最近、下火にはなっておりますが、世間を賑わしてきた「過払い請求」、この仕事に従事している弁護士って、結局儲かっているのでは?大量に事件を受任して処理できるのかな?と微妙に気になっている方も多いではないでしょうか?
過払い金は、貸金業者から回収して、弁護士費用を控除した残額を依頼者に返金するという仕事です。
誤解を恐れずに言えば、過払い請求事件は、勝ち筋がほとんどで、解決期間もある程度予測できることから、1人の弁護士が大量に事件を抱えても、問題なく処理できる事件と言えます。
そうすると、過払い金の報酬基準は、他の民事の事件(以下、「一般民事事件」という)よりもかなり低額に抑えられているのかなあ?とシャープな質問をされる方もいらっしゃるかと思います。結論を申し上げると、実際はそのようなことはありません。
この点、現在、一般民事事件の報酬基準は、適切かつ妥当な金額であれば、原則として自由に設定してよいことになっております。もっとも、多くの弁護士が、かつて存在した旧報酬規定と同等、または、これを基に独自の基準を設定している傾向にあります。
一方、債務整理・過払い金返還請求事件(以下、「過払い金請求事件」という)の報酬基準については、2011年4月1日以降、特別に報酬規程が設けられました。この規程の範囲内で、弁護士は債務整理事件とこれに伴う過払い金請求事件の報酬を設定しております。現在、この規程の上限いっぱいで報酬を設定している弁護士が多いです。
以下、「一般民事事件」の旧報酬規定と「過払い金請求事件」の報酬額の規定の上限の比較をしてみましょう!!
弁護士が過払い金の事件を扱う場合、報酬規程が存在するよ。青天井ではなく、ちゃんと上限が存在するよ。
司法書士も同様の指針が存在するけどね。
例えば、200万円を人に貸して、この貸付金を裁判で取り戻す手続きを弁護士に依頼した場合の報酬と、200万円の過払い金を裁判で取り戻す手続きを弁護士に依頼した場合の報酬を上記の基準(「一般民事事件」=旧規程、「過払い金請求事件」=報酬規程の上限)で比較した場合、どうなるのでしょうか?
上記のとおり、過払い金返還請求事件のほうが、定型的な事件処理にも関わらず、多く報酬を取っていることとなります。過払い請求事件の報酬が上記のとおり25%ではなく、より低額な報酬で事件を受任している弁護士も存在しておりますので、一概には言えませんが、上記の基準で設定している弁護士が多いことからあながち間違いではないと思われます。
加えて、「一般民事事件」では、そもそも、相手方に資力がなく、確定判決を取っても、回収を図れない場合があるとか、裁判で1年、2年を要するとか、相手方に払ってもらえるにしても、少額を分割払いでしか払えってもらえない等の問題が潜んでおります。また、実際の依頼者数も債務整理・過払い金返還請求事件と比べれば、それほど多くありません。
以上によると、過払い金請求事件処理は一般民事事件と比べ、数多くの依頼が見込め、短期間で確実に弁護士の元に報酬が入ってくる可能性が高いと言えそうです。
とすれば、儲かる?儲からない?でいうと、儲かるのではないかとの推定が強く働くことになりそうです。弁護士も仕事をボランティアでやっている訳ではない以上、同じ時間を費やすのであれば、儲からない仕事よりも儲かる仕事をやるほうが良いと思うのは当然でしょう。「営利企業である株式会社は儲かる仕事をやり、弁護士等の士業は、公務員に準じた非営利の公的な職業だから儲かる仕事を進んでやってはいけない」という考え方は、ごもっともな意見だとしても、それが全てではないはずです。
もちろん、公益の精神は大事ですが、現実的に、事務所を借りて、会費を納めて、事務員の給料を出して、税金を納めてとなると、固定費については(非営利、営利の企業問わずほとんど変わらない訳なので)利益が出ないとやっていけないのです。
