借金問題を解決するために債務整理を検討する中で「法テラス」という名前を聞いた事のある人も多いのではないでしょうか。
法テラスは借金問題を抱える人の心強い味方ですが、その実態を把握している人は多くありません。
本来受けられる支援を利用しないまま債務整理に踏み切るのは勿体ない事です。
今回は法テラスについて機関の概要や利用するための条件、法テラスを利用して債務整理の費用を節約する方法などをご紹介します。
債務整理には法律的な専門知識が必要になる場面も多く、一般の人が独力で手続きを進めたり制度の仕組みを正確に把握する事が難しい場合があります。
債務整理については弁護士や司法書士といった専門家に相談するのがベターですが、敷居を高く感じてしまい中々相談に踏み切れないという人も少なくありません。
そんな中で、借金に悩む一般の人が気軽に相談出来る法律相談の総合窓口として作られたのが法テラスなのです。
まずは法テラスの概要について詳しく見ていきましょう。
法テラスという名前は通称であり、正式名称は「日本司法支援センター」といいます。
2006年に設立された独立行政法人であり、国が母体となっている機関なので安心して利用出来ると言えるでしょう。
法律的なトラブルには「借金」「離婚」「相続」など様々な種類があります。
しかし、こうした問題を解決するための情報提供を行う窓口が全国で統一されていないため、悩みを抱える人達が情報に辿り着けないという状態になっていたのです。
また、経済的に余裕がなく専門家に相談する事すらままならないという人も少なくありませんでした。
こうした問題を解決するため、刑事・民事を問わず総合的に法律相談や情報提供を行うのが法テラスです。
法テラスでは経済的に余裕がない人のために無料相談や弁護士・司法書士費用の立て替えも行っています。
法テラスでは相談者から寄せられた内容に合わせて、それぞれの問題解決に適した法制度や法律相談機関を無料で紹介してくれるのです。
具体的な紹介先の機関としては「地方公共団体」「弁護士会」「司法書士会」「消費者団体」などが挙げられます。
ただし、紹介された先の法律機関では相談料金がかかる事もあるので注意が必要です。
事前に予約すれば法テラスに赴いて直接相談する事も可能ですが、対面での相談に抵抗を感じるようであればメールや電話での相談にも応じてくれます。
法テラスでは3回まで無料で相談に乗ってもらう事が可能です。
初回は無料相談としている法律事務所も多いですが、法律の専門家に3回も無料で相談出来る制度は貴重であると言えます。
最初の相談で疑問に思った事を後日また相談出来たりするので、納得いくまで話を聞いてもらえるのです。
法テラスでは「民事法律扶助制度」と呼ばれる制度を利用する事が可能で、これによって書類代行援助や代理援助など債務整理に役立つサポートを受けられます。
ただし、民事法律扶助制度は経済的に余裕がない人のために作られた仕組みなので、利用するには所定の条件を満たしている必要があるのです。
ここでは民事法律扶助制度について利用条件を整理してご紹介します。
民事法律扶助制度とは経済力に難がある人へ向けられた制度であるので、利用するためには収入と資産が定められた額を下回っている事が必要になります。
収入に関する条件は家族の人数によって異なり、家賃・住宅ローン・医療費・教育費など生活に最低限必要な出費は一定額考慮される事を覚えておきましょう。
ここでいう「家族」に含まれるのは配偶者(内縁関係を含む)と同居している親族の事であり、本人または配偶者の扶養家族にあたる人のみです。
定められた収入額は単身者で18万2000円以下、2人家族で25万1000円以下、3人家族で 27万2000円以下、4人家族の場合で29万9000円以下となっています。
それ以上の家族構成の場合は家族1人につき3万円が加算される点に留意しておきましょう。
これらの金額は地方における設定であり、東京・大阪・横浜など都市圏の場合には単身者で20万200円以下、1人家族で27万6100円以下、3人家族で29万9200円以下、4人家族は32万8900円以下です。
それ以上の場合は家族1人につき3万3000円が加算されます。
所有している資産についても、収入面同様に家族の人数によって金額が設定されています。
保有資産の条件は単身者の場合で180万円以下、2人家族は250万円以下、3人家族で270万円以下、4人家族の場合は300万円以下です。
また、民事法律扶助制度にはこれら収入と資産以外にもいくつかの条件が設定されています。
例えば「勝訴の見込みがないとはいえない」という事も条件のひとつです。
これは裁判において係争が全く成りたたない事が明らかな請求を予定している場合は、民事法律扶助制度が利用出来ない事を意味しています。
犯罪や他人への報復など、反社会的行為や違法行為を目的とした依頼に対しても民事法律扶助制度は適用されません。
これは依頼目的が「経済難の債務者を救済する」という民事法律扶助制度の趣旨に適していないためです。
債務整理とは様々な法的手段の総称であり、実はいくつかの種類に分かれているのです。
それぞれの債務整理において必要な手続き内容は異なり、かかる費用もまちまちになっています。
また、弁護士と司法書士では管轄の業務範囲が異なるので依頼先によっても費用が異なる点に注意しましょう。
ここでは債務整理において比較的メジャーな手段となる「任意整理」「民事再生(個人再生)」「自己破産」について、法テラスを通じて手続きを行った場合に必要となる費用をご紹介します。
