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相続登記の流れとは?

遺産相続により土地家屋を受け継いだ場合、その土地家屋の所有者として登記を行う必要があります。
その大きな流れとしては下記の通りです。

1)被相続人・相続人それぞれの戸籍の収集
2)遺産分割協議書の作成
3)その他必要書類の取得
4)相続関係説明図の作成
5)登記所への申請
上記をご覧いただければ分かるとおり、非常に多くの書類を収集する必要があります。
この書類が抜けてしまうと補正になり、再度の収集のために多くの時間がかかることもあります。
自分で申請するとほとんどの場合補正がかかりますが、それでも可能な限り修正回数が少なくなるようにした方が短い時間で申請が完了します。
ですから、まずは相続登記の流れや準備すべき書類についてしっかりと確認していきましょう。


戸籍の収集を行う

まず、被相続人・相続人それぞれの戸籍を収集します。
実はこれが少々手間のかかる作業となります。

ここで集める戸籍は、相続人の分全てです。
これらを全て集めることによって、相続人を確定させるというのが最初に行うべき手順となります。

被相続人の死亡の記載のある戸籍の収集を行う

まずは亡くなった方の最後の戸籍を取得します。
これは死亡届を提出した後、最新の戸籍として作成されたものになります。
この最新の戸籍から遡って、被相続人の出生の時点までの戸籍を全て取得しなければなりません。
この戸籍は、1枚で終わることはまずありません。
たいていはライフステージのどこかで戸籍に変更が出たり、法改正により戸籍の様式が変わったために一新されたりと、様々な理由で戸籍が改正されています。
その改正された戸籍の全てを集め、他に相続人はいないということを証明する必要があるのです。

相続人の戸籍の収集を行う

次に、相続人の戸籍を収集することになりますが、これは相続によって土地建物を取得する人、しない人問わず必要となります。
登記の名義人とならない人も必要となるのは誰が相続の対象者となっているかを確かめるためのものだからです。

相続人の戸籍は、被相続人の戸籍とは異なり現在戸籍のみで構いません。
変更が加わっていないことが確実であれば多少古いものでも構いませんが、知らないうちに法改正があって戸籍の様式が変わっていたということもあり得るため、できるだけ最新のものを取得する方がいいでしょう。

戸籍が消失している場合は…?

震災や水害など、様々な事情で戸籍が物理的に消失しているケースが存在します。
現在はデータで保存している戸籍ですが、過去には紙での保存が行われていました。
ですから災害が起これば場合によっては消失してしまうことがあるのです。
そういった場合には「消失証明書、告知書」と呼ばれる書類が発行され、この書類を提出すれば問題ありません。
かつてはこれに加え「上申書」というものの提出が必要でしたが、今ではそこまでは必要ありません。
ただし、外国籍の人の場合はその限りではなく、申告した人物以外に相続人はいないという上申書等を添付する必要があります。

遺産分割協議書を作成する。

戸籍を集めると、相続人が誰なのかということが客観的に判明します。
そこで、次に行うのは相続人全員での遺産分割協議です。
遺産分割協議書は、複数の相続人がいる場合に必要になるもので、誰が何を相続するのかということを話し合いで決めるというものです。
ですから逆に、相続人が一人しかいない場合には不要ということでもあります。

遺産分割協議書は、自分で作成する方法と司法書士に依頼する方法の二種類があります。
いずれの方法で作成しても問題はありませんが、その際注意すべき点がいくつかありますのでそれぞれについて確認していきましょう。

自分で作成する場合の注意点

自分で作成する場合には、下記の点に充分に注意して作成しなければなりません。

1)被相続人の死亡年月日の記載を忘れない
2)誰が財産を継承するのかの記載を忘れない
3)いかなる財産を継承するのかの記載を忘れない
4)相続人全員の住所、氏名の記載及び実印による押印
いずれも記載を忘れてしまうと効力を発揮出来ないため注意しましょう。

自分で作成する場合、どのような書式を元に作ればいいの?