そうすると、儲からなければ固定費も弁護士会費も払えず、廃業になってしまうのであり、ある程度の儲けは当然、必要となる訳であります。
以下、弁護士会の債務整理事件の処理を定める規程を基に、過払い請求事件の弁護士報酬につき、以下記載致します。
Memo
(過払い金の)着手金とは
一般的に残債が残っている状態で貸金業者に対して介入する場合にかかる初期費用のことです。着手金についての上限規制はありません。おおよそ、2万~5万円程度に設定している事務所が多いようです。
Memo
減額報酬金とは
残債が残っている状態で弁護士に依頼をして、引き直し計算の結果、借入金がゼロになり、過払い金が発生するような場合、減った金額の10%を超えない範囲内で減額報酬金という名目の報酬を取ってよいこととなっております。
こちらについては、上限の10%を取る弁護士又は、全く取らない弁護士の2グループに分かれる場合が多いようです。その中間のパーセンテージ(例えば、5%とか7%とか)を取る事務所もありますが、少数のようです。
Memo
過払金報酬金とは
過払い請求後の過払金回収額の成功報酬です。訴訟によらない場合で回収した場合、回収額の20%、訴訟によって回収した場合、回収額の25%が上限となっております。
こちらについても、上限の20%ないし25%を取る弁護士が多いようです。例外的に、かかるパーセンテージよりも低い割合で事件を受任する弁護士も存在します。
(例)弁護士依頼当時、100万円の借入金が存在したが、弁護士受任により、引き直し計算の結果、200万円の過払い金が発生し、訴訟によって、年利5%の利息も含めた230万円の過払い金を回収した場合の手数料はいくら?
※着手金2万円、減額報酬金10%、過払金報酬金25%(訴訟による回収)を取る弁護士の場合
減額報酬があると、過払い金から余計な費用が引かれてしまいそうだね。取らない事務所もあるから比較検討の余地がありそうだね。
過払い金でおすすめの弁護士は?これは非常に気になるところだと思います。特定の弁護士を指定するわけにはいかないので、以下、おすすめの弁護士はどのような弁護士かを以下、記載致します。
過払い請求や債務整理事件のみならず、不動産関連事件、交通事故事件、労働事件、刑事事件、離婚・相続等家事事件、医療過誤事件等、ありとあらゆる事件を満遍なく受任する弁護士が存在します。それはそれで素晴らしいことなのですが、過払い金請求自体、それほど件数をこなしたことがない弁護士も中には存在します。そのような弁護士に依頼した場合、往々にしていえるのは、スピード感がそれほどなかったり、過払い金の金額を妥協されてしまったりするきらいがあります。
どの事件でもそうだとは思いますが、その事件に不慣れな弁護士よりも精通した弁護士に依頼するのが無難かと思います。そのような弁護士がおすすめです。
現在、過払い金を扱う事務所は全国至るところにあるため、手数料の比較検討は必須となってくるのではないでしょうか?何も検討せずに安易に事務所を決めてしまうと、弁護士会の報酬規程上限すれすれの事務所に依頼をすることになってしまう可能性が高くなります。
上限すれすれの事務所に依頼してはいけないと言っているわけではありませんが、同じ割合の過払い金を取り戻すと仮定した場合、手数料割合により依頼人に返金される金額に相違が出てくることから、検討しなければ損と言えます。
あまり有名ではなくても、上限を下回る良心的な弁護士も数多く存在するのは事実ですので、比較検討の余地はあるかと思います。
手数料はできる限り低廉であるところがおすすめです。
(例外もあるとは思いますが)ほとんどの依頼者が考えることは、「過払い金をより多くかつ早期に取り戻してほしい」ということではないでしょうか?
