自己破産は債務整理のひとつであり、返済能力を失った方にとって最後に残された方法。
借金苦でまともな生活も送れない方は、自己破産ができないか弁護士に相談しましょう。
その際、大切なのが事務所の選び方。
自己破産には多額の費用がかかり、報酬体系は事務所ごとに異なります。
また、自己破産には同時廃止と管財事件のふたつがあり、費用の差は小さくありません。
このように、自己破産手続きに入るうえで必要な情報・知識はたくさんあります。
こちらでは、自己破産の特徴と注意点、手続きの流れ、破産できないケース、費用に関する情報をご紹介します。
破産や債務整理を検討中の方は、ぜひご一読ください。
自己破産とは、本人の収入や債務状況などをみて返済不能と判断される場合、最終的な手段として選択される法的手続きです。
「仕事をしていない」「自転車操業」など、客観的にみて債務を返済できない方が対象。
免除対象には、消費者金融やカードローンから借りたものはもちろん、友人知人や会社など、個人間の借金も含まれます。
破産申立する相手は裁判所で、最終的な免責判断を下すのも裁判官です。
自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」の2種類があり、本人の財産状況などをみていずれかに決定されます。
本人に財産がまったくない場合に選ばれる自己破産です。
破産管財人の選定も必要なく、財産調査もありません。
そのため、管財事件より手続き期間が短いのが特徴。
裁判所に予納金を納める必要もないため、コスト面でもメリットがあります。
管財事件とは、債務者に財産がある、もしくは免責不許可自由が認められる場合に選ばれる自己破産です。
債務者に財産があれば、それを換価して債権者へ配当しなければなりません。
また、遊興やギャンブルなど免責不許可自由が認められる場合は、それでも自己破産が妥当かどうかを調査して決める必要があります。
財産状況を調べるのは、裁判所が認定した破産管財人(弁護士)です。
個人の破産申立は、管財事件のうち少額管財に相当し、予納金として20万円を裁判所に納めます。
相談から免責決定までの流れは以下のとおりです。
1.相談
2.必要書類集め
3.裁判所申立・即日面接
4.免責審尋(※同時廃止のみ)
5.管財人面接(※管財事件のみ)
6.債権者集会(※管財事件のみ)
7.免責決定
まずは、自己破産できないかどうかを弁護士事務所で相談。
内容を把握し、自己破産が妥当と思われた場合、弁護士は業者に対し受任通知を発送します。
その段階で、各業者からの取り立てをストップできます。
手続き上、以下の書類が必要です。
・収入が分かる書類(給与明細など)
・源泉徴収票
・課税証明書
・住民票・戸籍謄本
・預金通帳コピー
・資産関係書類(車検証、保険証券など)
生命保険に入っていれば、保険解約後の解約返戻金は債権者に分配されます。
これらの書類は本人が集め、添付書類として弁護士に提出します。
裁判所に申立をした当日に、裁判官と面接します。
本人申立の場合は本人が裁判官と面接しますが、弁護士依頼であれば依頼者出席の必要はありません。
この面談は、同時廃止か管財事件かを決めるプロセスでもあります。
処分すべき財産がなければ同時廃止、債権者に分配すべき財産がある、もしくは免責不許可自由が認められる場合は管財事件(少額管財)の決定が下されます。
管財人報酬20万円の支払い能力の有無もまた、同時廃止か管財事件かを分けるポイントです。
同時廃止では、裁判官による「免責審尋」が行われるのが一般的です。
裁判官は債務者に対していくつか質問し、「この人は免責でもよいか」の判断材料にします。
この免責審尋は弁護士同伴のもと実施されます。
管財事件では、弁護士同伴のもと管財人面接を行う必要があります。
管財人は債務者の資産を調べたあと、これ以上財産は本当にないのか、尋問を通してチェック。
問題がなければ30分程度で終了します。
債務者は弁護士同伴のもと、裁判官、管財人、債権者が顔をそろえる債権者集会に出席しなければなりません。
これは免責が本当に妥当かどうかを話し合う場で、債権者に異議を申し出る者がいなければ、数分で終わります。
一般的に債権者が業者であればスムーズに運ぶでしょう。
個人の債権者のなかには異議を申し立てる者もあり、その際は閉会が遅れることもあります。
「裁判所が免責決定」→「自己破産の確定」という流れです。
