過払い金でより高いレベルの回収を目指すのであれば、裁判をしていかなければいけないことになります。裁判をしない場合、代理人請求(弁護士・司法書士に依頼した場合)、元金の8割程度(本人請求だと5割程度)での解決となってしまいます。
こちらの金額に納得されないのであれば、訴訟をしないと満足の金額を回収することはできません。
元金を割る金額でもよければ、早期和解は可能で、裁判をしない解決方法でもよろしいかと思いますが、「もらえるのであれば多いほうがよい。」とか「そんなに急いでいるわけではない」という方は、裁判(訴訟)をして回収を図ったほうがよろしいということになります。
上述したとおり、自分で過払い金返還請求をした場合、任意交渉では高額の返済に応じてもらうことは難しく、業者にもよりますが、元金の50%前後で推移しているのではないかと思われます。
そのため、過払い金返還請求は訴訟を起こして争うのが一般的となっています。
訴訟を起こした場合には、ほぼ満額に近い金額の返還に応じています。
過払い金返還請求は、必ずしも弁護士や司法書士といった専門家に依頼する必要はなく、自分で裁判を起こすこともできます。しかし、自分で裁判を起こす場合には、以下のとおり、いくつか注意があり、デメリットも生じる可能性があります。
(訴状の作成、予納郵券・収入印紙の購入、相手方の資格証明書の取得等)
訴訟提起をする場合、予め必要となる書類一式を作成する必要があります。区役所・市役所での戸籍謄本取得のように、本人確認書類だけ持っていって事が済む話しではありません。
相手方又はその代理人弁護士と裁判所で意見を取り交わす口頭弁論は、平日に行われます。
そのため、自分で訴訟をすると、平日に仕事をしている方はそのたびに会社を休まなければなりません。結果、仕事の進捗や周りからの信用にも悪影響が出かねません。
相手方の反論(答弁書・準備書面)に対する再反論をしなければならない場合があります。その際、準備書面の作成・証拠の収集等、ある程度の書類を作成する必要があります。相手方の反論に対し、再反論が甘いと、場合によっては、請求の一部が認められなくなったりすることもあります。
このように、自分で訴訟を起こすことはさまざまなデメリットを伴います。
そのため、裁判を起こして過払い金の請求を争うことを考えているのであれば、弁護士や司法書士といった専門家に依頼することが無難かもしれません。
時間もあるし、書類作成もできるという方だけ、自分で訴訟行為を行って頂ければよろしいかと思います(特に争点がある事案では、どちらかが欠けている方はオススメしません)。
過払い金訴訟を提起した場合、業者の対応は千差万別です。多少の争点があっても、争うことなく和解することができる業者もあれば、一見争点がないような事案でも、強引に争点を作り出して、徹底的に争ってくる業者も存在します。よって、十把ひとからげに「過払い訴訟は楽だ。」とは言えませんし、一方で「過払い訴訟で満額回収するのは難しい」とも言えません。
過払い請求した後の手続きの流れは以下のとおりです。
この時、貸金業者がこちらの請求額に対して満足するような回答をしてくれることはあまりありません。ここで下手な和解金額で妥協してしまうのは得策ではありません。
和解が成立しない場合には、裁判すればよいのです。実は貸金業者は全般的に裁判に持ち込みたくないのです。というのも、裁判になった場合、こちら側に有利な判決の出る可能性が極めて高くなるからです。
しかし裁判は、自分で裁判費用(収入印紙で納付)を負担しなければならなくなるので損ではないか?と思う人もいるはずです。この点、勝訴した場合は、裁判費用や裁判所などの交通費なども相手の負担(全部又は一部)になります(但し、当該費用まで請求する弁護士・司法書士は一部です)。
つまり事実上、皆さんが損することはほぼないと言っていいわけです(裁判費用は訴額にもよりますが、通常2、3万程度です。5万はいかないでしょう。)。
裁判は普通に生活している人たちにとっては、ほとんど無縁の世界です。ですから不安に感じるのでしょう。時間に余裕があり、ある程度書類を作成できるという方は、チャレンジしても良い事項かもしれません。
もっとも、本業で忙しいという方は、たとえ書類作成能力があっても、煩わしいことが多いと思いますので、自分で請求せずに、司法書士・弁護士にお願いするのも一考の余地はあるかと思います。
過払い金のあることが発覚して、業者に過払い金請求を行ったとします。
通常は速やかに和解案を提示しますが、その内容に納得できない場合には裁判を起こすことになるでしょう。裁判に関しては、大きな争点がないと以下のような流れで終結するのが一般的です。
1回目が業者側不出頭。裁判所内は原告代理人又は原告のみ出頭で、裁判官が「訴状陳述。答弁書陳述。それでは、2回目の期日を決めます」と言い、原告側と裁判官が次回期日の日程の調整をして終わりです。時間にして、2、3分程度でしょう。次回期日は、裁判所や時期にもよりますが、通常1か月以上先の日となることが多いです。