「満額」かつ「早期回収」、究極的にこの2つの条件を満たすのは、一部の業者を除き、難しいのが現状です。金額を重視して回収を図れば、訴訟をせざるを得ません。その結果、訴訟をしないで解決を図る方法よりも回収時期が遅くなってしまいます。
一方、「早期回収」を重視して回収を図る場合、ある程度過払い金額を減額して合意せざるを得ないため、本来取り戻せる金額が減ってしまいます。
弁護士の場合は、司法書士と異なり、140万円とか、簡易裁判所に限るとかの制限が存在しませんので、ある程度時間がかかっても回収を図ることを明示する弁護士が多いように思えます。多少時間がかかってもよいのでと考えるのであれば、そのような弁護士に依頼をされるのがおすすめということになります。
一方、そのような解決方針を明示しない弁護士に依頼をしてしまうと、中途半端な適当な金額で和解をされてしまう可能性があります。当然、そのような弁護士に依頼することはおすすめしません。
おすすめ弁護士ポイント
皆さんは、弁護士ではなく、司法書士という職業が存在するのはご存知でしょうか?最近、テレビCMやラジオCM、司法書士をモデルにしたドラマ等で、認知度が高まりつつありますが、今でも、図書館司書と勘違いされたり、隣接法律職能の行政書士と勘違いされたりすることが多々あります。
平成15年の改正司法書士法施行により、研修及び試験を受けて法務大臣から認定を受けた司法書士(以下、「認定司法書士」といいます)は、簡易裁判所において140万円以内であれば、民事訴訟の代理人、裁判外での交渉ができるようになりました。よって、司法書士も、1社につき、過払い金元金140万円以内であれば、依頼人に代わって過払い金返還の代理交渉をすることもできますし、簡易裁判所に訴訟を提起することもできます。
もっとも、あくまでも、認定司法書士は認定司法書士であり、弁護士とは異なりますので、その点は注意しましょう。
法定利息を超える高い利息で返済してきた借り入れには、過払い金が発生している可能性があります。
過去のとの取引の中で過払い金が発生しており、かつ過払い金返還請求の時効が成立していなければ、誰でも過払い金の返還請求をすることができます。
請求できる過払い金の金額に制限はないので、数千円でも数千万円でも、発生した過払い金は全て返還請求することができます。
しかし、弁護士や司法書士に過払い金返還請求を依頼し、裁判を起こして交渉しようと考えている場合には、過払い金の額が140万円以下か、140万円より多いかによって請求方法に違いがあります。
過払い金の額が140万円以下であれば、弁護士にも司法書士にも依頼することができます。
しかし、140万円を超えてしまうと、司法書士の代理権の範囲を超えてしまうため、その場合は弁護士に依頼するか、もしくはご自身で過払い金返還請求をする必要があります。
まずはご自身でから取引履歴を取り寄せ、引き直し計算をして、過払い金の額を確認してみることをおすすめします。
140万円以下の請求であれば、司法書士も弁護士と同じように交渉、訴訟を起こすことができます。
過払い金の請求を専門家にお願いしようと思っているのだけれど、どういった司法書士・弁護士に依頼すれば良いかのポイントをいくつか挙げておきます。
お金に色はなく、同じ金額が戻ってくるのであれば、差し引かれてしまう手数料は安いに越したことはありません。司法書士・弁護士のホームページを見比べて、何%の手数料が取られるのか比較してみましょう。
ここで注意して頂きたいポイントが1点ほどあります。
ホームページ上に表記してある過払い金回収手数料の割合ですが、「他の司法書士・弁護士と比べて異様に安いなあ」と感じた際、その手数料割合は、過払い金の金額によって、変動があったり、依頼する件数によって変動があったりしないかをしっかり確認して下さい!!
