2010年頃まで、貸金業者は出資法の上限金利である29.2%を上限金利として貸付を行っていました。
利息制限法では、利息の上限は20%と定められています。
利息制限法を超える金利で利息を受け取っていたため、出資法と利息制限法の上限金利の差が、過バライ金として発生しています。
そこで今回は、過バライ金の計算に必要な取引履歴や計算方法などについて解説します。
過バライ金が発生する条件には、借り入れをしたのがいつなのかが大きく関わります。
2010年以前から消費者金融やカード会社から借金をしていた人は、過バライ金が発生している可能性があります。
特に、2007年以前は利息制限法を超えた金利を設定していた貸金業者が多かったため、過バライ金が発生している可能性が高いでしょう。
借入額が多く、長期間に渡って返済していた場合は、過バライ金の金額も高額になっている可能性があります。
なお、2007年より前から、利息制限法で定められた範囲内で利息を設定している金融業者から借り入れをしている場合は、利息制限法の上限との超えた分の差額が発生しないため、過バライ金も生じません。
自分が利用している金融業者の、借り入れ当時の金利がいくらなのか、確認する必要があるでしょう。
過バライ金の計算をするためには、取引履歴を取り寄せる必要があります。
取引履歴とはどのようなものなのか、どのような方法で入手するのかなどを解説します。
取引履歴とは、貸金業者から借入れた金額や契約年月日、返済日、金利などの一覧表のことです。
賃金業者は、法律に基づき、顧客との貸付契約の内容を業務帳簿として作成・保存する義務があります。
なお、借主などには業務帳簿の開示請求権が認められており、取引履歴とは、この業務帳簿を基に開示する、取引の経過や債務内容の記録です。
過バライ金が発生していることを確認するには、取引履歴で金利を確認する必要があります。
取引履歴は、賃金業者によって形態が異なり、業務帳簿に基づき作成された書類や、毎月の利用明細、業務帳簿そのものなどの場合があります。
取引履歴を確認し、金利20%以上で利息を払っていた場合は、利息制限法の金利との差額が生じるため、過バライ金が発生していることになります。
取引履歴の入手方法で簡単なものは、貸金業者へ直接電話し、郵送や、窓口の直接受け取りなどで入手する方法です。
問い合わせ先は、契約した支店やホームページに記載されている連絡先、カードに記載されている連絡先などです。
なお、貸金業者によっては、所定の開示請求書を提出することを求められる場合があります。
様式を手に入れ必要事項を記入し、所定の手続きで入手しましょう。
また、本人ではなく相続人として取引履歴を依頼する場合は、借り入れした本人との関係性や、相続人であることを証明するために、除籍謄本や戸籍謄本など、ほかの書類が必要になることもあります。
電話連絡時、必要なものは何か、必ず確認しましょう。
取引履歴を依頼した際、利用目的などを求められることもあるため、注意が必要です。
また、取引履歴を入手するまでどれくらいの期間がかかるかは業者によって異なります。
予想以上に長い期間を要して焦ることがないよう、余裕をもって取引履歴の開示依頼をした方が安心です。
なお、個人からの依頼は優先順位を後ろにされることもあるので、特に急ぎの場合などは、専門家を介して依頼すると良いでしょう。
取引履歴を取り寄せる際は、気を付けなければ入手に手間や時間がかかってしまうこともあります。
例えば、取引履歴を請求するときに、利用目的を聞かれることがありますが、その際に「過バライ金請求のため」と答えてはいけません。
利用明細や同封の書類には、過払い状態であることが記載されることがあります。
過バライ金を請求した際に「過バライ金であることを知りながら支払ったものなので、返還の義務はない」と主張される可能性があるためです。
利用目的を尋ねられたら、「すべての取引履歴を確認したい」と答えれば事足ります。
また、過バライ金返還の交渉に入る前に、ゼロ和解の申し入れをされるケースもあります。
ゼロ和解をもちかけられた場合、まず間違いなく過バライ金が発生しています。
ゼロ和解に応じてしまうと、その後過払い請求を行う場合に手間や時間がかかります。
過払い請求は正当な権利なので、意に沿わない和解に応じる必要はありません。
過バライ金の金額を確認するためには、利息の差額を計算する必要があります。
しかし手計算で行うと手間や時間が多くかかります。
また、計算を間違えると、返ってくる過バライ金が少なくなってしまう可能性もあります。
そこで、正しくスピーディーに金額を出すため、計算ソフトを使用すると便利です。
ここでは、計算ソフトの入手方法や使い方を述べます。
計算する前に、まずは計算ソフトを入手しましょう。
過バライ金の計算ソフトは、インターネットで無料で入手することが可能です。
