債務整理をすると住宅ローンはどうなってしまうの?
債務整理をしたいけど、住宅ローンを抱えているのでなかなか踏み切れないという方は多いはず。
債務整理をすると住宅ローンはどうなってしまうのでしょう?マイホームを手放さずに、債務整理する方法はないのでしょうか。
また逆に、債務整理を一度でもしてしまうと、その後ずっと住宅ローンを組むことはできないのでしょうか。
債務整理と住宅ローンについて、解説します。
【ケース1:住宅ローンを組んだ後に、任意整理をする場合】
Aさん(男性)は30代の会社員。 将来は結婚も考えているが、現在は彼女もおらず独身貴族を謳歌中。 投資目的もあって昨年都内にマンションを購入したが、勤務先の「働き方改革」による残業代の激減とローン返済が重なり、毎月複数社からのキャッシングが欠かせなくなってしまいました。 金利がかさみ、毎月の自転車操業もそろそろ限界がきそうです。 裁判所を通さずに借金の減額ができる「任意整理」を検討中。 |
住宅ローンを任意整理から外す
毎月生活費が足りず、ついついキャッシング。
気持ちはわかるけど、いつまでも続けられるわけではないですよね。
キャッシングを続けるうちに、だんだん金利のためにお金を借りるはめになり、自転車操業は終わらなくなるんだ。
いったん任意整理をして少しでも返済額を減らさないと、一生借金を背負うことになってしまうよ。
Aさんの場合、すでにマンションを購入して住宅ローンがありますよね。
任意整理すると、住宅ローンも整理対象になってしまうのでは?つまり、マンションを手放さないといけないんですよね?
そんなことはないんだ。
任意整理の場合は住宅ローンを整理対象から外すことができるので、マイホームに住み続けながら借金を返していけるんだよ。
住宅ローンと、その他の借金は別扱いになるということですか?今までの生活を変えずにその他の借金が減額できるんだから、Aさんは絶対任意整理をやるべきですよね!
「せっかく手に入れたマイホームを手放したくない」と考えるあまり、債務整理に二の足を踏んでしまって、借金がさらに膨らんで最終的に自己破産・・・ということになってしまっては本末転倒だからね。
自宅を守りつつ借金を減らしたい、という人には早目の任意整理がおすすめだよ。
まとめ
◆住宅ローンを組んだ後でも、任意整理ならマイホームを失わなくて済む
◆任意整理を行うと、マイホームに住み続けながらその他の借金を減額できる
住宅ローンを任意整理から除外できる要件とは
マイホームに住み続けながら借金を減らすことができるなんて、任意整理ってすごい!任意整理は、手続きすれば誰でも行えるものなんですか?
住宅ローンを抱えながら任意整理するためには、もちろんクリアすべき要件があるよ。
端的に言えば、本人にきちんと借金を返済し続けられる能力があるかどうか。
任意整理をしたからといって、これまでと同じ額の住宅ローンを払いながら、借金を返済するという生活は変わらないよね。
借金の総額は減るかもしれないけど、毎月コツコツ返していくことには違いがない。
それをきちんと実行できるかが、厳しく審査されるんだ。
なるほど・・・まずは無理なく支払えるよう返済計画をしっかり立てて、その計画をまじめに守っていけるかが問われるわけですね。
任意整理によって実際に借金返済をスタートさせる前には、「積立金」といって、返済に当てるお金や司法書士への報酬金を、一定額振り込ませる手続きがある。
この「積立金」のステップがスムーズに行われるかどうかで、債務者の支払い能力や性格などが判断されるよ。
いわば借金返済の“練習”をするということですか。
きちんと段階を踏むことで、債務者にとっても債権者にとっても、円滑な借金解消につながればいいですよね。
まとめ
◆住宅ローンを組んだ後で任意整理する場合には、債務者の支払い能力が厳しく審査される
◆住宅ローンと借金返済と同時に無理なく行えるよう、返済計画をしっかり立てることが大事
を
マイホームを手放さずに借金を減額するもう一つの方法「特定調停」
任意整理以外に、借金を減額する方法は他にないんですか?
次の項で紹介する「個人再生」でも特定の要件を満たせば、マイホームを手放さなくて済む。
しかし個人再生は手続きが煩雑で、完済まで相当な時間がかかるのは覚悟しなければならないよ。
任意整理と同じくらいの簡易な債務整理法には「特定調停」というものがあるけど、実際に使われる例は少ないかな。
特定調停?それは任意整理とはどう違うんですか?
