過払い金の請求ができることは、広く知られるようになってきました。
これから過払い金請求を検討しているなら、戻ってくる金額の目安を知りたいですよね。
金額の目安を知るためには、過払い金の計算方法を理解しておく必要があります。
ここでは、過払い金の計算方法についてまず説明し、そのうえで過払い金の計算方法や、過払い金につけることができる利息の仕組みについて紹介します。
過払い金の計算を始めるには、事前に準備しておかなければならないものがあります。
ここでは、具体的に何をどうやって準備すればよいのか紹介します。
まず、準備すべきなのが取引履歴です。
取引履歴には、借り入れした年月日、金額、金利や返済額などが記載されていますから、過払い金の計算をするのに必要不可欠な書類です。
取引履歴の取り寄せ方としては、次のような方法があります。
まず、貸金業者に電話をして取り寄せる方法があります。
問い合わせ先は、カードの裏面やホームページなどに記載されていることが多いので、確認しましょう。
取引履歴を取り寄せるための手続きは、業者によって違います。
電話やFAXで取り寄せることができるところもありますが、開示請求書への記入が求められるケースもあります。
事前に確認しておきましょう。
万が一、本人がすでに亡くなっていて、相続人が取引履歴を取り寄せたい場合は、本人が亡くなったことがわかる除籍謄本と、自分が相続人であることがわかる戸籍謄本が必要になります。
取引履歴を取り寄せるために手数料がかかる業者があったり、履歴保存期間が短い業者があったりするので、こうした点もチェックしなければなりません。
次に、過払い金の計算に必要なツールを用意します。
まず、エクセルが使えるパソコンや、過払い金計算表などを準備しましょう。
過払い金の計算には、便利な「計算ソフト」を利用することが可能です。
計算ソフトを使うと、取引履歴の日付、金額などの数値を入力するだけで、誰でも簡単に過払い金を算出できます。
すでに借金を完済していても、まだ返済中でも計算可能です。
有料、無料を問わずたくさんの種類があるので、好きな方法で手に入れるとよいでしょう。
過払い金請求に関連した書籍に同梱されていることもありますし、インターネットからダウンロードできるものもあります。
大まかな過払い金額を知りたいという場合は、過払い金チェッカーや過払い金計算機なども利用可能です。
ごく簡単な情報入力のみで概算が出るので、過払い金があるのかどうか、大体どのくらいなのか、ざっくり知りたいときに使うとよいでしょう。
このようなツールを利用して簡単な過払い額の算出を行ってから、引き戻し計算をする方法もあります。
過払い金の計算をするためには、一般的に「引き直し計算」という計算方法が使用されています。
過払い金請求に欠かすことができない引き直し計算の仕組みについて紹介します。
引き直し計算とは「適法な金利だったら、借金の額はどうなるか」を計算し直す方法です。
適法な金利とは「利息制限法」に基づいた金利のことです。
利息制限法通りの適法な金利が適用された場合には、実際の借入額はいくらになるのかを計算し直すのが引き直し計算になります。
利息制限法によれば、元金が10万円未満の場合は、年利20%までというのがルールです。
元金が10万円以上100万円未満の場合は年利18%まで、元金が100万円以上の場合は年利15%までと定められています。
この範囲内が適法な金利であり、これを超える金利は違法ということになります。
過払い金額は、実際に返済した利息総額と、法定金利内で返済した場合の利息の差額分から求めることができます。
その方法と引き直し計算の具体的な例について見てみましょう。
たとえば、元金100万円を29%の金利で借り入れたとしましょう。
年利29%なので、100万円に29万円が追加され、借金の総額は129万円となります。
もっとも、利息制限法により、100万円以上は年利15%が上限です。
年利15%で計算すると、元金100万円に15万円が追加される(100万円×年利15%)ので、借金総額は115万円になります。
しかし、実際には年利29%で借入れしており、借金総額は129万円となっているわけですから、129万円-115万円=14万円、つまり14万円が過払い金額となる計算です。
過払い金を請求するには、5%の利息をつけて請求することが可能です。
利息の計算方法には、利息充当計算と棚上げ計算の2つの計算方法があるので、それぞれについて紹介します。
過払い金に対しては、5%の利息が発生します。
利息充当計算とは、過払い金の返還請求を5%の利息をつけて行う際に使用する計算方法です。
利息充当計算では、5%の利息を過払い金の元本に充当するよりも先に、借入金のほうに充当する計算方法のことです。
この方法では、過払い金の元本が多く残るので、5%の利息もその分だけ多く残ることになります。
したがって、棚上げ方式で計算をするよりも、最終的に取り戻せる金額が、わずかながら大きくなります。
過払い金は、完済日から経過した日数に応じてさらに5%の利息がつきます。
したがって、完済後に時間が経過すればするほど棚上げ方式との金額の差が大きくなるという仕組みです。
最高裁の平成25年4月の判決においても、特段の事情がないかぎり、原則的に利息充当計算が認められています。
過払い金の返還請求において、5%の利息をつけて計算する方法として棚上げ計算という方法もあります。
棚上げ計算は、利息充当計算とは異なり、5%の利息を借入金には充当しません。
利息は利息として、元金は元金として、別々に計算するのが特徴です。
結果として、最終的に取り戻せる金額が少なくなるので、貸金業者にとっては有利な方法として棚上げ計算を主張してくる業者もあります。
