自分が取引していた貸金業者に過払い金の請求をしようと思っている人は、時効に注意しなければなりません。
過払い金が請求できる期間は決まっているので、うっかりしていると過払い金を取り戻せなくなってしまうのです。
今回は、払い過ぎた利息を確実に取り戻せるように、過払い金を請求する際の大切なポイントを紹介します。
過払い金の時効は、借金をすべて払い終わっている場合と借金が残っている場合で時期が変わってきます。
ここでは、借金を完済済みの場合、未完済の場合の、それぞれの時効がいつになるのかを見ていきましょう。
通常、過払い金の時効は10年です。
過払い金の請求は、民法703条で定められている「不当利益返還請求」にあたります。
過払い金とは、貸金業者が定められた法律を越えて不当に請求した利息のことなのです。
貸金業者が法律で決められた利息の上限を超えた貸付を行って利益を得ていた場合、その不当な利益は、本来債権者に返還しなければなりません。
この不当な利益の返還を求める権利が「不当利益返還請求権」であり、不当利益返還請求権は、通常の債権と同じように時効が10年と定められているのです。
よって、過払い金請求の時効も、10年となっています。
すでに借金を完済している場合、最後の取引を行った日から10年間が過払い金請求の時効です。
まだ借金を完済していない場合でも、最後の取引から10年間が時効の期間となります。
最後の取引が返済でも借り入れでも、時効は取引をした日から10年と決まっています。
また、基本的に、返済を継続して行っている場合は、時効が発生することはありません。
ただし、返済が終了しておらず、かつ返済を滞納しているという場合は、時効が発生します。
返済を滞納している場合の時効は、最後の取引をした日の翌日から10年間です。
時効が成立してしまったら、もう過払い金請求ができないと思って落ち込んでしまう人もいるかもしれません。
しかし、場合によっては、時効が成立したあとでも過払い金を請求できるケースがあるのです。
ここでは、どのような場合に時効が成立しても過払い金が請求できるのかを解説します。
業者側が不法行為を働いていた場合、時効が成立しても過払い金請求ができる場合があります。
不法行為とは、たとえば、業者側が暴行や脅迫などを行って、支払いの催促をしていた場合です。
また、何度もしつこく電話をかけるなどの嫌がらせも、不法行為にあたります。
さらに、過払い金が発生していて支払い義務がないことを業者側が知っていながら請求を続けていた場合も、不法行為と見てよいでしょう。
これらの不法行為を受けていた場合は、申告すれば時効後でも過払い金を請求できる可能性があります。
不法行為を理由とした損害賠償請求が行える期間は、損害を知ったときから3年以内です。
ここでいう「損害を知ったとき」とは、取引履歴の開示を行った日のことをいいます。
つまり、取引が終了して10年が経過したあとでも、取引履歴を開示した日から3年以内であれば、過払い金の請求ができるのです。
ただし、不法行為があったかどうかは、裁判所が判断します。
そのため、必ず過払い金の請求が認められるわけではありません。
暴行や脅迫は明らかに不法行為に該当しますが、判断が難しい場合は弁護士などに相談することが大切です。
借り入れと返済を何度も繰り返している場合、複数回に及ぶ借り入れがひとつの契約となるのか、別々の契約になるのかによって時効の決算日が異なります。
一般的に、複数の取引をひとつにまとめて扱うやり方を「一連」といい、それぞれの取引を別々にして扱うことを「分断」といいます。
一連の場合は、最後に取引をした日から時効までの日を計算します。
そのため、10年前に完済した取引が含まれていても、過払い金請求が可能です。
反対に、分断の場合はそれぞれの取引が終了した日が起算日となるため、10年以上前に払い終わっている借金については、時効が成立します。
複数の取引を行っている場合、貸金業者は過払い金請求から逃れるために、取引の分断を主張する可能性が高いです。
場合によっては裁判に発展することもあるので、事前に専門家に相談することがポイントと言えるでしょう。
過払い金請求の時効が近付いていると知った場合、焦ってしまう人もいるでしょう。
しかし、場合によっては、時効を中断できることがあるのです。
時効が迫っていても冷静に対処できるように、時効を中断する方法を紹介します。
裁判上の請求をすると、申請が受理された時点で時効が一時的に中断します。
その後、確定判決などで債権が確定した場合、時効はリセットされることになるのです。
つまり、また10年間、時効まで時間が与えられることになります。
裁判上の請求とは「支払い督促」「訴訟の提起」「民事調停」などです。
支払い督促とは、裁判所に申し立てを行い、督促状を出してもらう制度です。