特定調停とは、調停委員が債務者と債権者のあいだに入って、簡易裁判所に調停を申し立てる債務整理のことなんだ。
本人が直接できるので、司法書士に手続を依頼しない場合は、専門家に支払う報酬金が発生しないので、コストが抑えられるというメリットがある。
手続きにかかる費用は、収入印紙代など数万円程度で済む場合もあるよ。
しかしあくまで「調停」と名がつく行為のため、調停が成立するとこちらに基づいて強制執行することができてしまうため、万が一、返済が途中で滞ってしまうと、財産を差し押さえられる危険もある。
自分で裁判所に申し立てる以上、債権者に「もし借金を返さなければ、差し押さえしてもいいですよ」という権利を与えてしまうということなんですね。
任意整理で計画通りに返済できなかった場合のデメリットを考えると、ちょっと難しいですかね。
。
まとめ
◆「特定調停」は費用が抑えられ手続きも簡便だが、不払いの場合は財産を差し押さえられる危険も
【ケース2:住宅ローンを組んだ後に、個人再生をする場合】
Bさん(男性)は40代の会社員。 妻と小学生の息子がおり、息子の誕生に合わせて都内に一戸建てを建築したが、現在は大阪に単身赴任中。 住宅ローン返済のかたわら、単身生活中の寂しさからギャンブルにはまり、多額の借金を抱えてしまいます。 自己破産も考えたが、近所への世間体や息子の通学の理由からマイホームを手放すのはどうしても避けたい。 こうした理由から、「個人再生」手続きを検討しています。 |
住宅ローンを個人再生から外すには「住宅ローン特別条項」を利用
Bさんのケースは単身赴任あるあるですが、家族がいるのにギャンブル漬けはやはりいただけません。
借金の額的に任意整理ではもはや追い付かず、個人再生を検討しているようですね。
個人再生と自己破産では、手続きの煩雑さや債務整理にかかる期間はほとんど変わらないと聞きましたが、Bさんのようにあえて個人再生を選ぶ方は多いんですか?
自己破産は、申し立てると同時にマイホームの権利を確実に失ってしまうから、持ち家がある人はためらうケースが多いかな。
とくに一戸建てだと近所づきあいも深く、世間体が悪いというのも理解できる。
子供がいる場合も引っ越しに伴う転校など、教育環境への影響も心配してしまうよね。
うーん、たしかに子供が自分の借金のために転校しないといけないのは、申し訳なさすぎるかも。
だとすると、やはり個人再生を選んでしまいますね。
でも個人再生にしたからといって、必ずしもマイホームが守れるというわけではないんだよ。
個人再生の対象から住宅ローンを外すには、「住宅ローン特別条項」を利用しなければならない。
それにはさまざまな要件があるんだ。
「住宅ローン特別条項」を利用するために必要な要件とは
<「住宅ローン特別条項」の基本的要件>
① 対象となる物件が、住宅ローンの担保になっていること
(住宅ローンの抵当権がついていること)
② 対象となる物件が、住宅ローン以外の担保になっていないこと
(他の抵当権がついていないこと)
③ 対象となる物件が、本人所有のものであること
④ 対象となる物件が、本人居住用の住宅であること
(セカンドハウスや投資用物件でないこと)
⑤ 対象となる物件が代位弁済を受けてから、個人再生申し立てまで6か月以内であること
ずいぶんいろいろな要件があるんですね(汗)読んだだけだと、何のことかさっぱりなのですが・・・一つ一つ教えてください!
ではまず①から。
住宅ローンを組んで購入した物件は通常の場合、ローンの「担保」となるんだ。
要するにローンが返済できなくなった時には債権者が対象物件を売却し、貸付金を回収する権利を与えますよ、ということだね。
なるほど。
となると②は、対象の物件が「住宅ローン以外の担保になっていない」というのは、たとえばその物件を担保にして他に借金をしていない、ということですか?
そのとおり。
個人再生から外して保護しようとしている住宅ローン物件が、すでに他の借金のカタになっていたり、差し押さえられたりしているというのでは、お話にならないからね。
電車の車内などで「不動産を担保にしてお金が借りられます」という広告を見たことはないかな?あれがいわゆる「不動産担保ローン」で、低金利で多額の借り入れができるため、利用している人も多いんだ。
たしかに「不動産を担保に」というフレーズはよく聞く気がします。
安易に借金をしていると、いざというときに不利になる場合があるのですね。
③は、分かりやすいね。
この場合の本人所有というのは、単独に限らず、共同名義であっても本人所有と認められるよ。
④も大丈夫かな。
別荘やセカンドハウスでなく、今現在本人が住んでいる物件でないと、要件には当てはまらない。
投資用物件の場合もNGだよ。
あれ!じゃあBさんのように単身赴任中だと、ダメなんですか?Bさんは今は大阪で一人暮らしで、東京の自宅には住んではいませんよね?
