債務整理をするとブラックリストに載るという話はよく聞きますが、どのように記録が残るのかを知っていますか?もし、これから債務整理をしようと考えているであれば、記録が残る期間や具体的な影響についてもしっかりと理解しておいたほうがよいでしょう。
そこで、ここでは債務整理の記録が残る仕組みや期間などを説明していきます。
借金返済や支払いの遅延があったとき、金融機関は信用情報機関に対して「事故情報」の追加を依頼します。
そして、信用情報機関はその事故情報をデータベースに記録しますが、このことを俗に「ブラックリストに載る」といいます。
したがって、「ブラックリスト」そのものは実在しません。
また、借金返済や支払いの遅延だけでなく、任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理を行った場合も、その事実が事故情報として信用情報機関に記録されます。
なお、記録されるタイミングについては、事故情報の種類や信用情報機関によりそれぞれ異なります。
事故情報が記録されると、一定期間は金融機関からの借り入れができなくなってしまいます。
また、新たにクレジットカードの申し込みをしても、クレジットカード発行会社から返済能力が十分でないと判断されて審査が通りにくいため、作成が困難になります。
しかし、この状況が今後一生続くというわけではありません。
なぜなら、一定期間が過ぎると事故情報の記録は削除されるからです。
削除された後は、再び借り入れをしたりクレジットカードを作成したりできる可能性が出てきます。
ここからは、債務整理に関する情報を扱っている信用情報機関について詳しく説明していきます。
信用情報機関とは、信用情報を管理・提供して、金融機関と消費者が安全に取引できるようにするための機関です。
加盟している金融機関から集めた情報を管理し、金融機関から照会があった場合に情報を提供しています。
そして、金融機関はその情報によって、ローンやクレジットカードの申し込みをした消費者に信用力があるか否かを確認します。
この確認により、過剰貸付や多重債務などのトラブルを未然に防ぐことが可能になります。
なお、消費者は信用情報の登録を拒否することはできませんが、手続きを行えば信用情報機関へ自分自身の信用情報について問い合わせができます。
信用情報の開示請求はスマートフォンや郵送、窓口などで行えて、手数料は500円から1000円かかります。
開示請求をすると、事故情報が記録されているかどうかだけでなく、クレジットカード会社や消費者金融、銀行などが登録している契約内容や返済状況の確認も可能です。
稀に支払いの遅滞や債務整理をしていないにもかかわらず事故情報が記載されているといったように、情報が間違っているケースがあり、その場合は削除や訂正を依頼すると応じてもらえます。
日本にある信用情報機関は、株式会社日本信用情報機構(JICC)・株式会社シー・アイ・シー(CIC)・全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3つです。
JICCは消費者金融や信販会社などが、CICはクレジットカード会社や信販会社、携帯電話会社などが、KSCは銀行や信用金庫、日本学生支援機構などが主に加盟しています。
そして、それぞれの信用情報機関は、「CRIN(Crdit Information Network)」と呼ばれるネットワークで繋がっています。
そのため、どれか1つの信用情報機関に記録されると、他の信用情報機関にも情報が伝わってしまうのです。
ただし、CRINでは信用情報機関が保持しているすべての情報を共有しているわけではありません。
共有の対象となるのは、あくまで事故情報と一部の本人申告情報のみです。
本人申告情報とは、身分証明書の盗難・紛失などに関する情報のことです。
例えば、身分証明書を盗難された場合、第三者がそれを使って借り入れやキャッシングなどに悪用してしまう可能性があります。
しかし、1つの信用情報機関に盗難された旨を申告すれば、CRINのネットワークにより他の信用情報機関に共有されます。
それによって、身分証明書だけでの申し込みができなくなるので、悪用を防げるようになっています。
信用情報機関とはどういうものなのかを理解したところで、ここからは信用情報機関に債務整理の記録が残る期間はどれくらいなのかについて説明していきます。
JICCでは、自己破産や個人再生、任意整理、特定調停をした場合、その情報が5年間記録されます。
起算日は、クレジットカード会社や銀行などの債権者が、弁護士から債務整理の受任通知(債務整理開始通知・介入通知)を受け取った日となります。
なお、任意整理の場合は、5年以上かけて分割返済を継続することがありますが、事故情報として記録される期間は変わりません。
したがって、返済の途中に記録が消える可能性もあります。
CICでは、自己破産をすると契約終了から5年間はその情報が記録されます。
