債務整理を行うとそれ以降は住宅ローンを組むことができなくなるのではないかという人がいますが、実際には債務整理をしたからといって必ずしもローンが組めなくなると決まったわけではありません。
もっとも、債務整理してからどの程度経過しているかなどのいくつかの条件を確認する必要はあるため、以下では債務整理と住宅ローンの関係や、信用情報機関の役割などを中心に、ローンに申し込む場合の注意点を紹介することにします。
債務整理をした後は住宅ローンが組めなくなるのではないかと考えられる理由の一つに、債務整理をした場合には、そこから一定期間は新規で借り入れを行ったり、クレジットカードを取得したりすることができなくなるということが挙げられます、これは、債務整理を行ったという事実が、信用情報機関が収集している信用情報に記録されることによって、金融機関が行っている審査に通ることが難しくなるということが背景にあります。
この信用情報機関というのは、個人がこれまでに行った借り入れや、クレジットカードの利用についての状況を管理している機関のことをいい、金融機関にその情報を提供することによって対象となる個人の信用状況の審査を正確に行うことをサポートする存在です。
このため、債務整理をはじめ信用情報機関の信用情報にマイナスとなる行為を行った場合には、それ以降は金融機関の与信審査に通過することは著しく困難になるのです。
もっとも、信用情報にマイナスとなる記録は、未来永劫残り続けるというわけではありません。
発生した事象によって期間はことなりますが、例えば債務整理の場合には、手続を実施してから5年から10年が経過した後は、その記録が抹消されることになっているのです。
また、任意整理を行った場合には概ね5年、個人再生や自己破産を行った場合には概ね10年にわたって記録され、その後は抹消されるため、これらの事象が発生したからといって永久に信用情報が毀損されることはありません。
では次に、個人の信用情報を記録することを主な役割としている信用情報機関についてより詳しく見ていくことにしましょう。
債務整理などの信用情報を毀損する事故と呼ばれる事象が発生すると、その情報は信用情報機関に登録されることになります。
ただし、自分の信用情報にそのような登録がされているかについてどのように確認すればよいか知っているという人は意外に少ないようですので、以下では信用情報機関が有している特徴と、実際の情報開示の求め方について説明することにします。
一つ目に取り上げるのは、信販系の信用情報機関であるシー・アイ・シー(CIC)です。
この機関に加盟しているのは、主にクレジットカード会社、銀行、消費者金融などとなっており、主にそれらの与信審査において必要となる多重申込みや、債務整理、過去の返済に係る延滞情報といった情報が登録されています。
この機関に対して情報開示を求めるためには、インターネット経由で申し込むほか、郵送や窓口を利用することも可能となっています。
このうち即時に確認したいということであれば、インターネット経由での申請を行う必要があり、郵送で申請した場合には10日程度を要する点に注意しなければなりません。
なお、シー・アイ・シーでは、債務整理については5年の間、事故情報として記録されることになっています。
二つ目に取り上げるのは、消費者金融系の信用情報機関として、主にローンやクレジットカードの利用の履歴についての情報を登録している日本情報信用機構(JICC)です。
その特徴は、リアルタイムで情報を更新し続けているということであり、消費者金融や金融機関などが主な利用者となっています。
この機関に対して登録情報の開示を求める場合には、郵送や窓口以外にスマートフォンを使って申請する方法があり、窓口以外で申請した場合にはその場では情報は開示されず、後日になって情報が郵送されてくることになります。
なお、日本情報信用機構では、シー・アイ・シーと同様に、債務整理について5年の間、事故情報として記録されることになっています。
三つ目に取り上げるのは、銀行系の信用情報機関である全国銀行個人信用情報センター(KSC)です。
日本情報信用機構と同じく、こちらの機関も、主にローンやクレジットカードについての情報を登録しているのですが、官報で公表される自己破産者の氏名や情報までも登録されるのが特徴となっています。
こちらの期間に情報開示を求める方法は、郵送による申請のみとなっており、所定の申込書に1,000円分の定額小為替証書を付して申し込む必要があります。
申請にあたっては、2種類の本人確認書類を同封しなければなりませんので、忘れないようにしましょう。
なお、全国銀行個人信用情報センターでは、債務整理については5年間、自己破産の場合には10年間、事故情報として記録されることになっています。
ここからは、債務整理と住宅ローンの関係を見るために、住宅ローンの与信審査についてどのような特徴があるのかを説明することにします。
まず、前提として押さえておくべきこととして、住宅ローンの審査の基準は、金融機関によって異なるという点があります。
一般的には、メガバンクや地銀などの銀行や、各地にある信用金庫のような民間の金融機関においては、厳格な審査が適用される傾向にあります。