大丈夫、単身赴任のように「いずれその物件に戻ってくる」ということが確実な場合は、本人居住と同様に見なされるんだ。
Bさんの場合のように単身赴任をせず、家族を伴った転勤などの場合は、自宅を他人に貸すこともあるよね。
その際も「定期賃貸借」として貸しておけば、やはり本人居住の扱いになるよ。
ここでもやはり、投資用物件と明確な区別をしているんですね。
最初から他人に貸す目的で買った物件はダメということですね。
ややこしいのは⑤だろうね。
代位弁済というのは、住宅ローンの返済が滞ったときに、「保証会社」という第三者が債務者の肩代わりをして借金を払ってくれること。
保証会社の多くは住宅ローンを組んだ銀行の子会社にあたり、要するに債務者が払えなくなった時でも、親会社である銀行に損害が出ないような仕組みになっているんだ。
へ~!それで、どうして代位弁済から6か月以上経ってしまうとダメなんですか?6か月以内に申告しないといけない理由は、どこにあるのでしょう。
これは、代位弁済=借金を肩代わりしてもらったという事実が過去にある場合は、その時点で支払い能力に欠けるとみなされ、マイホームを手放して自己破産しなさいという考えが基本にあるんだ。
でもそれでは「住宅を維持しながら返済を続けたい債務者を、救済する」という個人再生法の趣旨に反してしまう。
たしかに、もともとの法律は債務者を助けるために作られたものですから。
そのため、代位弁済から6か月つまり半年以内であれば、いわゆる「巻戻し」措置を適用しようと決めたんだ。
代位弁済から半年しか立っていない時点で申告すれば、代位弁済自体をなかったものにしよう、という考えだね。
まさに時間を巻き戻す、ということなんですね!期限を設けないと債権者である銀行側の利益が守れないですし、お互いに歩み寄った期間が「6か月」ということなのでしょう。
上記の他にも、「夫婦名義で借りているペアローンの場合は、夫婦同時に再生手続きを行わなければならない」とか、「二世帯住宅や事務所兼用住宅の場合、床面積の1/2以上が自分の居住スペースでないと“住宅扱い”にならない」など、いろいろ細かい要件があるんだ。
これらの要件をすべて満たすのはなかなか難しく、マイホームを守りたくて個人再生を目指したものの、結局自己破産に踏み切るケースも多いんだよ。
まとめ
◆個人再生でマイホームを維持したい場合は、「住宅ローン特別条項」を利用する
◆「住宅ローン特別条項」を利用するには様々な要件があり、誰でもマイホームを維持できるわけではない
◆「住宅ローン特別条項」の要件をクリアできない場合は、個人再生から自己破産に切り替えるケースもある
【ケース3:住宅ローンを組んだ後に、自己破産をする場合】
自己破産の申立てをした時点で、マイホームは処分される
マイホームを所有しながら自己破産する場合は、ほとんどが同じようなケースになるでしょうか。
自己破産の申立てをした時点で所有している財産があれば、管財事件として取り扱われ、すべての財産が法に基づいて処分されるのですよね。
そうだね、もちろんマイホームという大きな財産は真っ先に処分の対象になる。
競売にかけられて、少しでも多くの現金に変えて債権者への返済に当てられるんだ。
せっかく手に入れたマイホームが競売にかけられるのは忍びないですが、仕方ないですね。
。
ちなみに「オーバーローン」の場合、管財事件ではなく同時廃止になると聞いたのですが、いずれ自宅を失うことには変わりないのですか?
「オーバーローン」というのは、物件の実際の価値よりも債務額が1.5倍以上ある状態を差し、その場合は財産とみなさず同時廃止手続きに入ることになる。
いずれにせよ銀行等の抵当権者によって売却されるので、マイホームは手放さざるを得ないだろうね。
実際の価値よりも1.5倍以上・・・たとえば物件価値は2000万円なのに、ローンは3000万円以上残っているということでしょうか。
どういうケースが考えられますか?
一番多いのは、物件を購入した後、土地の価格が大きく暴落したケースだね。
建物自体の価値がそう大きく変動することはないので、やはり大半が土地の値段に寄るものになる。
かつてのバブル崩壊後は、オーバーローン状態に陥るケースが続出したそうだよ。
まとめ
◆自己破産すると、マイホームは管財事件の手続きを経て処分される
◆「オーバーローン」の場合は同時廃止となり、マイホームは抵当権者によって処分される
【債務整理を行った後に、住宅ローンは組める?】
ブラックリストの掲載期間中は、住宅ローンはほぼ組めない
債務整理を一度でも行うと、ブラックリストに載ってしまうから、その後一生涯にわたって住宅ローンは組めないものなんでしょうか?
たしかにブラックリスト掲載期間中は、ほとんどローン審査に通ることはないかな。
もちろん貸し手側がOKと言えば大丈夫なので、絶対とは言い切れないけど、住宅ローンのような高額な借り入れはほぼほぼ難しいと思っていいと思う。
ブラックリストに載る期間
債務整理の影響はやはり大きいんですね。
。
ちなみにブラックリストって何十年も載り続けるものなんですか?
詳しくは「ブラックリスト」の項目で解説しているけど、掲載期間は債務整理の方法や、信用情報機関によって異なるんだ。
多くは5~10年とされているよ。
長くても10年ですか。
掲載期間が終了した後は、もうブラックリストの影響は残らないんですよね。
たとえば20代で多額の借金を負って債務整理した場合でも、30代以降はまたローンが組めるようになる。
その後の人生で、マイホームが持てる可能性があるということですね!
そうだね。
債務整理を行った年齢が若ければ若いほど、その後の人生は長い。
一度の失敗でくじけずに、債務整理して借金がきれいになった後は結婚したり家を持ったり、さまざまなことにチャレンジできる可能性があるということを知ってもらいたいな。
まとめ
◆債務整理を行った後のブラックリスト掲載期間中は、住宅ローンを組むことができない
◆5~10年のブラックリスト掲載期間が終われば、マイホームが持てる可能性もある
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