棚上げ計算では、利息については別計算となり、借入金には過払い金が充当されることになります。
借入金には、すべて過払い金元本から充当するので、過払い金の元本が減りやすくなるというのが特徴です。
ただし、棚上げ計算と利息充当計算との差額は、ごくわずかです。
過払い金の計算は自分でも可能です。
ここでは、自分で過払い金の計算をする際に注意しなければならないポイントについて紹介します。
過払い金の引き直し計算は、慣れない計算で間違いやすいため、注意が必要です。
特に、貸金業者との取引回数が多い人は要注意です。
取引回数がさほどなければ、引き直し計算はそれほど難しくはありません。
しかし、何年も取引していて取引回数が多いと、それだけ計算が複雑になるので、ミスが生じやすくなります。
計算ミスや入力ミスをしてしまうと、場合によっては戻ってくるべき金額を少なく計算してしまったり、貸金業者に請求を断られたりする可能性も出てきます。
くれぐれも過払い金の引き直し計算は、正確に行うようにしましょう。
計算が複雑で自分で計算するのが不安な場合には、専門家に相談するのもひとつの方法です。
過払い金の計算には取引履歴が必要になりますが、取り寄せる際に注意しておきたい点がいくつかあります。
まず、個人の取り寄せを専門家よりも後回しにする貸金業者があるので、時間がかかる場合があります。
また、取り寄せの理由を聞かれた場合には「過払い請求のため」と答えることは避けた方がよいでしょう。
貸金業者に「過払い金とわかったうえで返済を続けていた」と主張されるケースがあり、そうなると過払い金が取り戻せなくなる可能性も出てくるからです。
貸金業者に使用目的を尋ねられた場合は「すべての取引の詳細について確認したいため」などと、当たり障りのない返答をしておいたほうが無難です。
借金を一度完済したあとに、再び同じ貸金業者から借り入れをしている場合には、注意すべき点があります。
2つの借り入れを1つとして考えるか、別々のものとして考えるのかによって、過払い金の時効の起算日が変わって、過払い金の額も変わるという点です。
2つの借り入れが1つの取引として認められれば、10年以上の前の借金でも時効にかからないので、過払い金請求ができる可能性があります。
ただし、1つの取引として認められるのか、別々の取引となるのかの判断は、まだ法律で明確なルールが定められていません。
個人では判断がつかない問題なので、このような場合には専門家に相談することが望ましいと言えるでしょう。
借金返済中の過払い金請求を行う際には、場合によってはブラックリストに載ってしまう危険性があるので注意しなければなりません。
返済中に過払い金請求をすれば、過払い金を借金返済に充てることができるので、借金が減額されたり、なくなったりする可能性があります。
しかし、返還された過払い金で借金を完済できない場合には、ブラックリストに載ってしまうのです。
この理由は、借金が残ってしまった場合には、貸金業者に対して借金の減額をしてもらう「債務整理(任意整理)」になるからです。
債務整理は信用情報機関においては、自己破産などと並ぶ事故情報なので、ブラックリストに記載されてしまうことになります。
借金の残高をなくすことができると思っていたのに、計算ミスをしていて、実は借金の残高が残ってしまったとなれば、ブラックリストの危険があるということです。
くれぐれも計算には細心の注意を払いましょう。
過払い金請求において、計算ミスをしないことはとても重要です。
しかし、自分で過払い金の引き直し計算をすると、手間がかかったり、計算間違いをしたりする可能性も出てきます。
ここでは、できるだけミスを防ぐ計算方法について紹介します。
過払い金の引き直し計算は、取引件数が多いと複雑で難しくなります。
ですから、電卓を使って一つひとつの計算をしていくと、どこかで計算ミスが生じる可能性が高くなります。
そのため、過払い金の計算に特化した計算ソフトを利用したほうが正確です。
実際に、自分で過払い金の計算をする人の多くは、専用ソフトを使用しています。
無料でダウンロードできるものもあるので、手軽に準備できるのがメリットです。
過払い金チェッカーなどもありますが、過払い金請求をする際に簡易な計算だけでは、貸金業者によっては相手にされないこともありえます。
無料のものでもよいので計算ソフトをきちんと使用するようにしましょう。
複数の業者と取引があったり、取引期間が長かったりする場合には、計算が複雑になるので、自分で計算するのは困難になります。
このような場合には、引き直し計算代行サービスなどを利用するとよいでしょう。
引き直し計算代行サービスは有料で、利用料金は依頼する会社によってさまざまです。
およその目安としては、1社につき1,000円から2,000円くらいが相場と考えておきましょう。
引き直し計算代行サービスを行っているのは、主に法律事務所などです。
事務所によっては、引き直し計算だけなら無料で行ってくれるケースもあります。
法律事務所に依頼すれば、過払い金請求に関する相談などもすることができて便利です。
だだし、代行サービスを利用する際には、貸金業者へ取引履歴を取り寄せる作業は自分で行わなければなりません。
過払い金の計算は、正確に行わなければなりません。
きちんと計算しないと、戻ってくるべき金額が減ったり、戻ってこなかったりする可能性もありますので注意しましょう。
つまり、過払い金請求では、正確な計算を行うことがとても重要だということになります。
正確な金額を知って確実な請求をするためにも、専門家に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。