例えば、名古屋消費者信用問題研究会の計算ソフトは、名古屋消費者信用問題研究会の公式サイトから無料でダウンロードできます。
使用方法も詳しく説明されており、非常に便利です。
また、アドリテム司法書士法人の計算ソフトは、新潟県長岡市の司法書士事務所の公式サイトで無料で公開されています。
Q&Aが掲載されているため、確認しながら使用すると良いでしょう。
どちらのソフトもデータ入力など、簡単な操作を行うだけで過バライ金が自動計算されます。
計算ソフトを入手したら、早速計算してみましょう。
計算ソフトのほかに、取引履歴と、エクセルがインストールされたパソコンを用意します。
まずパソコンに計算ソフトをダウンロードして、起動させます。
ソフトの画面に従って、借入年月日、借入金額、弁済額を入力します。
取引を入力し終えた時点で、元利金がマイナスになっていれば過バライ金が発生していることがわかります。
なお、過バライ金の金額を誤って請求すると、賃金業者が請求に応じず、断られてしまう可能性もあります。
データは間違いなくしっかり入力し、正しい金額を導き出しましょう。
最後に、過バライ金の計算や請求で注意すべきケースを挙げます。
過バライ金は手続きが煩雑化するなど、自分だけでは請求が難しい状態になることもあります。
過バライ金の金額が変わったり、裁判など手順が増える場合もあるため、注意が必要です。
気を付けるべきポイントを押さえて、しっかり請求しましょう。
借入と返済を繰り返している場合、それぞれの借入を一連の取引とするか、分断された別々の取引とするか、判断が難しい場合があります。
一連か分断かによって、時効や過バライ金の金額が変わってくるため、重要な問題ですが、借主の主張と賃金業者の主張が食い違うことも多々あり、争点となる場合が多い部分です。
一連と分断、どちらが適切なのかはケースバイケースになります。
判断するのが非常に難しいため、自分で計算するよりも、専門家へ相談した方が良いでしょう。
貸金業者によって、過去の取引履歴をすでに廃棄したと主張されることがあり、情報の開示が不完全になるケースもあります。
開示が不完全な場合、必要な情報が揃わないので、自分で過バライ金を計算することはできません。
取引履歴がない場合は、推測して引き直し計算する必要があります。
過去に送られてきた明細が残っていれば、計算をする際の重要な根拠となります。
また、毎月引き落としで返済していた場合は、銀行の通帳や記録など、金額がわかる書類があれば、これも計算の材料になります。
なお、この場合は裁判が必要になります。
裁判で勝つためには、できる限り説得力の高い書類を集め、それを基に推察しながら、裁判官に納得してもらえるような計算をしなければなりません。
専門家とともに対策を練りながら、裁判でしっかり認められるような計算や書類作りを行いましょう。
借入中に返済金の支払いに遅れ、遅延損害金が発生した場合、過バライ金の計算が複雑になります。
また、返済を遅延していたことに負い目を感じ、過バライ金の請求を行い辛いと思う方もいるでしょう。
しかし、遅延をしていたことと、過払いしていたことはまた別の話です。
過バライ金が発生しているなら、請求は可能です。
なお、遅延損害金が発生していたとして、貸金業者が過バライ金の返還に応じないこともあります。
そのような場合でも、過バライ金の請求をするのは借主の権利なので、妥協する必要はありません。
遅延損害金の分も過バライ金の計算に含めることで、むしろ多くのお金が返ってくる可能性もあります。
話がこじれそうだと感じたら、過バライ金の計算とともに賃金業者への請求も専門家に任せ、相手方と交渉してもらうのも良いでしょう。
過バライ金は、最後の取引があった日から10年で時効が成立します。
ただし、完済から10年以上経過していても、その後再び同じ貸金業者から借入をしていた場合は、時効が成立していない可能性もあります。
また、1度目の完済と次の借り入れまでの期間が短ければ、1度目も2度目も一連の借り入れとみなされ、1度目に関して時効成立が微妙な期間であっても、2度目の分と一緒に過バライ金請求ができる場合もあります。
どのようにみなすべきかの判断は、前後の借り入れの契約内容など、さまざまな要因をふまえて考えるため非常に難しく、一概にどうとは言えません。
また、時効が迫っているときは、早めに手続きを進める必要があります。
判断が付きかねる場合や、スピーディーに手続きを行いたい場合は、知識や経験が豊富な専門家に任せることをおすすめします。
過バライ金の計算は、取引履歴や過バライ金計算ソフトがあれば自分で計算することもできます。
しかし、複雑な計算や慎重な判断が必要なケースなど、個人で請求を行うのは難しい場合もあります。
そんなときには、専門家に任せるのが確実です。
正しい金額を計算し、できる限りスムーズに手続きを進めて、時効を迎える前に過バライ金の請求を完了させましょう。