最近、よく過払い請求に関するテレビ・ラジオCMで、「過払い金には期限があります。」ということを耳にされたことがあるのではないでしょうか?
実際、過払い金には期限があります。「取引が終了してから10年」です。
わかりやすくいうと、「完済してから10年」です。
現在、取引をしている最中の方は、基本的に期限の問題を考える必要はありません(時効にはかかりません)。なぜならば、取引が終了していないからです。
ただし、1点だけ注意点があります。「取引が終了してから10年」というのは、キャッシングの借入れ当初から、最終返済に至るまで、下記のように、途中完済・途中解約等なく、連続して取引をしている方の場合に言えることです。
現在取引をしている方(返済中の方)で、過去、分断がない方は、あまり期限にナーバスになる必要はありません。ただし、中小の貸金業者だと倒産リスクが高まるので、その点は注意です。
一方、長きにわたる業者との取引の中で、退職金等まとまったお金が入ったので、一括返済され解約し、しばらくの間、キャッシングをすることなく過ごし、その後、キャッシングを再開し、しばらく後に最終返済に至ったというような場合に過払い請求する上で期限が問題となります(以下、下記図参照)。
この場合、過払い金請求の相手方である業者は、「一連分断」の主張をしてきます。
この「分断」とは、取引を2つに分けて、第1取引と第2取引を別個独立のものであると主張することです。その結果、第1取引完済時から10年経過していると第1取引で発生している過払い金が消滅してしまう結果となります。
途中完済有りのパターン
(例)
平成12年4月1日に完済し、解約。その後、4年5ヶ月間取引がない事案。第1取引の期限は、平成12年4月1日完済時から10年のため、平成22年4月1日までとなります。
「分断」が認められてしまうと、第1取引で発生した過払い金と第2取引で発生した過払い金の金額の合計額を業者に過払い請求することとなります。この合計額と第1取引と第2取引を分断しないで、通算計算した金額、どちらのほうが過払い金の金額は大きくなるのか非常に気になると思います。
一般的に、通算計算した過払い金の金額のほうが大きくなります。過払い金が間断なく充当されることとなる当然の帰結です。
さらに、「分断」主張が認められてしまった場合、思わしくない結果が発生する可能性があります。
第1取引で発生した過払い金の期限が既に到来していた場合、過払い請求をしても業者から時効の主張をされてしまいます。その主張が認められてしまうと、第2取引のみ計算をすることとなりますが、第2取引が平成19年以降からだと、(法定金利内での借り入れのため)過払い金自体が発生せず、過払い金請求自体ができないということになる可能性があります(第2取引も完済していたとしても)。
過払い金期限まとめ
① 最終完済から10年で時効
② 貸金業者の分断主張がみとめられてしまう場合、途中
完済から10年で時効主張されるおそれあり
上述のように、過払い金請求をする際、貸金業者が主張する「分断」が認められてしまうと、期限が到来してしまったり、過払い金の金額が通算計算で主張するより少額になる(場合によっては、過払い金請求自体できなくなる)ことがあります。
この「分断」の期間ですが、貸金業者としては、どのくらい空いていると主張してくるのでしょうか?
一般的に1年を超えると主張してくる場合が多いですが、それよりも短い期間で主張してくる場合もありますし、1年を超えても主張してこない場合もあります。
そもそも、基本契約が複数の場合、取引が別個かどうかは、空白期間(取引していない期間)のみによって決まるわけではなく、その他の事情として、
7つの事情を総合考量して判断するからです(最高裁判所判例平成20年1月18日)。
分断されるどうかは、期間だけで判断するわけではないというのが上記最高裁判所判例の趣旨ですが、期間のみで考えるとだいたい1年を超えるか否かを基準に決める事案多いです。
分断の期間が長いと、通算して計算した金額を取り戻すのは、裁判をしないと難しいです。裁判をすれば確実に取り戻せるという訳でもありません。