遺産分割協議書に限った話ではありませんが、こういった書類にはテンプレートが存在しています。
基本的にはそれに基づいて作成する形で問題ありません。

テンプレートや書き方の情報は、ホームページと市販の書籍いずれかで手に入れることが出来ます。

1)ネット上の情報
法務局のホームページや司法書士のホームページに掲載されている書式を参考にすることが出来ます。

2)相続登記申請に関する市販書籍
本屋には相続登記申請に関する市販書籍が販売されています。
これらを利用すれば問題ありませんが、できるだけ大きな書店で探すことをおすすめします。
というのも、書籍にも様々あり、読みやすい・読みにくいといった個人の好みもあるためです。
できるだけ色々な種類の書籍が揃っている書店に行って比較しながら選ぶ方がよいでしょう。

司法書士に依頼する場合の注意点

基本的に、遺産分割協議書のみの作成を司法書士が請け負うということはありません。
相続登記に関する全ての書類の作成を請け負ったうち、遺産分割協議書も一緒に依頼するというような形になるのがほとんどです。

そのほかの書類の作成も含めての考え方になりますが、司法書士に依頼する場合にはその司法書士や事務所の実績や費用等をしっかりと確認する必要があります。
どの範囲までやってくれるのか、全てを依頼した場合にどれだけの費用がかかるのかといった点を、出来れば数カ所の事務所を確認して比較する方がいいでしょう。

なお、遺産分割協議書のみを引き受けるという司法書士事務所はほとんどありませんが、もしも遺産分割協議書のみ作成してもらうという場合であれば、費用は1.5万~5万円ほどかかります。

その他の必要書類を取得する

ここまでで説明した以外にも、必要となる書類は多くあります。
戸籍や遺産分割協議書も含め、相続登記の場合には下記の書類が必要となります。

<必要書類一覧>
※提出時に添付する必要のある書類
・戸籍(戸籍事項全部証明書・改製原戸籍・除籍謄本)
・相続関係説明図 ※戸籍を元に作成・自作または専門家に依頼
・遺産分割協議書 ※自作または専門家に依頼
・住民票
・住民票の除票又は戸籍の附票
・印鑑証明書
・代理権限証書 ※司法書士に登記申請を依頼する場合、自作で自ら申請人となる場合は不要
※申請書作成にあたって参照する書類
・固定資産税評価証明書
・登記簿謄本
これらの書類は戸籍と同時並行で収集をしても構いませんし、並行出来るのであればその方が時間の節約になるため、書類の取得に行く際には何をどこで取得出来るのかあらかじめ確認してから行くと効率的です。

更に、下記のケースにおいては特に重要となる書類があるため注意が必要です。

被相続人の最後の本籍地と登記簿上の住所が異なる場合

引っ越しが多かったり、所有する土地が多かったりする場合には、本籍地と登記簿上の住所が異なっているという場合も少なくありません。
特に所持している不動産が複数ある場合は一部の不動産は本籍地と一致しているけれど一部の不動産は一致していないというようなケースもあり得ます。

戸籍には住所が登載されていないため、戸籍と登記簿上の住所が一致していない場合、同一人かどうか戸籍だけでは判断できません。

そこで、その場合に必要となってくるのが「住民票の除票又は戸籍の附票」です。
この住所と照らし合わせることによって、本当に本人が所有している土地なのだということを証明することが出来ます。

逆に、最後の本籍地と登記簿上の住所が一致している場合にはわざわざ証明する必要がないため、住民票の除票・戸籍の附票は必要ありません。

相続人の印鑑証明書は全員必要となる?

相続によって土地建物を取得する人、しない人問わず、相続人全員の印鑑証明書が必要となります(登記名義人となる方の分は不要という見解もありますが、全員分必要という見解も存在するため、司法書士は通常、全員分を徴求します。
)書類の作成の際に必要になるもののため、全員取得することを忘れないよう注意してください。

名義人となる人の住民票の写しは忘れずに

名義人となる人は、必ず住民票の写しが必要となります。
これは税金逃れを防ぐという目的があるためで、提出の際にはきちんと添える必要があります。

逆に、取得しない人に関しては相続人であっても住民票の写しは必要とはなりません。
相続登記以外の場面では必要となることもあるかもしれませんが、相続登記だけが目的の場合には取得の必要はありません。

相続関係説明図の作成

いわゆる相関図(そうかんず)のことです。
これを作成すると、戸籍一式の原本還付を受けることが出来、他の申請などにも利用することも可能です。
特に取得に手間のかかる書類でもあるため、可能であれば相続関係説明図を作成しておくことをおすすめします。

なお、原本還付を受けるためには相続関係説明図ではなく戸籍のコピーを作成することでもよいのですが、コピーの手間や書類の枚数が増大すること、別の手続で原本が必要となる場合があることを考えると相続関係説明図の方がよいでしょう。

自分で作成する場合の注意点

相続関係説明図とは、下記の記入例のような形式のものをいいます。

この際、注意すべき点は次の通りです。

1)被相続人の最後の本籍の記載
2)被相続人の登記簿上の住所
3) 被相続人の最後の住所
3)誰が相続するのか
→相続人には「相続」と記載します。
このとき、共同での相続であっても
持分の記載は必要ありません。

4)誰が相続しないのか
→相続しない人には「分割」と記載します
5) 共同相続の場合は、共有となるため、「持分」を記載します。

相続関係説明図

参考となる情報はどこにある?