そのため、特に安定した収入があるかどうかや、勤務先が信用力が高いところかどうかについては、念入りなチェックが行われることになるのです。
一方、「フラット35」のように公的融資と民間融資が組み合わさって運営されているような住宅ローンの審査基準の場合には、ローンを組んで購入することになる不動産にいかなる担保価値があるのかや、ローン対象の住宅に用いられている技術基準を重視する傾向があります。
次に、審査の流れですが、一般的には正式な審査に先立って仮審査や事前審査と呼ばれる手続を行ったうえで、本審査が行われることになるケースが多いです。
最初の仮審査においては、主に申込用紙に記載することによって申込者が申請した勤務先や収入、現在の借入額などの情報を基にして審査が行われます。
そのうえで、本審査では、より精緻に審査するために、仮審査で申請された情報の正確性を確認するといったことが行われます。
具体的には、勤務先に連絡して在籍していることを確認したり、収入などについての証明書を提出させたりといった方法がとられることが多く、これらによって得られた情報に基づいて行われる審査に通過することで晴れてローンを利用することができるようになるのです。
実際に債務整理を行った方が、住宅ローンに申し込む場合にはいくつか注意すべき点があります。
やってしまうと審査にマイナスになることや、逆にやっておかなければ審査に通りにくくなることがありますので、以下で順に見ていくことにしましょう。
既に述べたように、債務整理を行ってから概ね5年から10年の間は自らの信用情報に事故についての情報が記録されています。
そのため、住宅ローンに申し込む場合には、事前に信用情報機関に問い合わせて事故情報が残っていないことを確認することがポイントとなります。
また、事故情報は債務整理の有無だけに限られません。
クレジットカードやローンの返済を何度か遅延しただけでも、その情報が事故扱いされて記録されることがありますので、過失によってそのような返済遅延を起こさないように日頃から注意することが重要です。
次に重要なことは、住宅ローンを組むに当たってしっかりと頭金を貯めておくということです。
ここで頭金というのは、借入を行うに際して用意する自己資金のことで、これには諸経費は含まないという点に注意が必要です。
必ずしも頭金を用意しなくてもローンを組むことは可能ですが、できれば住宅取得費の1割から2割くらいは頭金を用意しておく方がよいでしょう。
頭金を用意することによって、単に後々のローン返済の負担が軽くなるだけではなく、金融機関によっては優遇金利でローンを利用できるということも可能となります。
さらに住宅ローンを申し込む場合は、必要以上に多くの金融機関に申し込むことは避けるべきです。
複数社に申し込むことについて、明確に禁止されているわけではありませんが、連続して審査に落ちた場合には、他の金融機関からのイメージが悪くなる恐れがあります。
また、複数に申し込んでいる場合には、本命の金融機関の担当者から本気で借りる気がないと思われるリスクもあるため、申込先はなるべく絞り込むようにしましょう。
住宅ローンを申し込む金融機関を選ぶ場合に、債務整理の対象となる債権を有していた金融機関に申し込むことはやめた方がよいでしょう。
そのような金融機関では、例え信用情報機関において事故に係る情報が抹消されていたとしても、独自に情報を保存している可能性があり、他の金融機関よりも審査に通過することが難しくなっている恐れがあるためです。
なお、任意整理を行う場合には、整理対象の金融機関を債権者側で選別することができるため、いずれ住宅ローンを利用したいと考えている金融機関があるのであれば、そこを対象から除外して手続きを行うといった工夫が可能です。
住宅ローンを組み際には、死亡等によって返済不能となった場合に保険金を利用して返済することができる制度である団体信用生命保険に加入することが義務付けられていることが大半です。
基本プランだけでは保険料は無料であることが多いのですが、オプションとして病気やけがに対応した特約が設けられていることもあります。
オプションは有料となっており、その金額は金利に上乗せする形で負担することが通常です。
この団体信用生命保険に加入する際には、健康状態などについて審査を受ける必要があるため、日頃から健康管理には注意を払っておくことが大切です。
万が一、自己名義の住宅ローン申請が通らなかった場合に、他にとりうる手段として家族の名義で申し込むというやり方があります。
というのも、信用情報に債務整理が登録されているのはあくまでも本人だけであり、家族の信用情報には影響がないためです。
ただし、その場合には、家族自身の属性や担保に差し入れる資産の評価が審査に影響してきますので、その点には留意が必要です。
以上で見てきたように、債務整理を行うと、5年から10年の間は新たに住宅ローンを組むことは難しくなります。
しかしながら、その期間を過ぎれば改めてローンを組めるようになりますので、過去に債務整理を行ってからかなりの期間が経過しているという場合には、自分の信用情報を確認するために信用情報機関に確認したり、専門家に相談してみるとよいでしょう。