起算日が、JICCは受任通知を債権者が受け取った日であるのに対して、CICは契約終了から、となっているので、事故情報がJICCよりも長い間記録されることになります。
個人再生と任意整理、特定調停については信用情報に記録されることはありません。
なぜかというと、CIC独自の判断基準によって、自己破産以外の手続きに関する事実は記録しない、としているからです。
そのため、例えば新たにクレジットカードを申し込んだ際に、クレジットカード会社がCICの持っている情報だけを参照して審査を行った場合、自己破産以外の債務整理をしていてもクレジットカードをつくることができます。
ただし、任意整理をしたときに、債権者によっては代位弁済を請求する場合があります。
代位弁済をすると返済状況の欄に「異動」という情報が記録されてしまい、5年間は消えずに残ります。
なお、代位弁済とは債務者の代わりに保証会社が残りの借金の支払いをすることを、そして異動とは事故情報のことをいいます。
KSCは、任意整理と特定調停については記録される仕組みとなっていません。
しかし、CICと同じく保証会社によって代位弁済が行われると、その記録が異動情報として残ります。
記録される期間は代位弁済が行われた日から5年間です。
個人再生の場合は、10年間という長い期間に渡り記録が残ってしまいます。
KSCは官報という国が休日を除き毎日発行している公告文書をチェックしていますが、そこには個人再生を行った人の住所や名前が掲載されています。
この官報をもとにして、KSCは情報を記録しているのです。
また、自己破産の場合も官報に掲載されるため、個人再生と同様に10年間は記録が残ることになります。
個人再生と自己破産は任意整理よりもブラックリストに載る期間が長い、という話を聞いたことはないでしょうか?それは、このようにKSCにおいて記録される期間が長いからです。
KSCは主に銀行や信用金庫が加盟していることから、個人再生や自己破産をした場合には、10年間は銀行のローンを利用できる可能性が低いでしょう。
したがって、債務整理を検討中の方で、将来的に銀行に借り入れを申し込みたいと思っているのであれば、個人再生や自己破産は避けたほうがよいといえます。
信用情報機関には、氏名や生年月日、勤務先などの個人を特定する情報と、契約内容と支払いに関する情報の他、事故情報などが細かく記録されています。
この事故情報には、債務整理以外の情報も含まれます。
その情報とは、遅延・延滞と代位弁済、強制解約です。
決められた期日を過ぎても支払いをしなかったときに、返済の遅延・延滞として記録が残ります。
ただし、支払いが確認できないとすぐに記録されるというわけでなく、61日以上、あるいは3ヶ月以上遅延・延滞が続いた場合に記録されることになっています。
代位弁済は、支払いが遅延したときに保証人や保証会社が債務者の代わりに返済を行うことです。
銀行のカードローンでは保証会社が付いていて、債務者が返済できないと代位弁済してくれます。
強制解約については、支払いの遅延などによって債務者に返済能力がないと判断されると、クレジットカード会社などから強制的に解約されることをいいます。
強制解約されると、これまで使えていたクレジットカードが急に使えなくなってしまい、またローンであれば一括返済を求められることになります。
なお、これらの事故情報は、債務整理と同じく信用情報機関によって記録に残る期間がそれぞれ異なります。
長期間に渡るローンやキャッシングなどにより、払い過ぎてしまった利息を返還してもらうように請求することを「過払い金請求」といいます。
過払い金請求をして、実際に過払いがあり借金の残高がゼロになった場合、信用情報機関には特に何も記録が残りませんが、借金が残った場合には任意整理とみなされ、事故情報として記録に残ります。
事故情報は、記録されてしまうと原則として期間を短くすることはできません。
しかし、記録されている期間中に就職して安定した収入を得るといったことにより信用度を上げると、記録が削除された後にクレジットカードやローンの審査に通りやすくなります。
なお、信用情報機関の記録が削除されても、債務整理の対象となったクレジットカード会社や金融機関などでは独自に金融事故の情報を記録している可能性があります。
その場合は、期間をあけても同じ会社や金融機関からの借り入れができない恐れがあり、これを俗に「社内ブラック」と呼んでいます。
したがって、クレジットカードやローンを申し込みたいときには、今まで利用していた会社や金融機関とは異なるところに申し込みをするようにしましょう。
債務整理をすると事故情報として一定期間記録が残ってしまうため、たとえ借金の返済に困っている状況であっても慎重に行ったほうがよいです。
1人で問題を抱え込まずに弁護士や司法書士などの専門家に相談すると、最も適切な方法を提案してもらうことができます。
頼れる専門家に相談しながら、ベストな解決の方法を選択しましょう。