相続関係説明図を自分で作成する場合、参考にするのはどの情報がよいのでしょうか?
法務局のホームページや司法書士のホームページなど、専門家によって作成された雛形を使うことも可能です。

また、相続登記に関する書籍にも相続関係説明図の記載方法は載っています。
これは先ほどの遺産分割協議書の作成と同様、大きめの書店にいって自分で理解しやすい書籍を探して購入することをおすすめします。

自分で作成する際はどんなソフトを使えばいい?

自分で作成する際に気になるのは使用するソフトだと思いますが、これは一般的に書類を作成出来るソフトであれば何でも問題ありません。
ワード、エクセル、一太郎など、文書が作成出来て出力出来るものであれば特に制限はありません。
自分の使いやすいソフトを使用して作成し、印刷しましょう。

司法書士に依頼することも出来る?

相続関係説明図の作成のみで引き受けている司法書士事務所はほとんどないと思いますが、相続登記の書類作成や申請の一環として作成してもらうことは可能です。
場合によってはオプションとして選択ということもありますが、費用はおよそ5000円~1.5万円程度であることが多いです。

相続登記の申請を行う

必要な書類を全て集めることが出来たら、いよいよ登記所への申請を行います。
これは自分で申請することも、司法書士へ依頼することも可能ですが、いずれにしても注意点があるため確認しておきましょう。

自分で申請する際の注意点は?

まず何よりも、補正になることを前提として準備を進める必要があります。

自分で申請した場合、高い確率で補正になります。
補正となった場合には登記所から電話がかかってきて修正箇所の指示をされますが、このとき口頭で説明をされても理解出来ないということがほとんどです。

そのため、申請する書類は全てコピーをとっておき、修正箇所の指示を実際の書類を見ながら確認し、メモ出来るようにしておきましょう。

登記はその土地・建物がある場所の管轄の登記所で行います。
そのため、自分が居住している場所からは遠い登記所に申請を行う場合もあります。
そういった場合には、補正になった場合に一旦取り下げをして申請書も添付書類も全て返して貰うということも手段のひとつです。
取り下げをせずにそのまま申請を進めても却下となってしまい、そうなると申請書は戻ってきません。
添付書類は戻って来ますが、結果的に申請書を作り直しになったり、結局どこが補正になってしまったのかわからなかったりして何度提出しても無駄ということもあり得ます。

いずれにしても、必ず補正はあると考えてそのための対処をしておくことが重要です。

司法書士に依頼するときの注意点は?

自分ではわからない、という場合には司法書士に依頼することが最も有効です。
この際、相続登記申請書の作成のみを司法書士に依頼するということは通常出来ないと考えたほうがよろしいと思います。
そのため、依頼をする場合には基本的に全て一括で頼むというつもりでいましょう。
お金はかかりますが手間は掛からず確実なため、時間的余裕がない方はこちらの方法をおすすめします。

相続登記完了後はどうする?

相続登記が完了すると、登記識別情報と登録完了証がもらえます。

登録完了証については処分してしまっても問題ありませんが、登記識別情報に関しては厳重に保管し、誰にも知られないように気をつけましょう。

というのも、この登記識別情報は銀行の暗証番号のようなものなので、この番号が知られてしまうと勝手に処分されてしまう危険性が高まるからです。

司法書士に相続登記を依頼した場合、一連の書類を製本して「相続関係書類」としてまとめて依頼者に返却します。
登記識別情報や登録完了証もその中に入っているため、それらの書類を全て大切に保管するようにしましょう。

おわりに

今後、所有者不明土地問題の解決のために相続登記は義務化されることが決定しています。
そのため、土地を相続する可能性がある場合には必ずこの手順が必要となってきます。
相続登記の流れをしっかりと確認し、今から収集出来る戸籍などの書類に関しては早めに収集してしまうのも手かもしれません。

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