手続き開始から免責までの期間は、同時廃止なら2か月程度、管財事件なら3か月~半年程度です。
自己破産が認められると、すべての債務が免除されます。
これ自体は大きなメリットですが、一方で生活のさまざまなシーンで影響が及びます。
自己破産情報は、全国の消費者金融や信用組合、銀行などが加盟する信用情報機関に登録されます。
クレジットやカードローンの審査では、同機関から提供される情報を参照するため、自己破産してしまうと新規の借り入れはほとんど不可能です。
信用情報にブラック登録される期間は、およそ5年。
ただし、銀行関係の金融機関が加盟する情報機関に登録となれば、10年間ローン契約ができなくなります。
銀行から融資を受けていた人は、より長い期間借り入れができなくなるのです。
また、携帯電話の料金を滞納した状態で自己破産すると、未納分も免除の対象となるため、携帯電話の新規契約もできなくなります。
家族や同居人と家計が一緒であれば、自己破産の事実を隠すのは難しくなるでしょう。
自己破産を選ぶと、収入や資産をすべて調べられます。
同居家族がいて、なおかつ家計が一緒、さらに共有資産もあるとなれば、おのずと調査の手が入り、家族にきちんと説明する必要が生まれるわけです。
なお、同居していなくても実家から仕送りがあれば同一の家計とみなされます。
基本的に自分でやり繰りしていれば、自己破産の事実を打ち明けない限り家族にばれる心配はありません。
ただし、実家住まいで、自宅の所有が親名義の場合は、不動産関係の書類を提出する際親の協力が必要となり、隠し通すのは困難です。
自己破産を申し立てた場合、資格制限の関係で一部の職業に従事できなくなります。
とはいえ、制限期間は自己破産の手続き開始決定から免責が下るまでの間で、それ以降は制限もなく自由に働けます。
法律で制限がかかる主な資格は次のとおりです。
・仕業関係:弁護士、司法書士、税理士、行政書士、宅建士など
・公務員:人事院の人事官、国家公安委員会委員、公正取引委員会委員など
・金融関係:証券外務員、保険外交員、銀行員、信託会社員など
・その他:警備員、建築士、測量業者、マンション管理業など
自己破産を選ぶと、持ち家や自動車、高価な時計、ブランド品といった財産は処分しなければなりません。
これらの財物を隠せば資産隠しとみなされ、免責が下りなくなるばかりか、破産詐欺の疑いが強まります。
管財人には、すべての資産を申告してください。
なお、自己破産でも処分しなくて済む財産もあります。
・日用品
・99万円以下の現金
・20万円以下の預貯金
自己破産には適用条件があります。
以下は、自己破産に値しないと思われるケースです。
仕事もして安定した収入があり、客観的にみて月々の支払いに困りそうもない状況でしたら、自己破産を選ぶ必要はないでしょう。
「安定した収入はあっても、毎月パチンコに5万円使いたいから自己破産したい」などの理由はもちろんとおりません。
収入がどれくらいあるか、それをもとに月々どのくらいの返済が可能かは、弁護士事務所でも調べます。
月収に対して住居費がどの程度を占めるかは、返済能力を見極めるポイントのひとつです。
たとえば家賃10万円のマンション住まいで、借金総額が300万円あったとしましょう。
毎月の月収が50万円あるとして、家賃を引いた額は40万円。
300万円の借金は、毎月8万5,000円を払っていけば3年で完済できます。
5年スパンでみると、毎月5万円の返済です。
債務者の収入を考えれば、十分返済可能と判断できるでしょう。
裁判所は本人の資力や債務状況、態度などをみて免責が妥当かどうかの判断を下します。
しかし、次のような免責不許可事由に相当する場合、申立却下の可能性があります。
・浪費・ギャンブルなどで借金している場合
・財産隠し・無断贈与した場合
・破産申立する1年間に、借金した場合
・ローン・クレジットで購入した商品を安価で売却し現金を入手した場合
・破産申立した日から数えて7年以内に免責を受けている場合
・裁判所や破産管財人による調査に非協力的だった場合
これらの事情があっても、裁判所がさまざまな事情を勘案したうえで例外として免責を認める場合もあります(裁量免責)。
裁量免責があるとはいえ、裁判所や管財人、弁護士への迷惑を考えると、申立期間中はつつましく暮らすのが適切です。
「自己破産=終了」と思われがちですが、それは極端なイメージです。
そのほかにも、「選挙権がなくなる」「住民票に記載される」など間違った情報が飛び交っています。