例えば「10万円以下までは7%」「10万円を超えた場合は、20%」という手数料割合を取る司法書士・弁護士が存在した場合、「7%」という安い割合に着目してしまいがちです。
実は、ここが大きな落とし穴となります。良く考えてみて下さい。過払い金が発生するとしたら、ほとんどの方は10万円を超えるでしょう。そうすると、安い「7%」ではなく、「実質的には『20%』取られてしまうのだな」と考えていかなければならないことになります。
司法書士・弁護士の中には、面談時に「数ヶ月間で終わる」と言っておきながら、実際には1年経っても解決しないという話も聞いたりします。
「過払い金が戻ってくるとは思わなかったから、いくら時間がかかっても構わない」とは思っても、告げられた期間を大幅に超過するような場合は、誰だって不信に思ったり、不安に思ったりすると思います。
過払い金返還請求事件の場合、確かに、突然、業者が潰れてしまったり、業者の過払い対応が強硬になり、返還期間を引き延ばしたりしてくるといった不確定な要素も存在するため、「確実に数ヶ月で終わる」とは言い切れません。
しかし、かかる特段の事情が存在しなければ、ある程度の解決期間の予測はできるものであり、多少遅れるようなことがあったとしても、実際上、通常人の感覚で常識的な範囲内で解決するものであります。
そうすると、面談時に「数ヶ月間で終わる」と言っていたのが実は顧客誘引のための決め台詞かもしれません。実際は、解決期間が非常に遅いはずれの司法書士・弁護士という可能性もあります。
司法書士・弁護士によって、裁判による解決を目指すのか、裁判をしない解決を目指すのか、異なってきます。全件訴訟のような弁護士もあれば、全件訴訟しない司法書士も存在します。また、ある一定の業者に対しては訴訟するが、その他の業者は訴訟しない等、業者によって対応を変える司法書士・弁護士も存在します。
一般的に裁判をして回収したほうが、戻ってくる過払い金の額が大きくなる傾向にあることは事実です。問題は、どのくらい待てるかでしょう。
究極的には、金額重視か、早期解決重視かの二者択一ということになります。
以上、弁護士・司法書士選びのポイントを3点ほど挙げさせて頂きました。参考にして頂き、司法書士・弁護士選びに役立てて頂ければと思います。
数年前、過払い金の返還の依頼をした依頼人が、弁護士に手数料以外の金額を中抜きされる事件があったようです。これは、精算時に返還すべく書類を返還していないことから端を発する事件といえます。通常、弁護士が貸金業者と過払い金の返還に関する合意をする際、必ず、合意書(和解書)(以下、「合意書等」という。)を作成します(但し、和解交渉が決裂し、判決確定し、強制執行をした場合を除く)。もし、弁護士が精算時に依頼人に対し、合意書等を返還しない場合、どのようなことが起こりうるのでしょう?
例えば、弁護士が200万円である貸金業者と合意をしたにも関わらず、依頼者に対し、「150万円で過払い金の和解となりました」と報告をしたとします。手数料の支払いを確実にするために、過払い金の返金口座として自身の事務所の口座を指定する弁護士が多いため、過払い金はいったん、事務所の口座に返金されるとします。
そこから、依頼人と弁護士が事前に取り決めた手数料額を差し引いた残額が依頼人に返金されることとなります。
例えば、本件において、過払い金報酬額が20%(税抜き、以下、同様)だった場合、30万円の弁護士手数料とピンハネした50万円の合計80万円が弁護士の手に渡ることになってしまいます。本来、依頼者には、160万円返金されるはずなのに、実際には120万円しか返ってこないことになってしまいます。
弁護士が精算時に、精算書(費用の内訳を記載した領収書)しか返還しない場合は、依頼者は、かかる欺罔行為のチェックしようがありません。返還書類として、精算書のみならず、合意書等があれば、チェックが可能となります。合意書等の数字が精巧に改ざんされてしまうと、どうにもならなくなります。
しかし、改ざん行為が明るみになれば、弁護士は刑事罰や懲戒請求を食らい、事実上又は法律上、弁護士を続けられなくなってしまいます。
大部分の弁護士さんは、きっちり仕事をやられていると思います。時間とお金と労力をかけて、難関の試験を突破された訳ですから、そのようなことはしづらいのではないでしょうか。
過払い金返金時の詐欺的行為で考えられるとしたら、業者が倒産したので何もできなかったと嘘をついたが、実際は倒産などしておらず、勝手に和解して和解金をせしめるようなことが思いつきます。
しかし、かかる稚拙な行為を弁護士が行うことは考えにくいです。仮にそのようなことがあったとしても、別の弁護士に依頼した際に、その業者は倒産していない点、前の弁護士が代理人となって和解済みであるという点が明らかになるためです。
ほとんどの弁護士さんは、きっちり仕事を行っておりますので、それほどナーバスになる必要はないとは思います。もっとも可能性としてゼロとは言えないので、精算時にしっかりとチェックをして頂ければと思います。