債権者から異議の申し立てがなければ、強制的に執行することが可能になります。
訴訟の提起とは、裁判所に過払い金請求の民事訴訟を提起することです。
提起した訴訟が受理されれば、時効が中断します。
最後に、民事調停です。
民事調停とは、債権者と業者がお互いに話し合い、過払い金請求についての解決を図ることを指します。
民事調停は簡易裁判所で行われるため、訴訟を提起するよりも費用が安く済むことがメリットです。
裁判外の請求とは、基本的に直接的に業者に請求するすべての行為を指します。
具体的には、電話やメール、手紙などです。
裁判外の請求を行うと、時効は一時的に中断され、6カ月間延長されます。
また、請求したという確実な証拠を残すために、内容証明郵便を利用したほうがよいと言えるでしょう。
内容証明郵便を利用するには、郵便局に過払い金請求に関しての文章を持ち込む必要があります。
郵便局で、貸金業者あてに文章を送付してもらえば、請求は完了です。
なお、内容証明郵便の送付には、料金が430円かかります。
裁判外の請求で中断できる時効の期限は6カ月間のため、一時的な対策と思っておいたほうがよいと言えるでしょう。
時効をリセットしたい場合は、裁判外の請求で6カ月間の猶予を得たうえで、さらに裁判上の請求を行うことが重要です。
時効が成立していないからといって、過払い金請求をするうえで完全に安心できるというわけではありません。
過払い金請求をする際は、いくつか注意しなければならないことがあるのです。
ここでは、過払い金請求をするうえでの注意点を紹介します。
過払い金請求をする人が増えて経営難に陥り、倒産する貸金業者も少なくありません。
貸金業者が経営破綻して破産や民事再生、会社更生などの法的手続きに入ると、裁判所の指導の下で過払い金の弁済が一律に行われることになります。
そして、過払い金の弁済が行われると、過払い金はほとんど返還されない可能性があるのです。
時効が迫っていないからといって、過払い金請求を後回しにするのはリスクが高いと言えるでしょう。
貸金業者が倒産するタイミングは債権者側からはわからないため、早め早めに行動することが大切と言えます。
また、吸収合併を繰り返し、会社名を何度も変える貸金業者も存在します。
このため、自分が利用していた貸金業者が倒産してしまったと勘違いして、過払い金請求をしない人もいるのです。
自分がお金を借りていた業者の名前がわからなくなってしまった場合は、専門家に相談して本当に倒産したかどうか確かめることが大切と言えます。
貸金業者が倒産してしまった場合は、裁判所に債権届を提出する必要があります。
債権届を提出することで、民事再生や会社更生、破産などの各種の裁判手続きに従い、決まった金額の配当金を受け取ることが可能です。
裁判所で倒産手続きが始まった場合、過払い金の請求者は支払いを受けることが不可能になります。
基本的に、受け取れるのは配当金のみとなるのです。
取引していた貸金業者が倒産した場合「債権調査票」が自宅に送られてくることがあります。
債権調査票が送られてきたら、必要事項を記入して返送しなければ、配当金を受け取ることができないので、注意が必要です。
また、過払い金を請求できる立場であっても、債権者リストから漏れていて債権調査票が送られてこない場合があります。
確実に配当金を受け取れるよう、自分が取引している貸金業者の状況は常にチェックすることが重要と言えるでしょう。
倒産するほどではなくとも、経営難に陥る貸金業者は存在します。
経営が困難になれば、過払い金請求に対しての予算が少なくなり、返還される額が少なくなる可能性が高いと言えるでしょう。
また、経営が悪化していると嘘をついて、過払い金の返還額を下げようとする業者も少なくありません。
債権者側からは貸金業者の経営状況を正確に把握することは非常に困難です。
そのため、事実確認のためにも、専門家に相談することがポイントと言えます。
通常、過払い金が発生している場合は、100万円や200万円を越える額を取り戻せる可能性があります。
しかし、取り戻す前に貸金業者の経営が悪化したり倒産したりしてしまうと、取り返せるお金は10分の1以下になってしまうことがあるのです。
過払い金を確実に取り戻すには、経営が悪化したり倒産したりする前に過払い金請求を完了させるしかありません。
訴訟を起こすか弁護士に相談するなどして、早急に過払い金請求のための行動を起こすことが重要です。
過払い金の請求には時効があり、基本的には時効が成立してしまうと、お金を取り戻すことはできません。
そのため、確実に過払い金を取り戻すためには、時効が成立する前に請求することが重要です。
しかし、場合によっては裁判所に申し立てを行ったり業者に直接請求をしたりして時効を遅らせることができます。
そのため、時効が成立していても諦めずに弁護士などの専門家に相談することが大切と言えるでしょう。