これらの情報に惑わされず、正しい知識で手続きを進めてください。
身内に破産者がでても、家族の財産に影響はありません。
連帯保証人や共有財産の場合は影響あるものの、財産をすべて別にしていれば身内の破産を理由に処分されることはありません。
ただし、自己破産した人の持ち家に住んでいる人は、退去を迫られるでしょう。
破産の結果、会社への借金が免除となれば、それ理由に解雇される可能性は否定できません。
会社への借金が一切ない人は、破産の事実が社内に漏れることもないため、解雇の心配はないでしょう。
なお、職業制限の対象である仕事に従事している場合は、破産手続きの期間中のみ影響を受けます。
自己破産を理由に、マンションの大家さんが退去を強制することはありませんし、そもそもそんな要求はできません。
ただし、家賃滞納している場合は別です。
契約に「家賃の支払いが滞れば退去してもらう」などと書かれている場合、退去を要求する正当事由となります。
「では家賃だけ支払って、貸金業者からの借金のみ免除してもらう」という考えも通用しません。
自己破産を申し立てた以上、すべての債務データを裁判所にあげて免責判断を求めることになります。
マンションの家賃だけこっそり支払って申立すれば、管財人の調査結果で資産隠しを指摘される可能性もあるため、注意してください。
自己破産にかかる費用は、同時廃止か管財事件かで異なります。
また、依頼事務所の料金体系にも注意する必要があります。
自己破産手続きに必要な費用は、大きく分けて裁判実費と事務所報酬です。
裁判実費とは、裁判所に支払う手数料のことで、印紙代と切手代が合わせて1万5,000円程度かかります。
管財事件であれば、破産申立の前に予納金を裁判所に納めなければなりません。
少額管財の場合は20万円ですが、それ以外の管財事件だと50万円程度が相場となります。
少額管財は東京地裁など一部の裁判所しか採用しておらず、裁判所ごとに運用方法が違うのです。
管轄の裁判所はどこで予納金はどれくらい必要か、裁判所㏋もしくは弁護士事務所で確認しましょう。
代理事務所へ支払う事務所報酬は、同時廃止で20万円、少額管財で50万円程度が相場です。
料金体系は事務所により異なるため、しっかりチェックしましょう。
免責で借金から解放されても、弁護士に支払う報酬額は重い負担となるでしょう。
とはいえ、自分で手続きをするのは荷が重く、高い報酬を支払っても専門家の助力を借りるのが妥当です。
30万~50万円もする負担額を少しでも軽くするには、費用を安く見積もってくれる事務所への依頼が望まれます。
そこで費用の比較ポイントですが、法テラスの料金を基準にして選ぶとよいでしょう。
法テラスでは、破産者の立ち直りを第一に考えているため、高額料金にならないような金額に設定されています。
法テラスと同じ料金基準の弁護士事務所だと、負担を最小限に抑えられるでしょう。
また、書類作成のみ司法書士に任せて即日面接や書類提出などは自分で行う、という方法でもコストを抑えられます。
自己破産に関する書類作成の代行料は上限が決まっているため、10万円程度で済みます。
弁護士に丸投げするより断然お得です。
もし可能であれば、この方法での手続きを検討してみてください。
以下、今回の記事の内容を簡潔にまとめます。
・自己破産は同時廃止と管財事件のふたつに分かれる
・同時廃止は財産がない人、管財事件は処分すべき財産を持っている人が主な対象
・同時廃止の手続き期間はおよそ2か月、管財事件は3~6か月
・自己破産すると最長10年はカード利用不可となる
・職業制限は、破産開始決定から免責許可決定までの期間
・家計を一緒にしていなければ、自己破産が家族にバレる可能性は低い
・日用品、99万円以下の現金、20万円以下の貯金は保有できる
・支払い能力がある、免責不許可事由に相当する場合は破産できないことも
・事務所への報酬は、法テラスと同等だと安心
自己破産は法的に認められた手段であり、債務者の立ち直りを促すための手続きです。
それ以外に方法がない場合は仕方ありませんが、むやみに利用するものではないことも、念頭に置いてください。
返済シミュレーションを立てて、完済が無理だと判断できる場合は、自己破産を検討しましょう。
自分での判断が難しい場合は、弁護士事務所に相談してください。
ぜひ信頼できる法律事務所をみつけて、生活再建を果たしましょう。