そこから、第2回期日までの間(期日間)に和解になるというパターンが多いかもしれません。ごく稀に、1回目から業者の担当者が出頭して、別室で和解の話が進む場合もあります。
専任の弁護士を付けて徹底的に争う対応を見せてくる業者も存在します。裁判での対応としては、業者を問わず以下のようなことがあげられます。
1.の「悪意の受益者ではないこと」とは、法定利息を超える利息が任意に支払われたものであるということを主張しています。これは「みなし弁済」と呼ばれ、これに該当する場合には過払い金返還請求はできないのです。はATM利用明細書などの取引履歴を大量に保管しており、これを持ち出して主張してくるのです。
2.の「取引の分断」については注意が必要です。
取引の分断とは、いったん完済した後、次の取引までに一定期間以上の空白期間がある場合に、空白期間の前後を別取引として扱う、ということです。
別取引として扱われる場合、一連の取引として扱った場合に比べて過払い金の額が少なくなるほか、前の完済日が10年以上前であった場合には時効が成立しているとみなされ、前の取引については過払い金返還請求ができなくなってしまいます。
通常、一連の取引として扱う場合の基準としては、
があります。
このような裁判の対応は、一般の方では難しいかもしれませんので、弁護士や司法書士といった専門家に過払い金訴訟対応をしてもらうのがよろしいかもしれません。
その他、業者特有の論点が存在します(こちらのほうが厄介かもしれません)。
↓
以上、簡裁であれ、地裁であれ、最終的にはから和解案を提示されて、その内容に納得できたのであれば、訴訟上又は訴外での和解となり、訴外での和解の場合は、入金が確認出来次第、過払い金請求訴訟の訴えを取り下げて終了という形になります。
(なお、争点があって、1円も負けられないというような事案の場合は判決までいくことになりますが、かかる案件はごく少数でしょう)。
過払い金が発生してその返還請求訴訟を提起する際に、民法では年利5%の金利をつけて返済を求めることも可能です。しかし、そのような請求をすると「当社は悪意の受益者ではないので過払い利息をつけないでほしい」と言ってくる業者が存在します。
悪意の受益者ではない根拠として、契約書や領収書などを提示してきちんと事前にお客さんに対して伝えたうえで金銭消費貸借契約をしているからと主張します。
実は少し前まで書面できちんと確認できるのであれば、悪意の受益者として断定はできないという判決が出たこともありました。しかし現在は利息を付けることは可能と考えられています。
2011年に最高裁判所判決で、リボルディング方式の貸し付けの中で、契約書の書面に返済期間や返済金額の確定的な記載がないのであれば受益者として推定されると判断されました。
ただし利息を主張した場合、裁判で長期化する可能性のあることも念頭に入れておいてください。
過払い金の返還請求をする場合、裁判による解決を目指し、無事第1審で勝訴判決を得たことはよいものの、それに対して不服申立て(控訴)してくる場合があります。
基本的に消費者金融は、できるだけ過払い金を払いたくなく、また最終的に支払払うことになったとしても、予算の関係で、時間稼ぎのため、そのタイミングを遅らせようとする場合があります。
そのために取るべき手段として、控訴提起をしてきます。
また、依頼人が自己破産・免責手続きの申立てを行った後に過払い金返還請求をするといた事案では、控訴してくる場合があります。
ただし、自己破産・免責手続き後の過払い金返還請求については、過去に幾つかの判例で請求が認められているため、控訴せずに和解もしくは判決により解決できるケースもあります。以上、
控訴するか控訴しないかは、ケースバイケースといった状況のようです。
控訴された場合は、返還される期間が延びてしまう可能性は高いということを頭の片隅においておきましょう。
なお、控訴されると第1審の勝訴判決がひっくり返って逆転敗訴になってしまうのではないかと不安になる方がいらっしゃるかもしれませんが、争点がない限り、そのような事態になることは非常に少ないと考えて頂いて結構です。
過払い金請求訴訟を提起し、第一審勝訴判決が出て、控訴をされた場合の流れですが、第一審の判決から、14日以内に控訴申立が必要になります(業者側)。
そして、そこから50日以内に控訴理由書の提出が必要です(業者側)。
そのため、最大限当該期間の活用をしたとしても2か月ほど延びるくらいです。
実際に控訴申立てが行われた場合は、大抵、一回目の口頭弁論で結審します。
この場合は、控訴申立てからだいたい半年以内に判決が出ると考えてください。
何事にも例外はありますが、平均的にはこれくらいの期間がかかるわけです。
以上、詳細については、弁護士・司法書士に相談してみましょう。
かかる専門家がしっかりと回答してくれます。