任意整理は弁護士や司法書士が債務者と債権者の間に入って返済方法について話し合う債務整理です。
任意整理では債務整理する債権者を指定する事が出来るので、対象となる債権者の数によって費用が異なります。
債権者が1名(1社)の場合は着手金が3万2400円、実費として1万円かかるので合計4万2400円となります。
債権者2名の場合は着手金4万8600円、実費1万5000円となるので合計6万3600円です。
債権者3名では着手金が6万4800円、実費2万円で合計8万4800円となります。
従来、任意整理では返済額の減額に成功した場合に「減額報酬」という費用を弁護士や司法書士に支払うのが一般的です。
しかし法テラスで任意整理を依頼した場合には減額報酬が必要ないので、費用の節約に繋がります。
民事再生では裁判所に申し立てを行って借金の大幅な減額を認めてもらう事が目的です。
比較的大掛かりな債務整理で法的な専門知識も必要になるので、弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼するのが一般的です。
法テラスを通じて司法書士に書類作成援助を依頼した場合の費用は着手金10万8000円、実費が2万円で合計12万8000円となります。
弁護士へ代理援助を依頼した場合は着手金16万2000円~32万4000円、実費が3万5000円となるので合計19万7000円~35万9000円です。
法テラスが定める報酬基準では住宅資金特別条項(住宅ローン特約)をもって金額が上乗せされることはありませんが、その他に裁判所への予納金が必要となる点に注意しましょう。
自己破産は裁判所へ申請して借金を全て帳消しにする債務整理です。
法テラスを通じて司法書士へ書類作成援助を依頼した場合の費用は着手金8万6400円、実費1万7000円で合計が10万3400円となります。
弁護士へ代理援助を依頼する場合は着手金12万9600円~27万5657円、実費2万3000円となるので合計費用は15万2600円~29万8657円です。
着手金が上乗せされる事はありませんが、裁判所への予納金が必要となる場合があります。
経済的に余力がなく、債務整理の費用を節約したいのであれば法テラスを利用するのが有効的と言えます。
手持ちのお金がなくても、法テラスを利用すれば弁護士・司法書士費用を全額立て替えてもらう事が可能です。
専門家への依頼費用はそれぞれの法律事務所に委ねられていますが、民事法律扶助制度では専門家への報酬が規定さています。
そのため、制度を利用する事で大幅に専門家費用を安く抑えられるケースが多いのです。
ここでは民事法律扶助制度への申込み方法などについて見ていきましょう。
民事法律扶助を受けるには、まずは各都道府県を管轄している法テラスに連絡して常勤の弁護士に依頼を引き受けてもらいましょう。
常勤の弁護士が居ない法テラスの場合には、近隣で法テラスに対応している法律事務所を紹介してもらう事になるのが通例です。
また、法テラスによっては直接弁護士の紹介を行っていない場合もあります。
その場合は法テラスに登録している弁護士・司法書士の法律事務所を探して、依頼先の専門家を通して法テラスを利用するという通常とは逆の流れになるので覚えておきましょう。
なお、この方法は一般的に「持ち込み方式」と呼ばれています。
申し込み方法が異なっても最終的にかかる費用は変わらないので安心です。
申し込みを行う法テラスは、原則的に申し込み者の自宅か勤務地がある都道府県を管轄している支店になります。
相談する弁護士や司法書士が決まっていない場合には、まず法テラスで法律相談を受けるところから始めてもらえるので安心しましょう。
相談内容に応じて必要ならば「代理援助」や「書類作成援助」として費用を立て替えてもらうステップに進みます。
必要書類の用意と記入を終えて申し込みが完了したら、民事法律扶助の条件に適しているか審査が始まるという流れです。
審査に通過すれば援助開始となりますが、審査完了までの時間が予測しにくいという点に注意しておきましょう。
収入面に難があり生活保護などを受給している状態で債務を抱えている場合には、法テラスを利用して債務整理する事がおすすめです。
法テラスで民事法律扶助が適用されれば弁護士・司法書士費用を全面的に立て替えてもらえるので、手持ちがなくても債務整理に着手する事が出来ます。
民事法律扶助で立て替えてもらった費用は月々無理のない金額で返済していく仕組みです。
生活保護を受給している場合には収入・資産面で既に条件を満たしており、この立て替え金の返済が免除されてさらに負担を軽減する事が出来るので積極的に制度利用すると良いでしょう。
ただし、民事法律扶助の審査にはある程度時間を要するため、経済的に極めて困窮している訳でなければ法テラス以外の相談先を探す方が早急に借金問題を解決出来る場合もあります。
法テラスは収入・資産面で条件を満たしていない場合は当然制度を利用出来ないので注意が必要です。
法テラスは国が運営母体となっているので、借金問題に苦しむ人が安心して利用出来る貴重な機関であると言えます。
借金を抱えて生活が苦しいようなら積極的に利用してみましょう。
条件を満たさない場合には利用出来ないので、まずは自分の収入・資産状況をよく確認しておく事が大切です。
自分で依頼先を選びたい、出来るだけスピーディに借金問題を解決したいといった場合には法テラス以外の相談先も視野に入れておきましょう。