出来るというものです。
どの財産が認められ、どの財産は認められないかという点に関してはケースバイケースのため必ず残せると言うことは出来ません。
裁判所によっては、1つ1つの財産の価値には制限がなく、総合計で99万円以下でも認めてもらえるということもあるようです。
ですので、これに関しては居住地域の裁判所の特徴と破産者のその時点での状況に応じて判断されるという但し書きが必要になってしまいます。

それでも、例えば車がなければどうしても生活が出来なくなってしまうという悩みが解決出来る場合もありますし、様々な事情があり預貯金をある程度手元に残しておかなければ死活問題に発展してしまうといった訴えを聞いてもらえるかもしれないという点においては利点と言えるかもしれません。

聞き入れてもらえるかどうかは上申してみないとわかりませんが、可能性があるならば上申だけでもしてみる価値があるかもしれません。

その他のメリット

自己破産をする上でのメリットは他にもあります。
それらは自己破産を考える上で不安に思っている部分をカバーしてくれる可能性のある内容とも言えるかもしれません。
その内容は下記の通りとなります。

自己破産完了から信用情報の回復まで10年で済む

自己破産・個人再生・任意整理といった債務整理を行うと、信用情報にその事実が記載されることになっています。
いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるのがこれですが、信用情報機関のブラックリストに載っている状態では貸金業者からの借入の審査やクレジットカードを所持するための審査に通らなくなってしまいます。

日本にある信用情報機関は3つあり、「日本信用情報機構(JICC)」「シー・アイ・シー(CIC)」「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」がそれです。
それぞれの信用情報機関によって加盟している企業が異なっていますし、信用情報登録のタイミングも掲載期間も異なっています。

自己破産の場合は、JICCは登録から5年間、CICは契約終了から5年間(明確な掲載開始時期ははっきりしませんが遅くても免責許可決定確定の段階では掲載されています)、KSCは破産手続開始決定から10年間というのが登録期間のため、最長で10年ということになります。

他の債務整理の方が短い信用情報機関の方が多いのですが、任意整理の場合CICでは「完済してから5年間」という規定があります。
多くの場合は3~5年で完済するという約束で任意整理をする場合が多いですが、約束の仕方によっては6年以上での返済が認められることもあります。
もしもそうなった場合、CICでの事故情報抹消までの期間が10年を超えることになり、自己破産の方が短い期間で済むということになります。

家族には迷惑がかからない

自己破産をする際、その対象となるのは破産者本人のみです。
そのため、家族が破産者の保証人となっていない限り、家族には影響が及ばず、迷惑をかけるということはありません。
例えばクレジットカードで家族カードの主契約者であったために家族のカードも解約されてしまった、家族の保証人になることが出来ない、教育ローンが組めないなどの問題は生じますが、家族の生活そのものを直接的に脅かすようなことはありません。

生活保護受給者は費用負担なく手続が可能

生活保護を受けていたり、受ける手続をしたりしている状態で自己破産を行う場合は法テラスで依頼をすれば弁護士費用を免除してもらえます。
一般的には財産がない人が多いと思いますので同時廃止になるケースが多いのですが、場合によっては管財事件となってしまうこともあります。
その場合は予納金を納める必要がありますが、その予納金に関しても20万円までは立て替えて支払ってもらえ、返済も免除されます。
20万円を超える場合にはその分は自己負担となりますが、多くの場合は20万円を超える予納金を必要とすることはそれほどないでしょう。

おわりに

自己破産には、デメリットの方が多いのは致し方ないことかもしれませんが、メリットももちろん存在しています。
傾いてしまった生活を立て直すならば行動は早い方がいいのは間違いありません。
メリットとデメリットをじっくりと考えて、早めに専門家への相談を行うことがおすすめです。

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